意外と知らない『心臓弁膜症』原因や早期発見の方法を専門医が解説
サマリーSummary
ドクター:済生会横浜市東部病院 心臓血管センター循環器内科 部長 医学博士 山脇理弘
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
今回のテーマは「~放置すると命の危険!?~意外と知らない『心臓弁膜症』」
現在日本人の死因第2位の深刻な病「心臓病」。狭心症や心筋梗塞などはよく知られていますが、意外と知られていないのが「心臓弁膜症」。国内推定患者数は、60歳以上で約284万人、75歳以上だと8人に1人が患っているといわれています。そこで今回は「心臓弁膜症」について徹底リサーチ。原因や早期発見の方法などを専門医に教えてもらいました。
心臓弁膜症について
<心臓弁の働き>
心臓の構造は、右心房・右心室・左心房・左心室という4つの部屋に分かれています。心臓弁は各部屋に1つずつあり、これが開いたり閉じたりする事で血液を送り出しているのだとか。先生によると、心臓のドクンドクンという音は、心臓弁が閉じる時の音。心臓弁が24時間365日働いてくれているおかげで私たちは日常生活を送れているのだそうです。
<心臓弁膜症とは?>
心臓弁膜症とは、心臓の中で血液を送り出す働きをする「心臓弁」の機能が低下している状態をいいます。誰でも発症する可能性があり、放置すると心不全や不整脈を引き起こし、最悪の場合突然死にいたる場合もあるのだとか。さらに、症状は息切れ・足のむくみ・身体のだるさなど加齢による症状と似ているため、歳のせいだと思い込み気づかない人も多いそうです。
<狭心症・心筋梗塞との違いは?>
先生によると、狭心症とは心臓の表面を走る冠動脈が狭くなり血液の流れが悪くなる病気。心筋梗塞は、冠動脈が血栓で詰まり心筋が壊死した状態の事だそうです。
<近年増えている2つの心臓弁膜症>
(1)大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症とは、心臓の左心室と大動脈の間についている「大動脈弁」が硬くなって、弁が開きにくくなる病気だそうです。
(2)僧帽弁閉鎖不全症
左心房と左心室の間の僧帽弁で起こる僧帽弁閉鎖不全症は、弁の閉じ方が不完全なために、血液が逆流してしまう状態だそうです。
心臓弁の機能が低下する原因
先生によると、心臓弁の機能が低下する主な原因は、動脈硬化。動脈の血管が硬くなる動脈硬化は、加齢をはじめ高血圧や肥満などによって起こるといわれています。動脈硬化が進行すると、弁の組織が硬くなる事があり、それによって弁の弾力性が失われて正常に働く事ができなくなってしまうのだとか。すると、心臓に余計な負担がかかり、息切れやむくみ、だるさといった症状を引き起こしてしまうそうです。
<心臓弁の機能が低下するその他の原因>
先生によると、先天的なものと動脈硬化以外に、僧帽弁を支える役割を持つ「腱索」が切れる事によって心臓弁の機能が低下してしまう事があるそうです。40~50代の方でも何らかの原因で腱索が切れる事があるので、息切れやだるさなどの症状が急に現れた場合などは、一度検査を受けるのがオススメ。また、虫歯が原因で細菌が心臓弁に巣を作り炎症を起こす事もあるそうです。
早期発見のカギは「聴診」
心臓弁膜症になると、心臓の音を聞いた時に「心雑音」といって血液が弁の狭い部分(狭窄)を流れる時の摩擦音が聞こえるそうです。そのため、かかりつけの病院や健康診断の聴診などで異変を見つける事ができるのだとか。心雑音が聞こえたら、超音波による心エコー検査でさらに細かく調べる事もできるそうです。
<65歳以上になったら年に1回心エコー検査を!>
心エコー検査は、超音波を使って細かく心臓弁の状態を調べる事ができます。65歳以上の方は年に1回心エコー検査を受けるのがオススメだそうです。
心臓弁膜症の治療法
先生によると、心臓弁膜症の標準的な治療法は外科手術との事。人工弁を患者さんの体内に入れる事で本来の弁の機能を取り戻す手術で「人工弁置換法」というそうです。また、80歳以上の高齢者の方や肺・肝臓に疾患を持っている方など、外科手術をした際の危険リスクが高い方には、牛や豚などの生体弁を使用する「TAVI」という患者さんへの身体の負担が軽い手術もあるのだとか。どちらの治療を行うかは、外科や内科、麻酔化などさまざまな分野の先生が集うチームで何度も話し合い、治療方針を決めていくそうです。
<TAVIを受けるための条件>
・80歳以上
・肺・肝臓・腎臓など心臓以外に疾患がある
・足腰が弱い(フレイル)
・開胸手術を受けた事がある
※75歳~79歳は健康状態に鑑みて医師が判断します
詳しい条件はTAVI治療可能な医療機関にお問い合わせください
(2022年9月18日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)