なぜ?全国に1万件以上、増え続けるこども食堂にストップの声

9月15日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では「一緒に食べよう、こども食堂」をテーマに、こども食堂の現状と抱える課題が語られました。2012年から始まったこども食堂は13年程たった今、帰路に立っています。つボイノリオと小高直子アナウンサーが中京大学現代社会学部教授の成元哲(そん・うぉんちょる)先生を招き、こども食堂の現在を尋ねます。
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小高「『こども食堂』という言葉は、もうずいぶん浸透しましたよね」
成「そうですね。2008年のリーマンショック以降『こどもの貧困』という言葉が社会的に認知され始め、東日本大震災を経て絆ブームが起こり、こどもの貧困がクローズアップされ広がり始めたのがきっかけです」
そういった経緯を経て2012年ごろから始まったこども食堂ですが、一体何件ほどあるのでしょうか?
成「今は全国で1万件以上あります。中学校の数が全国で約9,000校ほどなので、中学校の数よりも多いということになりますね」
当初は物珍しかったこども食堂も認知が進んでいますが、そのほとんどは民間のボランティアの主催によるものです。
成「あくまでも民間人の手によって自発的にやり始めたものです。無料または安価で食事をすることができ、地域の交流拠点、または地域で様々な面において困難を抱えている家庭への支援を中心に活動しているのが、こども食堂です」
増え続けるこども食堂
番組では4年前にもこども食堂をテーマに取り上げたことがありますが、「当時と比べると急激に数が増えているように感じている」と小高。
成「災害のたびに増えたり、コロナ禍でさらに増えたりして、右肩上がりに増加していっていますね」
相互扶助の精神のもと、こどもの心身の健やかな健康を守りたいという思いで運営されているこども食堂。
しかしそんなこども食堂は、いま岐路に立っていると言われています。
リスナーからこんな投稿が届きました。
「こども食堂の名付け親と言われている近藤博子さんが、『こども食堂』の名前を使わないと宣言されました。
官民がこども食堂を応援することへの違和感を語っています。官はこども食堂がなくてもいい国にするような政策を、大企業などは雇用をきちんとするべきだと言っているようです」(Aさん)
2012年にこども食堂をスタートさせた近藤さんが、現状に疑問を投げかけているというのです。
こども食堂が増える意味
現在日本では、9人にひとりのこどもが貧困と言われています。
成「そんなこどもたちに対して何かできないか。月に1回、食事の場を設けることならできるかもしれない。そういう人たちが声を上げて活動し始めたのがこども食堂の始まりです」
しかしその一方で「こども食堂が増えれば増えるほど、さまざまな違和感が出てきている」と成先生。
成「こども食堂の活動に賛同して支援や寄付が増えていくのはいいことだけど、こども食堂が増えるということは果たしていいことなのだろうか、という疑問が沸いています」
こどもや支援の必要な家庭を助けたいという思いはあれど、「決してこども食堂を増やすのが目的ではない」と続けます。
成「貧困の背景や根本的な原因についてもっと対処する方法があるのではないか、という流れになってきているのが現状です」
必要なのは根本的な解決策
そもそも経済状態がよくない家庭の支援は政府が行なうべきであるし、本来はこども食堂がなくても、各家庭で不自由なく食事をとれるような国であるべきです。
成「善意で始まったこども食堂に国が頼っているという状況は良くないんじゃないか、という考え方が出てきています。
行政や企業はこども食堂に対して補助金や支援などをしていますが、その背後にあるこどもを巡る学校の問題や親の就労の問題などの根本的な問題が、そのまま放置されている」
本来解決されるべき問題には目が向けられず、こども食堂ばかりが増えている現状に待ったをかける流れになってきているようです。
もちろんこども食堂には、地域の交流の場やこどもたちの居場所作りという大事な役割もあります。しかし生活に困窮する家庭がじわじわと増えているこの状況の中で、こども食堂が過渡期に差し掛かっているということは間違いないでしょう。
(吉村)
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