地震雲、人工地震…災害の専門家が疑問に答えます。

9月は防災月間です。私たちの暮らしを守るために、日ごろからの災害への備えが欠かせません。15日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、名古屋大学減災連携研究センター センター長の鷺谷威さんが、リスナーから寄せられた災害に関する質問に答えました。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴くトイレは安全な避難場所って本当?
まず紹介されたのはこんな質問。
「家の中で地震があった時に、狭い範囲に柱が四方にあるトイレがこの避難場所に一番安全、ということを聞いたことがあるような気がするんですが、それは本当ですか?」(Aさん)
これに対し「トイレは家具が少なく、倒れてくるものもほとんどないため、比較的安全な空間といえる」と説明する鷺谷さん。
ただし、強い揺れによって扉がゆがみ、中から出られなくなる可能性があるため、ドアを開けておくなどの対策が必要です。
「地震雲」って本当にあるの?
続いては、昔からよく耳にする「地震雲」に関する質問です。
「地震が発生する前に地震雲を見たという話を聞きますが、その辺りはどうなんですか?」(Bさん)
この問いに対し、鷺谷さんは「科学的根拠はありません」と明言。
鷺谷「災害を経験すると、何か事前に起こったことと関係があるのではないかと考えたくなるのが人の心理です。しかし、地震が起きない時にも、似たような雲が出ていることはたくさんあります」
また、鳥が一斉に飛び立つなどの“異常行動”が前兆であるケースもごくまれにあるそうですが、それぞれの行動の理由をすべて解明することはできないとのこと。
「そういった前兆に頼るのは、あまり現実的ではないと思います」と続けます。
人工的に地震を起こせる?
さらに、こんなユニークな質問も寄せられました。
「地震のメカニズムは、下に入り込んだプレートが我慢できなくなって跳ね上がる。ならば、我慢できなくなる前に小さいミサイルのようなものをプレートの隙間に打ち込んで少し緩める。つまり小さな地震をあえて起こして巨大地震を防ぐことはできないのでしょうか?」(Cさん)
このアイデアについて、「昔から研究者の間では冗談として話されることもある」としつつ、「現実的には非常に難しいです」と答える鷺谷さん。
例えば地下に水を注入することで小規模な地震を誘発することはできますが、それとマグニチュード9.0といった巨大地震とでは、桁違いのエネルギー差があるとのことです。
鷺谷「やはりそのエネルギーは、地震を起こさないと解消できません」
また、人工的に地震を起こそうとしても、やりすぎれば制御ができなくなるおそれもあります。
自然を相手にすることは難しく、少なくともそういった技術はまだ開発されないということです。
災害の備え、何から始めればいい?
最後にこんな質問が寄せられました。
「災害の備えとよく言われますが、何から始めたらいいですか?」(Dさん)
まずは地震が起きても、そこで暮らし続けられる自宅であるかを確認することが大切です。
一部の自治体では耐震診断などが無料で行なえ、耐震改修の補助金制度もあるため、行政のサービスを活用して欲しいと呼びかけました。
また、地域によって備えるべき災害は異なります。
そのため「自分の住んでいる場所でどんな災害が起こり得るか」「発生した場合に自分の生活にどう影響するのか」などをしっかり想像し、考えることが防災の第一歩。
ハザードマップなど、国や自治体などの公的機関から出ている情報を中心にきちんとまず見ることが大切です。
鷺谷「外から入ってくる情報だけではなく、自分から信頼できる情報源にアクセスする姿勢が大切です」
地震や自然災害はいつ起こるか予測できません。
能動的に情報を取りに行く姿勢が、私たち自身の命と暮らしを守る力になります。
(ランチョンマット先輩)
番組紹介

読んで聴く、新しい習慣。番組内容を編集した記事からラジオ番組を聴いていただける”RadiChubu”。名古屋を拠点とするCBCラジオの番組と連動した、中部地方ならではの記事を配信する情報サイトです。