まもなく50歳を迎える名古屋の「ナナちゃん人形」誕生秘話 なぜ名前は「ナナちゃん」に?
名鉄百貨店のシンボル「ナナちゃん人形」は、2023年4月28日に50歳の誕生日を迎えます。誕生日に向けて、名鉄百貨店の社員がどんな風にお祝いするか日々話し合っています。主役のナナちゃんですが、いつ、どのように生まれたのでしょうか。誕生秘話を調査しました。
年間40着以上の衣装で街行く人を楽しませる巨大広報部員「ナナちゃん」
ナナちゃんは、その衣装で様々な広報活動を行う名鉄百貨店の大事な「広報部員」として日々、名鉄百貨店の入口で働いています。
(名鉄百貨店・広報宣伝担当・保田めぐみ部長)
「“お誕生日会”に近い形式になるようなものはしてあげたい。お誕生日だし、いつも一人でいるし」
保田さんは、ナナちゃん担当歴11年。ナナちゃんと二人三脚で百貨店を盛り上げてきました。現在、保田さんを筆頭に2022年秋からナナちゃんバースデープロジェクトチームが始動しています。
ナナちゃん人形は、身長6m10㎝、体重600㎏、スリーサイズは上から、2m7㎝、1m80㎝、2m15㎝。とにかく巨大な広報部員です。ナナちゃんが担う最重要任務が「お着替え」。民間企業や公共団体など様々なスポンサーの期待を背負い、近年は年間約40回以上のお着替え。これまでに着替えた衣装は約620着!
ある時は大きなカツラとメガネで、探さなくても一目で分かる「ウォーリー」に変身!ある年の夏のバーゲンでは、安さに驚き大量の鼻息噴出!!地面に突きささるほど「びよ~~ん」と顎が伸びたり、開店60周年の際は市民に頭を垂れるナナちゃんの姿も見られました。
ナナちゃんの生みの親は長野県に
街行く人にとって、ナナちゃんはどんな存在か聞きました。
(街を歩いていた男性)
「シンボルですよ。当たり前にあるもの、名古屋の名所の一つ」
名古屋のシンボルで、いつでもそこにいることが当たり前の景色。しかし、彼女が「いつ、どこで生まれたのか?」を知る人は、名古屋にもあまりいません。
実は、ナナちゃんの生みの親は長野県伊那市にいます。小嶋利明さん(75歳)です。小嶋さんは2007年まで、伊那市にある「高遠製函」(現・ウッドレックス)の工場長を務め、マネキン製造のチームリーダーでした。
(ナナちゃんの生みの親・小嶋利明さん)
「これがナナちゃん。ナナちゃんの上に座ってるでしょ。これがメンバーです」
なぜ名前は「ナナちゃん」に?
1972年、名古屋市中村区に若者向けの商業施設としてオープンした「名鉄百貨店セブン館」。その1周年を記念するシンボルを探し求めていた当時のセブン館担当者が、東京・晴海の展示会へ訪れました。
(ナナちゃんの生みの親・小嶋利明さん)
「これが晴海(東京)会場。『ジャパンショップ』(展示会の)会場の入り口にマネキンが立っていて、股をくぐって入っていく(来場者の)度肝を抜いた。名鉄さんの担当者がそれを見て、びっくりして気に入っちゃって」
当時のセブン館担当者が見つけたのは“摩天楼”という名のマネキン。スイス・シュレッピー社が製作したものです。
このマネキンに一目ぼれしたセブン館担当者は、すぐにナナちゃんの立つ場所の天井高を調べ、問題なしと判断。小嶋さんが勤務していた「高遠製函」に、同じ大きさのマネキンの製作を依頼しました。そして、名前は、セブン館の“セブン”から「ナナちゃん」になったのです。
ナナちゃんはどのように作られた?
そんなナナちゃんは、どのようにして作られたのでしょうか。門外不出の設計図が小嶋さんの手元に残されていました。これを元に、まずは「型」作りをしたとのこと。
(ナナちゃんの生みの親・小嶋利明さん)
「ナナちゃん(の型)が出来上がって外しているところ、型外し。これ私です。ボンボンたたいて境目にドライバーを入れて割ってパカンと外す」
ナナちゃんの素材は、FRPと呼ばれる強化プラスチック。ナナちゃんが立つ場所には屋根はあるものの、雨風が吹き込む環境です。当時のセブン館担当者から小嶋さんたちへ出された条件は、「風速60m/sの暴風にも耐えられる強度」。これは、大型自動車を横転させる威力です。
(ナナちゃんの生みの親・小嶋利明さん)
「記録を見ると3月28日から始めている。それから4月28日の納品まで突貫工事」
強度の条件をクリアし、作業開始からたった1か月で完成。総力戦で1周年記念に間に合わせたのです。
(名鉄百貨店・広報宣伝担当・保田めぐみ部長)
「ナナちゃんに関わってからのナナちゃんしか知らない。やっぱり理解が深まると愛情も増す。そういうことをみんなで共有したい」
「唯一無二のシンボル」として存在するナナちゃんのもつ魅力とは
ナナちゃんは名古屋のシンボルとして長く愛されていますが、街づくりの観点からもナナちゃんを高く評価する人がいます。
(名古屋工業大学・大学院准教授・伊藤孝紀さん)
「それに手を加えられる、着せ替え人形みたいになる。その場所がイベントスペースになる。待ち合わせ場所としてもみんなが知っている。観光資源としてもPRポイントになっている。それだけ多様な目的を持っているシンボルは全国を探してもナナちゃんしかいなかった」
伊藤准教授は10年以上前から、ナナちゃんの活用方法について独自の見解を発信してきました。
(名古屋工業大学・大学院准教授・伊藤孝紀さん)
「ナナちゃんの良いところは造形的な人形だけど、その造形が色がついているとか特殊な形をしていないのが良い。あれがウルトラマンだったら成り立たない。真っ白でニュートラルな感じ。何にでも例えられるし、何にでも見える」
ナナちゃんは、どんな色にも染まる唯一無二のシンボル。来る50歳の誕生日には、プロジェクトチームがどんな演出をするのか期待が高まります。
CBCテレビ「チャント!」2月17日放送より