築60年の団地をフルリノベーション 「それぞれが好きな部屋に」 若手建築家の“ニュータウン”再生プロジェクト
日本の高度成長時代に、都市の人口過密に対応するためにつくられた“ニュータウン”。愛知県春日井市の「高蔵寺ニュータウン」は、1968年の入居開始から急速に人口を増やし、ピークの1995年には5万2000人に。しかし、その後は人口減少と高齢化が急速に進行。街の活性化を目指す若き建築家グループらの取り組みを追いました。
築60年の部屋をフルリノベーション!理想の空間に大変身
高蔵寺ニュータウンで育った西田麻紀さん。大学進学を機に街を離れましたが、6年前に親が亡くなり、団地の部屋を相続することに。部屋は約900万円かけてフルリノベーション。住みやすく、アトリエやキャットタワーなども備えた夫婦の理想の空間に生まれ変わりました。
(西田麻紀さん)
「(キッチンは)使い勝手がいい。ここはトイレが窮屈で、便座に座ると、おでこがぶつかって立てないくらい狭かった。お風呂も冷たくて寒い場所だったので、できるだけ明るいイメージにしようと思い、断熱をしっかりしました」
はじめは築60年近い団地の部屋をどうするか迷ったという西田さん。そんな時に知ったのが、地元の若手建築家による団地の部屋をリノベーションするプロジェクト「団地のつづき」でした。
(西田麻紀さん)
「『団地の改装をしている』というのがフェイスブックの記事であがっていて、こういうふうにかっこよくしてもらえるなら、また住むのも選択肢の1つなのかと思って。」
3DKをワンルームに!廃校になった小学校は医療・福祉の複合施設に変身
「団地のつづき」のグループ名は、団地(だんち)の建築家(アーキテクト)をもじった「Danchitects(ダンチテクツ)」。発起人の内藤太一さんもニュータウン育ちで、まずは自分の部屋をモデルルーム代わりにリノベしました。
(ダンチテクツ・内藤太一さん)
「間仕切りも全部取って、押し入れも取った。もともとの押し入れの中がどうなっているかとか、床の下がどうなっているかとか、団地がどう造られているのか見たかったのもあって、全部スケルトンの状態にしました」
2023年に団地の組合で耐震診断を行った結果、今の基準でも十分クリアできる数値が出たそう。3DKを思い切ってワンルームにしました。
(ダンチテクツ・内藤太一さん)
「コンセントは各部屋にあって、今でも不自由しない。天井も低く感じないですよね。団地ができた時は、同じ建物がいっぱい並んでいて、中の部屋も同じ部屋が並び、画一的なものだった。だけど、みんながそれぞれが好きな部屋にしていくと、多様な部屋が一つの建物にできてくる。新築の時にできなかったことが、やっと2巡目でできるようになった。そこにチャンス、面白みを感じた」
Danchitectsと交流のある、社会福祉法人「まちスウィング」の治郎丸慶子さんは20年以上、住民としてニュータウンの活性化に向き合ってきました。企業や市と協力し合い、廃校になった小学校を医療や福祉などの複合施設に作り替えるなど、街づくりに取り組んでいます。
(まちスウィング・治郎丸慶子さん)
「住んでいる人が目指す地域に提案ができて、活動しやすい街というか、子どもが地域の人に守られるような、子どもが宝になるような街になるといいな」
加速する人口減少と高齢化 春日井市の新たな計画とは?
春日井市も、ニュータウン活性化について、さまざまな取り組みを行っています。
(春日井市 ニュータウン創生課・梅村知弘課長補佐)
「街開き当初の1968年に入居した皆さんが一斉に年を取り高齢化する一方で、新規の入居者が少ない状況にあります。ニュータウンの中で取り組んだ課題が成功し、全市的に成功事例を広げていければ、市として問題解決になっていく」
春日井市の打ち出した「リ・ニュータウン計画」は、古い団地を取り壊し、新たな商業施設や宅地を整備するなど、もう一度街を新しくつくり直す取り組みです。
(春日井市 ニュータウン創生課・梅村知弘課長補佐)
「駅の再整備も進んでいて、URと連携している団地再生も順調に進んでいるところ。人口減少も止められてはいないが、減少率は少しずつ低くなってきているので、計画を進めてきた意義がある」
(ダンチテクツ・内藤太一さん)
「車が入ってこられないし、自由に遊べる場所もあって、親も上から見守れる。こういう空間が団地のいいところ。みんなの思い出が詰まった日本全体の“時代の象徴”が全部なくなるのは悲しいので、うまく使っていけるといい」
魅力ある街づくりの模索は続きます。
CBCテレビ「チャント!」2024年10月3日放送より