高松渡が駆け抜ける、ドラゴンズ韋駄天の系譜

高松渡が駆け抜ける、ドラゴンズ韋駄天の系譜

「トラに、どこかポジションを与えてやりたいんや!」

かつて、第二次政権下の星野仙一さんが、若き荒木雅博選手のセンターバックホーム送球練習を眺めながら呟いた言葉が忘れられない。

トラとは、星野元監督が荒木選手に付けたニックネーム。元タレントの荒木定虎さんからきているが、由来はともかく「トラ~、おい、トラ!」と、とにかく星野さんが彼に期待を寄せているのが、はっきりとうかがえた。そのチャンスを活かした荒木選手自身は、その後、常勝軍団の要、アライバ二遊間コンビを形成。ベストナイン3回、ゴールデングラブ賞は実に6回も受賞し、リードオフマンとして活躍、盗塁王にも輝いた。

ランニング本塁打

「サンデードラゴンズ」より高松渡選手©CBCテレビ

その“トラ”荒木コーチが今、

「ファームでずっと一緒にやってきて、すごく成長しているし、彼は、いろいろ自分で考えてやっていると思う」

と語り、先を見据える選手がいる。3年目のハタチ、高松渡内野手だ。

彼をファームの全体練習でも、スタミナ不足が課題だった頃から知る荒木コーチ。それだけに先日6月9日に彼が魅せたランニング本塁打の姿を、三塁コーチボックスでどんな心境で見守っていたのだろうか。

一方、星野第一次政権下で、竜の切り込み隊長だった彦野利勝さん(CBC野球解説者)は、高松選手が持つ『芯』に注目する。

「当然、今はまだ、代走のチャンスが有難い。だけど、それを活かすためには、全部、走ってほしい。スタートを切るな、のサイン以外は全て。盗塁や様々な走塁は、一軍の投手を見て、走ってみないと分からない。今できないと、本番での一歩目の勇気は生まれないから」

守りきれる根拠

「サンデードラゴンズ」より高松渡選手©CBCテレビ

「それと、彼自身とチームのために、守備で安心してもらえること。これがレギュラーへの第一歩。走攻守、全部初めから揃っているわけがない。間違いなく、まずは、守り。監督の立場で若手に対して起用の我慢ができるかは、しっかり守れるという根拠をもてるか、だから」

たしかに、練習試合の連戦で、好走塁もあったが、別日の9回、セカンドの守備で先頭打者のセカンドゴロを体の横で弾き、エラー。チームは逆転された。ミス自体よりも、その日の試合前シートノックで、同じ打球へのミスをしていたことは、悔やまれる。

だからこそ、彦野さんの言葉に力がこもる。

「途中からでも守備に就き続けていれば、試合終盤、意外と打席のチャンスって来る。しかも、いい場面でね」

高松渡の持つ『芯』

「サンデードラゴンズ」より高松渡選手©CBCテレビ

さらに、荒木コーチとも交わした高松選手の打撃面をこう評する。

「走攻守で一番なのは、バッティングの伸びしろ。今のところ、非力な面はあっても、実は、反応が凄くイイ。体に芯がある。この前の、ランニング本塁打にした内角球へは、元々、バットが出やすいスイングをしている。あとは、外角球を逆方向へ、しっかり振ること。合わせにいくんじゃなくて。芯をしっかり活かしてね」

まずは、代走要因というスペシャリスト、そして、竜の新韋駄天の系譜を。コロナ禍での特例ルール、一軍枠と試合当日ベンチ入り人数増をドラゴンズが最大限活用できるのは、彼の『芯』にかかっているかもしれない。
頑張れ、若き韋駄天候補、高松渡内野手。燃えよ!ドラゴンズ!!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」水曜(午後4時放送)他、ドラゴンズ戦・ボクシング・ゴルフなどテレビ・ラジオのスポーツ中継担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。山本昌ノーヒットノーランや岩瀬の最多記録の実況に巡り合う強運。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。】

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