アライバコンビ、プレーは共にいぶし銀の職人肌!性格は正反対のまさにふたりは、ボケとツッコミ!
CBCテレビ野球中継「燃えよドラゴンズ」燃えドラch
川上・井端のすべらない話シリーズ アライバコンビ荒木雅博後編
ドラゴンズ黄金時代を支えた投打の両輪でもあり、97年ドラフト同期でもある川上憲伸、井端弘和が、グラブからマイクに代え、イバケンコンビを結成!燃えドラchというフィールドで球界裏話や同僚、ライバル話を大放出!
大好評の川上・井端のすべらない話シリーズ、前回に引き続き、不世出の二遊間、憲伸さんが“世界一の二遊間”と太鼓判を押したアライバコンビの荒木雅博現一軍内野守備走塁コーチを語る!タイロン・ウッズをフルカバーする守備範囲の広さや、センター方向に抜けそうな当たりを逆シングルで捕り、まるでエア・アラキの如く、マイケル・ジョーダンばりのジャンプで一塁へのスローイングをしては投手陣を助けていた荒木さん。今回もイバケントークは絶“口”調!見逃すことなかれ!
まるでタチウオのよう
荒木さんが現役時代に“魅”せた数々のスーパープレーには、アライバコンビの相方であるイバチンも驚くことが多かったようだ。
井端『(荒木は)本当にビックリするようなプレーをやるよ。またキレイでしょ?ダイビングする姿が。オレの場合は地面を這っていくような感じだけど、アイツは完全に宙に浮いているから』
川上『海でタチウオが飛んでいる感じ(笑)』
荒木さんのダイビングといえば思い出すのが、2017年8月29日ナゴヤドームでのベイスターズ戦で見せた、本塁へのロケットダイブ!
ジャンプすればジョーダン(前編参照)、ダイビングすればタチウオ!
飛びます!飛びます!荒木さんはやっぱり凄い!
井端『またキレイなんだよ、一直線で』
川上『飛んでも、あんまり汚れないでしょ?アイツ』
井端『下から行くと汚れるのよ。接地面が多いのか。荒木の場合は、空中に飛んで落ちているから、地面を擦っていないんだよね。それで牽制で帰塁する時は寝ているだけだからね』
川上『それこそ飛べなくなったタチウオみたいに、ペタっと(笑)。ヘッドスライディングは引退する年かな、初めて見た』
飛べなくなったタチウオ(笑)
さすが憲伸さん!毎回感心するのだが、笑いのツボをキッチリと押さえている!
井端『たぶん落合監督に“ホームにヘッドスライディングするな”って、言われていたんだよね。今はブロックできないからいけるようになったけどね。危ないっていう話なら、ドラゴンズの選手がよく一塁へするけど、やめて欲しいよね。見ていて怖い。ファーストだって、ジャンプする可能性があって、落ちた時に手を踏まれたらケガするでしょ』
ヘッドスライディングの怖さ。
ドラゴンズファンにとっては今でも忌まわしい思い出となる10.8決戦で立浪和義さんがみせた一塁へのヘッドスライディング。
その際、左肩を脱臼したシーンを誰もが頭に思い浮かべるはずだ。
天然なのか、刺す気がないのか
どのチームにも内野連携において、多種多様のサインがある。
その中でも牽制は特別となる、とっておきのサイン。
イバケンのふたりがプレーしていた当時、3人でできていたサインがあったという。
井端『憲伸と牽制で何回か刺しているけど、“牽制のサイン”は出さない。そのサインがないイコール、相手もしてこないと思うよね』
セカンドランナーはいつもイバチンの動きを注視。
何もサインが出てないと思えば、当然いつもよりリードも大きくなる。
その動きを見て、イバチンは忍者のようにベースへ近づく!
井端『イケると思ってベースへ走っていくと、憲伸が投げてきてアウトにするというのが何回かあったよね。これはセンスだよね、川上さんのセンスですよ!』
ほめ殺しのイバ!(笑)
そして褒められて嬉しくないはずがない憲伸さん!
だからということではないが、ついついお得意のディスりトークを口にしてしまう(笑)。
川上『イバはセカンドランナーがいた時、“刺したろう!”っていう気があるじゃん。でも荒木クン(呼び方がトラじゃない)はあんまりないのよ。彼、ランナーに興味ないんだわ』
実際、こんな話のやりとりがあったという。
イニング交代時、ベンチからマウンドへ上がる際、憲伸さんが荒木さんに向かって、もしセカンドへランナーが行った場合の牽制について話を持ち掛けたそうだ。
天然なのか、憲伸さんの話す通り、刺したろうという気持ちがなかったのか、荒木さんはこう返答したそうだ。
『はっ?大丈夫っしょ!(ランナー)出さないっしょ!』
井端『(大爆笑)分かる!分かる!それ!』
アライバコンビ、漫才師に例えれば、イバチンはツッコミ。
そして荒木さんは間違いなくボケ担当に間違いない!
味方も騙す牽制
現役時、憲伸さんがピンチを迎えた時、投手コーチはじめ、みんながマウンドへ集まった。
多くは“ここはしっかり低めに投げてダブルプレーを取ろう!”と、励ましの言葉をかけられたというが、イバチンはひとりだけ違ったという。
川上『イバだけは“ケン、2回目刺そう!2球目!”とか言うわけ』
マウンドへ集まったのを励ましの場ではなく、牽制で刺す作戦の場と考えていたのだ。
井端『そこまでは何もしていないから、相手も油断があるしね。ここ!っていう時に刺したらめちゃくちゃデカいでしょ!』
イバチンは牽制の網を張る時はいつも、ドカベンの殿馬みたいに後ろで手を組んで、“何にもせんぞ!”と言わんばかりに立っていたそうだ。
井端『2球目の前も“何もせんぞ!”という雰囲気を出し、外野とか見ながら、さっとベースに入るの。アウトになった時の快感はないね!』
川上『キャッチャーの谷繁さんも当時分かっていないから。一球目を投げ、バッターの様子を伺いながら、二球目には何を投げさそうと考えていたら、“うっ、何牽制してんねん!”みたいな(笑)』
当然、キャッチャーから指示する牽制サインがあり、またショートから出す牽制サインもある。それはいずれもキャッチャーは承知の上。そのキャッチャーにも内緒でプレーするわけだから、相手走者も騙されるわけだ。
井端『味方も分かっていないからね』
川上『たぶん他の野手たちは、“あれ?サイン見逃したかな…”と思っちゃっているよね』
井端『牽制サインを出すと、一瞬その空気になるよね。自分でも感じる時あるから』
牽制について、憲伸さんには忘れられない面白話がある。
牽制サインの中に「ネック1」「ネック2」っていうのがある。ランナーがセカンドの時、ランナーを一回見て、二回見て牽制する行為。
この牽制でかつて大ボケをかました投手がドラゴンズに在籍していたという。
今年からカープの打撃投手として活躍しているサウスポー久本祐一さんだ。
彼はまず、セット入ると同時にまずセカンドを見てしまうクセがあった。
もうお分かりかと思うが、その時の一回見た回数が含まれるか否かという話(笑)。
川上『練習の時に聞いたの。“最初にまずセカンドを見る、あれって内野手からは一回って思っちゃってない?まずはホームを向けよ”って言ったら、“いや、ボク無理なんすよ!どうしていいか、憲さん分かりません!”って言うのよ。だから久本の場合、セットのタイミングからネック1になるわけ(笑)』
ホームを見ながらセットに入るという矯正が久本さんには必要だったわけだ。
あうんの呼吸で守備位置を変え、チームのピンチを救う二遊間。
強いチームは必ずや素晴らしいコンビが存在する。
川上『二遊間っていうのはね、色んな事件が起きるのよ。ボクは二遊間を固定して欲しいというのは、そういうところもあるのよ。慣れていると二遊間同士で、上手く牽制できないピッチャーをリードしてくれるだろうし、あと目で合図してやることもできるしね』
井端『違う人が来たら、こっちがドキドキする。サイン出た時、相手が分かっているかどうかも不安になる。そこが荒木だと“なんか出たか?”っていう感じで合図を送ると、向こうもふたりで使っていたサインを出す。これですよ!みたいな。その逆もあるしね。違う人が来たら、そういうサインもない。相手から“えっ!?”という顔されても、言葉出せないから難しいよね』
ひと癖、ふた癖あって、自チームからは頼りにされ、他チームからは嫌がられる。
2004年から6年連続ゴールデングラブ賞を受賞し合ったイバケンコンビはまさにそんな存在であった。
ドラゴンズが常勝チームに生まれ変わる為にも、阿部、京田の二人がイバケンコンビに少しでも近づき、成長していくことをドラファンは期待している。
気になるプライベートのお付き合い
最後に気になるのがプライベート。
練習やゲームが終わった後のお付き合いってどうしていたのだろう?
川上『(シーズン中)基本的に、キャッチャーとピッチャーは反省会があって、打たれてションボリしているピッチャーを見れば、谷繁さんあたりが“今日ちょっと飯行くか?”とか誘ってくれて、野球の話もせずに次に切り替えられるよう、リフレッシュさせてくれたりするんだけど、内野手同士はそんなになく、行くのはレギュラー選手と控え選手の組み合わせ。レギュラー同士でそういうのはないでしょ?』
井端『レギュラーはあくまでも自分のペースがあるから、誘いにくいよね。年が下だろうが。年上を誘うことはまずないから。だから荒木を誘おうとしてもためらうよね』
川上『ロッカーの中でもレギュラー同士が集まってとか、じゃれているのはないよね。だから遠征先でもみんな行先が違う。“よし!じゃあ今日行くか!”っていうのはどの球団もない。あの強いソフトバンクだって、絶対ないよ!』
井端『年に一回あるかないかだね』
川上『みんな意外とレギュラーは孤独なんです』
では、投手と野手の組み合わせはどうなのか?
井端『先発ピッチャーなんて、到底誘いにくいよ。勝って余裕があるからと思ったら、もう次の日いないから。遠征先だと戻っちゃうからね。だから憲伸ともほとんどないよね』
川上『シーズン中はないよ。名古屋だったら、みんな車で来ているし、ゲーム終わったらすぐ帰るでしょ。三日間の遠征で一試合目投げたら、二試合目は練習して、もう名古屋に戻らないといけない。二試合目に投げるのは一番損。着いた日は何もできないし、遡って二日間は閉じ篭らなくちゃいけないから』
井端『遠征、遠征とかだと、投げて、帰って調整だから。また休日も一人で休みだからね』
川上『だからリリーフ陣行くのも少なかったよ。投げた日ぐらいは出かけられるけど、ちょっとした(体の)ケアもしなくちゃいけないからね。半分ぐらい負けているのに、出かけていたらなんか言われるし。勝って気分良く行っても、“あいつ、遅くまで飲んでる”とか言われるしね』
意外とマジメなんですね!
で、本当のところはどうだったんですか、憲伸さん?(笑)
(竹内茂喜)