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キューバから竜革命の風が吹く?中日A・マルティネス捕手への大いなる期待

キューバから竜革命の風が吹く?中日A・マルティネス捕手への大いなる期待
論説室コラム

キューバから竜革命の風が吹く?中日A・マルティネス捕手への大いなる期待

 2020年7月10日(金) 10:30
北辻 利寿
北辻 利寿

アメリカン・ドリームならぬカリビアン・ドリームが、あたかもカリブ海を襲うハリケーンのように中日ドラゴンズにやって来た。そんな新鮮で大袈裟な驚きが嬉しい、アリエル・マルティネス捕手の日本球界デビューだった。

支配下登録直後の鮮烈デビュー

プロ野球で育成選手は3ケタの背番号をつけている。支配下選手になる手前にいて、将来への「育成」を目的に各球団が契約している選手たち。ドラゴンズブルーのユニホーム背番号「210」から「57」に替わったばかりの若きキャッチャーが、その2日後に昨シーズンのリーグ覇者・讀賣ジャイアンツとのゲームでデビューするとは思わなかった。
2020年7月4日の東京ドーム。前夜の代打出場に続き、外国人捕手としては球界で20年ぶりの守備についたアリエル・マルティネス選手は、俊足の吉川尚輝選手の盗塁を阻止。鮮烈な捕手デビューを飾った。

竜とキューバの強い絆

アリエル・マルティネス選手は、カリブ海の国キューバ共和国出身の24歳。森繁和監督時代の2018年3月に、育成選手としてドラゴンズに入団した。ドラゴンズはかつてオリンピックで母国キューバに金メダルをもたらした“英雄”オマール・リナレスさんがプレーしたチームであり、引退後もドラゴンズのスタッフになっているリナレスさんを通しての強いパイプもあった。今シーズンも四番打者として活躍する主砲ダヤン・ビシエド選手も、抑え投手のライデル・マルティネス投手もキューバ出身である。

ディンゴ以来20年ぶり

当コラムでも以前に紹介したが、ドラゴンズには2000年にデビッド・ニルソンというオーストラリア出身の捕手がいた。ニックネームは「ディンゴ」。オーストラリアに生息する犬の名前で、メジャーでも活躍して野茂英雄さんとバッテリーを組んだこともあった。
残念ながら、ドラゴンズではわずか18試合の出場、本塁打1、打点8、打率.180という成績で1年限りで退団したが、「外国人捕手」という珍しい存在だったため、ドラゴンズファンの記憶に残る選手である。東京五輪が延期にならなければ、野球の豪州代表チーム監督として、日本に凱旋したかもしれない。その「ディンゴ」以来の外国人マスクだった。

外国人捕手の歴史にスポットライト

アリエル・マルティネス選手は、デビュー翌日、同じジャイアンツ戦で先発捕手としてホームベースに立った。どちらかと言えば、選手の起用であまり大胆な冒険をしない昨今のドラゴンズにとって、つい先日まで育成選手だった外国人アリエル・マルティネス捕手のスタメンマスクは驚きでもあった。日本プロ野球としては、ロッテ・オリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)のマイク・ディアズ選手以来29年ぶりの外国人捕手スタメン出場。ドラゴンズにとっては球団1年目である1936年、助っ人第1号だったバッキー・ハリス選手以来、実に84年ぶりの歴史的な出来事となった。
こうして歴史を掘り起こしただけでも十分価値があるのだが、アリエル・マルティネス選手は、この試合で3安打の猛打賞。前日の「強肩」に続き「強打」もアピールして、スポーツニュースやスポーツ紙の1面でも大きな話題になった。「全国区のスター選手」がなかなか登場しないチームにとっては、時ならぬ明るい話題となった。

アリエルの魅力とは?

単に「外国人捕手」というだけなら、いくら「強肩」「強打」であっても、ここまで大きな注目を集めることはなかったであろう。アリエル・マルティネス捕手の持つ“空気感”がファンの心を捉えたのだろう。甘いマスクに加え、時おり実に真面目な表情が顔をのぞかせる。来日して以来、一生懸命に日本語を学び、今や投手とのコミュニケーションに問題なしという情報が、その真剣なプレーぶりを引き立てる。ひと言で表現すると「けなげさ」を感じるのである。
日本では20歳の婚約者と暮らしていて、7月8日パートナーの誕生日には快打の後にベース上で、両手でハートマークを作っていた。そんな仕草からも、新たなファンをドラゴンズに連れてきそうな予感がする。ディズニーのアニメ映画「リトルマーメイド」主役の人魚姫も「アリエル」という名前だった。同じように愛される要素がある。

正捕手の座に吹くハリケーン

アリエル・マルティネス選手の今後は球団の方針にかかっている。将来に向けてちゃんと起用していくのか否か。外国人選手枠というルールがあり、現在けがをして1軍を離れたソイロ・アルモンテ選手が快復した時にはどうするのか。
谷繁元信さんの引退から長年、未解決の大きな宿題となっている「正捕手」の存在。
そして昨シーズンに続き「あと1本」「あと1点」に泣くドラゴンズにとって、今必要なことは「チーム改革」以上に、もっと大胆な「革命」かもしれない。

顔ぶれが大きく変わっていない打撃陣の中に、そして「正捕手」争いに“新たな嵐”を吹かせることができるのか。背番号「57」のプレーに注目したい2020年夏である。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】        

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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