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新型コロナウイルスが沖縄の経済を直撃している!

新型コロナウイルスが沖縄の経済を直撃している!
筆者撮影:国際通の歩行者天国

沖縄には50回近く訪れているが、国際通りのこうした姿を見るのは初めてだった。
2020年2月の最終日曜日、恒例の歩行者天国を楽しむ人の数はあまりに少なかった。

国際通りの淋しい日曜日

那覇市のメインストリート「国際通り」は毎週日曜日に1.3キロにわたって「トランジットモール」と呼ばれる歩行者天国になる。地元の人たちや国内外からの観光客であふれ、オープンカフェやストリートパフォーマンスなど楽しい風景が繰り広げられるのだが、この日、通り真ん中辺りの交差点に立つと車道を歩く人は数えるほどだった。
那覇市で目撃したこの風景に象徴されるように、新型コロナウイルス感染の影響で沖縄を訪れる人の数は激減している。毎年2月は中国の旧正月「春節」に合わせて旅行する中国人観光客で町が溢れかえるのが、最近お馴染みの風景だった。

クルーズ船ふ頭に船影なく

2019年に沖縄県の観光客数はおよそ1016万人と、初めて1000万人を突破した。過去最多である。“観光立県”としてますます人気は上昇していた。この内、外国人の数は293万人、中でも中国人旅行者の伸びは目立ち75万人と、“4人に1人”まで増えていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大によって、中国政府が団体での海外渡航をストップしたこともあって、その数は一気に減った。
那覇空港近くにある「波の上」地区にはクルーズ船ふ頭(那覇港泊ふ頭8号岸壁)があり、ここにまるで巨大ホテルのような大型クルーズ船が停泊しているのも見慣れた風景だったが、ふ頭に船影はなかった。那覇港に寄港予定だった大型クルーズ船は続々とキャンセル、今後も3月どころか5月以降でもキャンセルが出始めている。

那覇以外の町にも影響は色濃く

観光バスやタクシー業界も直撃された。団体旅行客が減ったため、キャンセルが相次いでいる。利用したタクシー運転手の話では、グループ客が利用する大型車両を専門に運転していた仲間は悲鳴を上げているそうだ。
那覇市の北隣、浦添市には地元スーパーが展開する東京ドーム2個分ほどの巨大ショッピングセンターがある。以前は駐車場に連日、沢山の観光バスやタクシーなどが並び、買い物を楽しむ人たちで溢れていたのだが、訪れた時、駐車場に停まっていた観光バスは、わずか1台だった。
本島中部の観光スポット、北谷町のアメリカンビレッジも、週末に街を楽しむ人はピーク時の半分ほどだった。中国からの旅行客が店の外にまで順番待ちの行列を作っていた回転寿司店は、すぐに席に座れる空席状態だった。ホテルの責任者に話を聞いたが、そのホテルでは日に1000人単位でキャンセルが入ったこともあったと言う。マスク姿から悲しみが醸し出されていた。

ステーキにも思わぬ打撃

沖縄と言えば、食の人気にステーキ店がある。
年の初めから、CSF(豚コレラ)に感染した豚が見つかり、食卓に欠かすことのできない豚肉に大きな不安が広がったが、今回の新型コロナウイルスは、このステーキ用の牛肉にも影響していると言う。なぜか?
牛肉は中国産ではないのだが、海外から輸入する牛肉はいったん中国に運ばれて、そこで仕分けされてから沖縄県に運ばれているのだ。その物流が滞り、思わぬ事態となっている。その歴史から中国との関係が密接な沖縄だけに、観光客激減の他にも、中国国内の感染拡大の影響が沖縄経済にも影を落としている。
2001年、アメリカで同時多発テロがあった時、「米軍基地が沢山ある沖縄がテロの標的になるのでは?」という風評被害によって観光客が激減した。この時は観光収入がおよそ200億円減ったと言われているが、新型コロナウイルス感染が終息しないと、それを上回る痛手になるのではとの不安もささやかれていた。

ドラゴンズキャンプ地も警戒

毎年2月はプロ野球の各球団が沖縄県内各地で春季キャンプを行う。中日ドラゴンズのキャンプ地である北谷球場で開催されたオープン戦では、試合中も度々電光掲示板には感染に注意するよう呼びかける文字が映し出されて、手洗いなど予防を呼びかける放送が流れた。飛沫を防ぐため、ジェット風船による応援も自粛となった。
女子ゴルフツアー国内開幕戦「ダイキンオーキッドレディスオーナメント」も無観客試合となった。
毎年、沖縄から各地に広がっていく“スポーツシーズン到来”の明るい空気も、今年ばかりは重苦しいものに感じられた。

新型コロナウイルスのリスクは、沖縄県だけでなく全国の都道府県に、様々な余波を広げつつある。感染防止の基本をしっかり守って“正念場の春”を乗り切らねばならない。
屋根の上のシーサー(魔除けの像)に思わず「頑張れ!」と声をかけた。

【東西南北論説風(155) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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