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関西電力あきれた金品受領を「ことわざ」で斬ってみる!

関西電力あきれた金品受領を「ことわざ」で斬ってみる!
画像『写真AC』

「〇〇屋、お前もワルよの~」と悪い代官がにんまりと笑う。目の前の畳には桐で作られた立派な菓子箱、そして饅頭の下には黄金色の小判が顔をのぞかせて・・・。
時代劇で幾多も見てきたシーンであるが、まさか今の時代にこんな風景を現実として思い浮かべる経験をさせられるとは思ってもいなかった。
関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題からは、ついつい様々な「ことわざ」が浮かんできてしまう。

開いた口が塞がらない

「相手の行動に対してあきれてものが言えない」という意味である。
関西電力が2019年10月2日に発表した調査報告書の内容には、驚きも怒りも通り越した感覚におちいった。役員20人が高浜原子力発電所のある福井県高浜町の元助役から10年以上にわたって受け取っていた金品は、実に3億2000万円分だったと言う。
報告書によると、この内、現金は約1億4500万円、商品券は約6300万円なのだが、金貨・金杯・金・小判型の金と、お金ならぬ「金」そのものが登場しているところに衝撃を受けた。さらに75着分というスーツ仕立券である。これをどうやって返却するのかと思ったら「儀礼の範囲内で使用した」とのこと。返却したのは14着で、残り61着分は「スーツ」となり着用されたのだろう。何とも生々しい話である。

濡れ手で粟

「何の苦労もせずに多くの利益を得ること」という意味である。
受け取った金品は、調査報告書によると「当初から返却すべきだと考えながら、すぐに返却するのは断念」とある。「一時的に保管していた」とのことだが、それは「自宅、会社事務室の机の引き出しなどで基本的に個人が管理。会社としての管理はされていなかった」と報告されている。
最初に会長(当時は常務)に商品券が渡されたのが2006年(平成18年)、1億超の金品を贈られた原発関連役員が最初に金券などを渡されたのは2010年である。それから返却までの時間を「一時的」と言えるのかどうか。落とし物や交通機関での忘れ物でも、警察や交通当局での保管期間は「3か月」である。原発への取り組みについて「何の苦労もせずに」と一概に言い切ることはできないかもしれないが、「一時的に」であれ「利益になり得るもの」を所有していた事実は否めない。

死人に口なし

「死んだ人は罪を着せられても釈明や反論をすることができない」という意味である。
調査報告書には、金品を主導的に渡した高浜町元助役のいわゆる“強硬な姿勢”について多くの記述がある。「叱責」「罵倒」「恫喝」などの表現と共に、受け手の関電側は「苦痛」「恐怖」「緊張」などを感じたとのことだ。そこから「金品を直ちに返却することは現実的に相当困難」という理由に結びつけられているのだが、この元助役は今年3月に90歳で亡くなっている。もはや言い分を聴くことはかなわない。一般的に世間では「脅されて金品を奪われる」ケースはあると思うが、「脅されて金品を受け取る」という事実には違和感を覚えてしまう。強引に受け取らされたスーツ仕立券で寸法を測って作った服、その着心地はどんなものだったのだろうか。

喉元過ぎれば熱さを忘れる

「苦い経験も過ぎさってしまえばその熱さを忘れてしまう」という意味である。
関西電力は、会長と社長が報酬の20%を2か月返上するなどの社内処分を明らかにした。しかし「原因究明と再発防止策を図ることが経営責任を果たすこと」と辞任は否定し、今後は第三者委員会に調査を委ねるという。
調査報告書は、役員会において社外取締役に報告されていなかった。10月4日に召集された臨時国会では、大企業に社外取締役の設置を義務付ける会社法改正案が審議されるなど、情報開示を含めて「企業統治」には厳しい取り組みが求められる時代である。年内に報告されるという次なる調査結果を待ちたいが、痛みを伴うべき「熱さ」だけは忘れてもらっては困る。

東日本大震災から8年半。台風15号による千葉県での停電被害への復旧において、東京電力は危機管理対応の甘さを露呈した。そして今回の関西電力。「2011年3月11日」という日について、電力という大切なエネルギーに関わる企業としての受け止め方が、このような形でしかなかったのかと残念である。
「信頼回復」という言葉が今はぼんやりとも見えない、そんな2019年10月である。

【東西南北論説風(130)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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