売り手が突然のキャンセル!M&Aの失敗事例に学ぶこと

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。4月16日の放送では、関西にある運送業のM&Aにおいて「失敗」した事例について、理由と注意点を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ株式会社・経営承継支援の植田駿一郎さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く息子が「荷が重い」という理由でM&Aを決断
今回植田さんが紹介したのは、関西で運送業を営んでいる会社のM&Aにおける「失敗」の事例。どのような会社だったのでしょうか?
植田「年商は3億円ほどで従業員はおよそ20名。お仕事内容としては、建築資材を運んでいる運送屋さん」
取引先には、地元のゼネコンや工務店などがありました。
なぜM&Aを希望したのでしょうか?
植田「社長さんが70歳と高齢になられたことがきっかけ」
ちなみに息子が対象会社に経理部長として勤務していたのですが「社長は荷が重い」という判断から親族内承継は断念し、M&Aを決意されたと植田さん。
契約の最終段階で「事件」が
買い手はすぐに見つかったのでしょうか?
植田「はい。同じ関西エリアの、こちらも運送業をされている会社で売上は100億ほど。過去に買収実績もある会社さん」
北野「この会社は、なぜ手を挙げたんですか?」
植田「売り手企業の営業エリアに進出したい、という理由です」
その後、M&Aはスムーズに進んでいたのですが、最終契約について合意が見えてきた段階で「事件」が起きたそうです。
北野「 何が起きたんですか?」
ある日、急に売り手企業の社長から、仲介会社の担当者に電話が入りました。
その内容は「契約内容もほぼ合意したので、従業員を集めてM&Aを実行することを発表しました。従業員は心配していたが理解を示してくれた」というもの。
ところがその翌週、売り手社長から再び電話がありました。
そこで告げられたのは「従業員から『M&Aを辞めて欲しい』『M&Aをするなら辞める』と言われている。それに便乗した息子が『自分が引き継ぐ』と言い出した」とのこと。
売り手サイドで収拾のつかない事態になってしまったようです。
北野「あれだけ『荷が重い』と言うてたんちゃうの?(笑)要は働いている皆さんが『知らない人のもとで働きたくない、嫌だ』と言いだしたんやろね」
その後、M&Aはどうなったのでしょうか?
植田「急いで売り手社長とご子息に会いに行き、話を何回もしたんですが…社長も従業員と息子の意見を尊重したい思いが強く、M&Aは破断になりました」
北野「そんなパターンもあるんですね」
M&Aの失敗事例に学ぶ大事なポイントは
北野は今回の失敗例の気をつけるべきポイントを伺いました。
まずは従業員の開示は、正式に買い手企業と契約内容を合意してから「確定事項」として発表すべきだと言う植田さん。
また、買手企業の社長、もしくは取引のキーマンと一緒に発表することが大事だと続けます。
植田「完全に決まっていない状況で従業員へ開示をすると、良からぬ噂が広がってしまうので、リスクが大きいんです」
さらに、親族内承継の可能性については、ちゃんと話ができているか確認することが重要だと念押しします。
北野「中途半端に『売るみたいやで』だとかね」
今回のようなことがあると、取引に関わった人たちに迷惑がかかるし、嫌な思いが残ってしまいます。
北野は「M&Aを予定されている皆さん、今回のことの無いように気をつけましょう」と注意喚起を呼びかけました。
(野村)
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