「胃」の健康知識を総チェック
サマリーSummary
ドクター:東京医科大学病院 内視鏡センター 部長 主任教授 医学博士 河合隆
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
今回のテーマは「夏にトラブル急増!?知っておきたい胃の知識」
冷房の効いた部屋で過ごしたり、冷たい物を食べて涼を取ったりする夏場は、冷えが胃に負担をかける事で胃のトラブルが起こりやすい季節。さらに、コロナ禍になってからは自粛生活などのストレスで、血流が滞り胃に負担がかかっているといわれています。そこで今回は、胃に関する健康知識を専門医に教えてもらいました。
胃の健康知識(1)胃の別名は「おしゃべりな臓器」
胃は、食べ物を消化するための臓器です。些細な事で、胸焼けや胃もたれ、膨満感などさまざまな不調が出やすいため、「おしゃべりな臓器」ともいわれるそうです。大きさは、空腹時だと拳大ほど。満腹になれば最大で約20倍にも膨らむといわれています。
胃の健康知識(2)胃はどうやって食べ物を消化する?
食物が胃に入ると、胃壁から強い酸性の胃酸などが分泌されます。そして、筋肉を収縮させながら食物と胃酸を混ぜ約3~6時間かけてドロドロに消化。栄養を吸収すると腸へと送り出されるそうです。
胃の健康知識(3)胃の壁面を見れば胃の健康状態がわかる!?
健康な胃では、血管(静脈)が胃壁に現れ、血管が枝分かれしている様子がヒヨコの足跡のように見えるのだとか。ところが、生活の乱れから胃に負担がかかり、胃炎などになると血管の様子が見えなくなってしまうそうです。
胃の健康知識(4)冷たい物を摂り過ぎると胃の働きが遅くなる
冷たい物を摂りすぎると、胃の温度が急激に低下。血流が悪くなり、胃の蠕動運動の回数が減少します。すると、胃の中にある食べ物の停滞時間が長くなり、胃もたれなどの症状を引き起こしてしまうそうです。先生によると、それでも冷たい物を摂りたい時は、食前食後を避けると良いとの事です。
胃の健康知識(5)焼き魚は消化には良くない!?
魚のたんぱく質は、加熱温度が高いほど、変性して硬くなるといいます。そのため、高温で焼く焼き魚は、皮も身も硬くなり消化には良くないのだとか。焼き魚を食べる際は、よく噛んでから食べる事で身が小さくなり消化しやすくなるそうです。一方、一番消化に良い魚の調理法は加熱していない刺身。煮魚は、焼き魚ほど加熱温度が高くならないため、消化には問題ないそうです。
<胃の調子が悪いときは「おかゆ」や「うどん」がオススメ>
先生によると、栄養素によっても胃での停滞時間が異なるそうです。一番短いのは、ご飯やうどんなどの炭水化物。次にたんぱく質、脂質の順となります。そのため、風邪などで胃の調子が悪い時におかゆやうどんを食べるのは理に適っているのだそうです。
胃の健康知識(6)胃酸が逆流しやすい姿勢は「右側が下」
先生によると、食後に右側をして横になると胃酸が逆流しやすくなり、逆流性食道炎につながる恐れがあるそうです。逆流性食道炎とは、げっぷや咳などがきっかけで胃酸が食道に逆流し、それによって食道が炎症を起こしてしまう病気の事。胃酸の逆流を防ぐためには、左側を下にするのが有効だそうです。また、食べ過ぎにも要注意!食べ過ぎて太ると、内臓脂肪が胃を圧迫し、胃酸が食道に逆流しやすくなるそうです。
胃の健康知識(7)ピロリ菌が胃がんと密接に関係!?
最近の研究で、胃がん患者の94%がピロリ菌に感染している事がわかったそうです。ピロリ菌の感染者は非常に多く、日本人の4人に1人が感染しているといわれています。
<ピロリ菌による主な弊害>
(1)胃酸の質を変える
ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を作り出し周囲の胃酸を弱めてしまいます。すると、胃酸が弱まる事で消化能力が低下し、胃の負担を大きくしてしまうそうです。
(2)胃のバリアを破壊する
通常胃壁は、胃酸から粘液層という胃を傷つけないためのバリアによって守られています。ところが、ピロリ菌はその粘液を出す細胞を壊してしまうため、胃酸が直接胃壁に触れてしまいます。すると、慢性胃炎や胃潰瘍、最悪の場合胃がんにつながる恐れもあるそうです。
<ピロリ菌は除菌可能!気になる方は一度検査を>
先生によると、現在のピロリ菌検査は、呼気検査や血液検査などが主流。感染していた場合も、抗生物質などの薬を飲む事で除菌できるそうです。気になる方は、ぜひ検査を受けてみてください。
(2021年7月4日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)