松原タニシが見たメキシコ「死者の日」。華やかな祭りと隣り合わせの死
11月4日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、事故物件住みます芸人の松原タニシが、メキシコで体験した「死者の日」について語りました。映画『リメンバー・ミー』で有名になったカラフルで華やかな伝統の祭り。その裏側にある、メキシコ独特の死生観に迫りました。
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松原が今回メキシコで体験したのは、毎年11月1日と2日に行なわれる「死者の日」の祭りです。映画『リメンバー・ミー』で広く知られるようになったこの祭りは、古くから続く伝統的な文化だといいます。
もともとあった文化にスペインの占領によってキリスト教が融合し、死者の魂を迎えるお盆のような意味を持つ行事として定着しました。ハロウィンとは全く別物で、メキシコ限定の文化です。
マリーゴールドと骸骨で彩られる
松原が訪れた首都メキシコシティの中心部、ソカロ広場では大規模なパレードが行なわれていました。進撃の巨人ほどの大きさの骸骨が広場にいくつも立ち、その下にはマリーゴールドの花が埋め尽くされていたそうです。
マリーゴールドの花は、死者を先導し、この世とあの世を行き来する道を示す意味があるといいます。マリーゴールドを売る露店も至る所に並んでいました。
教会には、マリーゴールドで作られた絨毯が敷かれ、骸骨とカラフルな切り絵で飾られた祭壇「オフレンダ」が設置されています。遺影と共に、生前好きだったお菓子やろうそくなどが供えられています。前ローマ教皇の写真も祭壇に飾られていたそうです。
この祭壇に並ぶ骸骨の飾りは「カラベリタ」と呼ばれ、頭蓋骨を意味する「カラベラ」から名付けられたものです。砂糖で作った頭蓋骨「シュガースカル」も死者の日の飾りとして知られています。メキシコといえば思い浮かべる骸骨のイメージは、すべてこの祭りに集約されているといいます。
死を風刺したアイコン「カトリーナ」
街中には「カトリーナ」という貴婦人の格好をした骸骨の女性の絵や人形があふれています。これは「カラベラカトリーナ」、つまり「骸骨のカトリーナ」という意味で、メキシコ革命前のスペイン占領下で政治風刺画家が描いたものが起源です。
当時はスペインの貴婦人や、スペインかぶれで貴婦人の格好をしようとするメキシコ人がたくさんいました。風刺画家は着飾った人々に対して「死んだらみんな一緒」という意味を込めて、貴婦人の格好をした骸骨を描いたのです。
この風刺画が爆発的な人気となり、死者の日のアイコンとして定着しました。
愛犬を偲ぶ祭壇
松原は、グアナファトやサン・ミゲル・デ・アジェンデなど、『リメンバー・ミー』の舞台となった街も訪問しました。コロニアル建築と呼ばれるカラフルな家々が立ち並び、幻想的な世界が広がっています。
グアナファトでは「タペテ」と呼ばれる、マリーゴールドなどの花の種を使って骸骨を描いた絨毯のような作品を競うコンテストが開催され、サン・ミゲル・デ・アジェンデでは街中の店がすべて祭壇になっていました。
松原が印象的だったのは犬の祭壇です。亡くなった愛犬の写真を置き、犬の大きな人形を作って祭壇を飾っている家もあったといいます。
4日間続く本場の祭り
「死者の日発祥の地」とされるミチョアカンでは、原住民による本場の祭りが4日間にわたって行なわれます。通常は11月1日がこどもの魂、2日が大人の魂を迎える日ですが、ミチョアカンだけは「その年に死んだ人の魂を迎える日」が追加されているといいます。
現地のマリオさんは「ミチョアカンにはマフィアが多く、人がたくさん死ぬから、今年死んだ人を迎える日がある」と、その理由を語っていました。実際、松原が訪問した直後には、ミチョアカンにある市の市長がマフィアに殺されるニュースも流れました。
松原は「死を楽しむ空気感はあるけれど、同時に死が隣り合わせという怖さもある」と語ります。それでも、ミチョアカンの死者の日の祭りは幻想的で、お墓も『リメンバー・ミー』の世界のようだったといいます。
祭りの裏にある死の日常
松原が泊まったホテル近くのセブン-イレブンで買った新聞の一面には、死体の写真が掲載されていました。地元の人に聞いたところ、タブロイド紙は一面に死体の写真とセクシーな女性の写真を載せるのが人気なのだそうです。メキシコの死に対する独特な感覚を物語るエピソードです。
松原は「死と身近なところにありすぎるメキシコの死者の日、ぜひ皆さんも一度行ってみてください」と締めくくりました。
華やかでポップな死者の日の祭りの裏側には、マフィアによる暴力や日常的な死が隣り合わせに存在する、メキシコの複雑な現実がありました。
(minto)
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