「44万円の請求!?」購入した覚えのない炊飯器が届く…増え続けるクレジットカード不正利用、利用停止後も被害が止まらない理由とは?
キャッシュレス化が進む中、クレジットカード(以下、カード)やタッチ決済などを日常的に利用する人が年々増加しています。一方で、カードの不正利用被害も右肩上がりで増加しており、いつ誰が被害に遭ってもおかしくない状況です。巧妙化する不正利用の実態と被害防止のための対策について取材しました。
購入していないのに…身に覚えのない請求明細に驚く被害が急増
カードの不正利用額は、2023年度クレジットカード協会の調べによると、過去最悪の540億円に達しました。被害は深刻化する一方です。
街ゆく人に、カードの不正利用被害に遭った経験について尋ねてみると…。
(30代)
「カード会社から『深夜2時か3時くらいに冷蔵庫を買われましたか』と言われて、びっくりして(家族と)買ってないよね?みたいになって。引き落としがかかる前だったので助かった。もし引き落とされていたら怖いですよね」
カード会社から不正利用被害に遭っていないか本人宛に確認が入り、身に覚えがなく驚いたという声が上がりました。
愛知県内に住む50代の男性は、カード明細に身に覚えのない商品代金の請求が連続して届くようになりました。そして2024年11月には…。
(50代男性)
「炊飯器ですね。(実際には)買ってないです」
あるショッピングサイトから、買った覚えのない炊飯器が一度に3つも届きました。利用明細に記載されていた代金は44万5千円。しかも、全く利用したことのないショッピングサイトでの取引でした。
炊飯器はその場で受け取りを拒否し、それ以前の不正請求もカード会社に取り消してもらったため、実際にお金をだまし取られることはありませんでした。しかし、カードの不正利用被害に遭って以来、インターネット上での買い物でカードを一切使わなくなったといいます。
カードを利用停止したのに…不正利用が続く原因は“タッチ決済機能の抜け穴”
名古屋市内に住む20代の男性が不正利用被害に気付いたきっかけは、契約した覚えのないフードデリバリーの会員料498円の請求でした。すぐにカード番号を変更しましたが、その後も被害は続きました。
(20代男性)
「カードの番号が変わったんですけど、1か月後にまた(フードデリバリーの会員料)498円の請求が入っていたんです。カード番号が変わっても不正な請求が止まらなかった」
新しいカードにも再び会員料の請求が届くという状況が発生しました。また、カードを停止したにもかかわらず、不正利用が続いたケースもあります。
大阪府に住むAさんは、不正利用を恐れて5月1日にカードを5月1日に利用停止しました。しかし、その後も不正利用は止まりませんでした。5月3日に家電量販店で1万円、翌4日に古本などの店で同じく1万円、さらに5日にも家電量販店で1万円と、停止したはずのカードが使われ続けていました。
(クレジットカードの不正利用被害に遭ったAさん)
「『止まったカードで使われています』と言われて、訳が分からなかったですね。意味が分からない」
カード利用停止後の不正利用額は2か月間で約23万円に上りました。Aさんがカード会社に問い合わせたところ、スマートフォンのタッチ決済機能が悪用されているとの回答がありました。
スマートフォンには、カード番号やセキュリティコードを登録しておくことで、カード本体がなくてもタッチ決済が可能な機能があります。また、一部の決済アプリでは、電波を使えないオフラインの状態でも一定額の買い物ができる機能を備えています。Aさんのケースでは、タッチ決済機能の抜け穴を悪用された可能性が高いと考えられます。
不正利用対策はいたちごっこ…鍵は日々の利用履歴確認を徹底すること
カード不正利用の被害が増える中、東京都港区にある「アクル」は、独自のサービスで不正利用を防ぐ取り組みを行っています。
(アクル・増田武さん)
「(不正利用の)実際の画面です。(住所の)書き方が明らかにおかしい。単純に数字で書くところなのに、①や③など不自然な表記になっている」
アクルでは、過去の不正利用の手口をデータベース化し、名前・住所のふりがなの間違い、アクセス元の情報など、約300項目にわたって不正を検知。店舗での取引を止める仕組みを提供しています。
試しに、犯罪者リストに登録されたメールアドレスを入力し、注文確定のボタンを押すと…。
“誠に申し訳ございません”と、カードが利用できない旨のメッセージが表示されると同時に、アクセスが自動的に遮断され、不正利用を防ぎます。
さらに、現在増えているのが、これまでとは全く異なる不正利用の手口です。
(アクル・増田武さん)
「クレジットマスターアタックと呼ばれる手口で、たとえ金庫の中にカード自体を保管していても、そのカード情報が盗まれてしまうというケースが横行しています」
クレジットマスターアタックとは、16桁のカード番号・有効期限・セキュリティコードをAIがランダムに作成し、通販サイトで試し続けることで実在するカード番号を特定し、不正利用を行うという手口です。この手口では、カードを一度も使用しておらず、安全な場所に保管していたとしても被害に遭う可能性があるのです。
被害を防ぐためには、日々カードの利用履歴を確認し、使っていないカードは解約するなど、自ら確認を怠らないことが重要です。
また、保障制度や保険が用意されているため、カード利用者自身が実際の支払いなどで被害を受けるケースはまずありません。
しかし、現金取引を上回る規模になりつつあるカード決済には、危険な罠が潜んでいることを忘れてはなりません。
CBCテレビ「チャント!」2025年1月6日放送より