ドラゴンズ大野雄大ノーヒットノーラン達成!昨季0勝から見せたその雄姿
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
朝晩と爽やかな風を感じられるこの季節、大野雄大はノーヒットノーランを達成した。
それはシーズン終盤、クライマックスシリーズ進出へ僅かな望みを託して戦うなか、「まだ終わらせたくない、まだ出来ることがある。」そんな思いを持った選手たちがつくった一つの結晶のような記録だった。
サードライナーで試合終了した瞬間に、はち切れんほどの笑顔と少年のように無邪気に全身で喜びを表していた。見ている者もそのピュアな歓喜に巻き取られ、選手達と観客はまるで優勝した瞬間のようだった。大好きなお酒を「優勝」の日に味わうと誓っていた大野投手。シーズンの優勝可能性は残念ながら消滅してしまったが、優勝したかのような歓喜を胸に刻んでまたそこに向かって進んでほしい。そしてその姿を応援し続けたい。今回のサンドラは、そんな大野投手のノーヒットノーランの翌日の生インタビューと、今シーズンこの試合に至るまでを特集します。
大野雄大投手生インタビュー、勝利の美酒は?
試合後の会見で、祝いの美酒は?との質問に笑顔でやっちゃいましょうか!と答えた大野投手に本当に飲んだか聞くと間をためながらニヤリと一言。
「飲んでません!笑」
また達成後メール、ラインはどれくらい届いたかの回答には。
「ちょっと盛って500くらいですかね。(現役選手からきたメッセージでは、)おめでとうと言ってくれる人が多かった。あとは喜び方がダサいというのも多かったですね。」
同い年のドジャース・前田健太投手も自身のSNSで、そのダサさを指摘。偉業の傍、大野投手だからこそそんないじられ方も出来る最高のシーンでした。
高橋周平選手は達成の瞬間に興奮した様子とは逆に、独特のマイペースさでこうコメントを残した。
「7回ぐらいから達成して欲しいと思って守ってました。この場に居られたことが良かったですね。大野さん、ノーヒットノーラン達成おめでとうございます。もう一度達成して下さい。」
大野投手はニコっとしながら、試合での好守連発に賛辞を贈った。
今中氏はピッチャーの目線からこう指摘する。
「今年はボールが良かったので、完封はやることがあるだろうけどノーヒットノーランやるとは正直思ってなかった。確かにジャンプはかっこ悪いですね笑」
井端氏はこの試合だけでなく今年の大野投手を評価してハッパをかけるようにこう話す。
「まだ9勝なんで、最低でも10勝はいってほしいなというのはあります。その先もまだまだやってもらいたい、野球はまだ終わらないので頑張ってほしいなと思います。」
OBからの激励に対して大野投手は意気込む。
「二桁という目標があるので、残り半月頑張って行きたいと思います。」
激励以外にも個人的に二人には電話やメッセージで祝福されたという。厳しい表情で語ることの多い解説者の両氏も思わず顔をほころばせている様子で大野投手の人間性による魅力が伝わってきた。
京田選手への思い
タイガースサイドはストレートとツーシームの見きわめが難しかったとあったが、大野投手自身が意識していたことは?
「ストレートが低めに決まっていたんで、その分見きわめが難しかったと思いますし、ツーシーム、フォーク系も最近腕を振る事を意識しているので、バットが止まらなくなっている。しっかり振ってもらえるようになっています。」
京田選手のエラーがあった時にはどんな心境の変化があった?
「このエラーでフォアボールが出せると無理にストライクゾーンで勝負しないでも良いとなったので僕は達成できたと思う。」
京田選手がヒット性の当たりをいいプレイで救った。このことに関しては
「このプレイのおかげでもしかしたらあるかなと思えた。最後にバウンドが変わる難しい打球だったけど(上手く)処理してくれて嬉しかった。」
大野雄大の雄姿、0勝からの復活
昨シーズンの0勝から悔しさをぶつけて、飛躍を誓った大野投手。開幕前には、自身でプロ入り後一番良いと言う手応えを持って挑んだ。そして順調に4月16日の対ベイスターズ戦でシーズン初勝利を挙げ、608日ぶりの完封勝利をあげるなど、スライダーの精度が上がったことを武器に躍進を続けた。
ここまでの試合離脱をすることなく、23試合 9勝8敗 防御率2.59 で1試合平均7.22イニングはリーグトップ。必ず試合で長い回を投げられることで、中継ぎ陣の負担も減らせることがチームのピッチャー陣の好調さにも関わっていると感じる。そんな大野投手はこう分析する。
「今年は負けた次の試合でもいい登板が続いていますし、しっかりと悪かったピッチングを受け止めて、
自分がやるべきことはゲームを作ることということを大事に出来ているので安定した投球が続いているのだと思います。」
ノーヒットノーランの試合でも京田選手のエラー直後のリクエストについて、一度エラーという判定が出ていたのでそのことを飲み込んで、心の準備はしっかり出来ていたと言う。緊張感のある状態でも冷静に自己を見直せることができていたことが、今年の大野投手の努力や、積み立ててきたものを示すシーンだったのではないだろうか。開幕前には、インタビューで自身の弱さを認めることで変わろうとしていることを語っていた。今や、自身の状況だけではなくチームメイトのエラーであったり、チームが点を取れなかったりすることなど本人の力でどうしようもないことについても客観視して受け入れられているように感じる。
またシーズンの中盤6月ごろからは、苦手としていた左バッターにフォークを使い出した。最初に投げたのはライオンズの秋山翔吾選手に対して投げ出した。安定した状態の中、改良のための変化を取り入れて進化しているところも頼もしい限りだ。
今期大野投手の登板は数えるほどだが、防御率のタイトルと二桁勝利を虎視眈々と狙っていってほしい。その躍動する勇姿は人の心を強く動かす。まだもっと大野雄大には見せてほしいものがある。諦めきれない奇跡のクライマックスシリーズと、来年の完全優勝を楽しみにして大野投手を応援していきたい。
澤村桃