ドラゴンズ藤嶋健人 血行障害の悪夢から「初めて野球するかのようなウキウキ感」までに至る物語
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
優勝の可能性があるのか、CSに進むことが出来るのか、もちろん勝利を追い求めつつも個人のタイトル、将来へ向けた育成、様々な目的も同時に追いながらの試合を見守っているどこか心の落ち着きがないようなそんな季節がやってきた。
そんな中、山本投手の2勝目を飾る好投で今週の戦いをしめくくった。真夏のピークが去ったその涼しさとともに、シーズンの終焉を感じながらも未来に向けた可能性にワクワクさせられる試合だった。目が覚めるような躍動は、チームの雰囲気も活性化させていく。まだまだ終わらなせないぞという気構えで瑞々しい活躍をしている選手たち。その中の1人藤嶋健人投手のインタビューを振り返ります。
藤嶋投手を襲った血行障害の悪夢
藤嶋健人投手。キャンプ入り前血行障害の報道があった時点では、今こうした表情で番組に出ていることなど予想できなかっただろう。血行障害はドラゴンズでも、現役でも岡田俊哉投手や、鈴木翔太投手などが戦って苦労している。症状の違いはあれど、そこから思うように復活できるのかはわからない。更には成績を残すことまで期待する方が酷だと思われていただろう。しかし藤嶋投手は、現状の19試合無失点という安定した成績で”復活“を示して帰ってきたのだ。
その”復活“に宮下純一氏が迫った。
ドラフト指名時に藤嶋投手の美声でEXILEを歌い上げた以来の2人の対談となる。
まず、宮下氏にその歌唱力を披露しているのかと聞かれ、
「ちょこちょこ(評判で)去年のオフもちょこちょこ笑」
と藤嶋投手らしい楽しく和やかな雰囲気から始まった。
二度目の手術の決断の後、復帰登板での藤嶋投手の心境は?
血行障害について藤嶋投手はこう解説する。
「(手首に)二本の動脈があるんですけど、ほとんど塞がってしまった状態で、手がもう自分の手じゃないような感覚。」
ー感覚が違う?
「ほぼ感覚ゼロでした。目で見たらボールを握っているんですけど、何も触れていないみたい。」
昨シーズン、松坂大輔投手の緊急登板回避により鮮烈な先発デビューを飾り今シーズン活躍する姿を最も期待されていた選手の中の一人であった。そんな折のこの事態に藤嶋投手本人の受けたショックは想像を絶するものであったろう。しかし、プロ野球のピッチャーとして覚悟を決めて決断をした。手術に対して藤嶋投手はこう語った。
「幸い手のひらを切る手術はしなくてもいいということだったので、早く治したいという気持ちで手術しました。」
ーこのまま投げれなくなるとかネガティブなことは思わなかった?
「ないことなかったですね、正直。手の感覚がゼロになった時は右手なくなるんじゃないかくらいに思っていた。」
しかし今年2月の手術後、症状の思うような改善は見られなかった。全く感覚のない恐ろしい状態から、どこまで回復するかわからない先の見えない状況を藤嶋投手は正面を切って立ち向かっていった。
「少しでも良くなるんだったら、なんでもやってみようと2回目の手術はやりました。」
その決断は事態を好転させた。手術後一番最初に投げたときの気持ちはを藤嶋選手はこう話した。
「意外にいけるっていう感じ。気温が上がって暖かくなるにつれて症状は良くなった。」
6月16日、甲子園でのファーム阪神戦の復帰登板で好投した藤嶋投手。そのときの心境についてこう語った。
「たまらなかったですね。野球をやっていて投げられなかったことがない。(今までの野球人生で)大きい怪我もなかったですし。2ヶ月ボールを触っていないなんてもう大丈夫かなと。初めて野球をするかのようなウキウキ感はありましたね。」
こう言った気持ちで野球をしている姿が我々ファンの胸にも響くのだろう。たまたまこの試合を観戦したが、マウンドでの藤嶋投手を見たときに感じた嬉しさとこのコメントがリンクした。また新たな一歩目を見られたことを嬉しく思う。
藤嶋投手今季活躍のワケを本人と川上氏が分析
復帰登板から藤嶋投手は”復活“へ着実に近づいていく。そして、その影には憧れの投手の存在があった。
きっと藤嶋投手を支える要素の一つであろう選手の存在だ。
今シーズンの活躍の要因を聞かれると藤嶋投手はこう答えた。
「ストレートの球速が去年より平均で2~3キロ速くなっている。オフに球速を上げることを目指してトレーニングもずっとやってきた。上原浩二氏からも色々アドバイスをいただいた。ボールの握り方や、リリースの感覚。そういう事をうけてこの結果が出ているのかなと思う。」
相手バッターにとって打ちにくい腕の振りに対しての意識を藤嶋投手はこう語る。
「カーブ以外はまっすぐと同じに見えるように意識して投げている。打者がワンバウンドでも振ってくれるのは、今が全部強く振れているから。」
またもう1点改善したポイントとしてあげられたのは、3ボール2ストライクからの投球だ。その意図についてはこう語る。
「キャッチャーの方はコースに構えてくれるんですけど、そこ狙っちゃうとフォアボールになるリスクがあるのでそれだったら真ん中に投げてやれと。キャッチャーに大胆に狙ってくれればいいからと常に言われているので。キャッチャーのことを無視しているわけではないです笑」
見ていて気持ちが良い投球術はこうした意識の賜物だろう。
また川上憲伸氏は藤嶋投手躍進の理由をこう解説した。
「今年の印象は落ち着いて投げている。テイクバックが大きいピッチャーではないので、リリースする瞬間に手が出てくる。それは彼の得なところ。さらにそこから同じ軌道で曲がっていく。」
藤嶋投手自身も意識しているリリースや腕の振りに対して評価されており、この結果が残せていることも頷ける。評価を糧に輝きを増していくなかで目標についてはこう語った。
「ドラゴンズに欠かせないピッチャーになりたい。先発、中継ぎ、クローザーどこであろうと困ったときに藤嶋と頼れるようなところを目指していきたい。」
最後に、岩瀬仁紀氏と谷繁元信氏が、藤嶋投手のクローザーとしての適性について話していたことを伝えると満面の笑みを浮かべて喜んでいた。この先数少ない残り試合、更には来季に向けピュアに野球を楽しんで“頼れる藤嶋”を見せつけてほしい!
澤村桃