今も昔も人気がある、わずか1㎝角のもち菓子をシロップと砂糖でコーティングした駄菓子「さくらんぼ餅」は、名古屋市西区の共親製菓が半世紀近くに渡って作り続けています。新型コロナや物価の高騰で厳しい風が吹く食品業界の中で、実は黒字続き。その秘密に迫りました。

「去年より材料や資材・光熱費は4000万円アップ」それでも売上は絶好調

いま、新型コロナや物価高騰の嵐が吹き荒れる食品製造業界。中でも深刻なのは菓子の命とも言える砂糖の価格高騰です。2022年11月には100年以上作り続けられてきたサクマ式ドロップスが自主廃業を発表。食品製造業の倒産件数も、2021年は112件、今年は11月までの段階で133件と大幅に増加しています。

しかし厳しいご時世にも関わらず、この小さな餅菓子は絶好調。2021年度は前年比123％と売上大幅アップ。今年も黒字の見込みです。物価高とは無縁なのか、聞いてみると…。

（共親製菓・安部隆博専務取締役）
「（Q原材料や資材は去年と比べると上がった？）金額的に言うと3000万円くらい。電気やガスで言うと（去年比で）140％くらいに上がる。こちらも（金額で言うと）1000万くらい」

実は、原材料費と燃料費で4000万円以上コストは増えていました。それなのに一体なぜ右肩上がりをキープできているのか。その秘密は、社内の取り組みにありました。共親製菓本社の社内には白いポストがあります。

（共親製菓・安部隆博専務取締役）
「これが弊社で行っているアイデア提案制度のアイデアポストです。社内で改善したいことなどのアイデアを1行でも2行でも書いてもらって、簡単に出してもらう」

「アイデア1件で100円」会社の危機を救った社員のアイデアたち

これは共親製菓が3年前から行っている「アイデア提案制度」。現場目線の気付きを積極的に取り入れるための制度です。

（共親製菓・安部隆博専務取締役）
「（アイデアの数は）年間で200件以上。今月は50件くらい頂いた。どんな小さいことや効果がないかもしれないことでも1件出したら100円もらえる」

内容が良ければべリーナイスアイデア賞として最大10万円の賞金も。じつはこれが会社を救ったのです。

例えば生地を混ぜるときに従来使っていた樹脂製のヘラでは、混ぜるたびにねっとりくっつき、窯の中の餅飴を取り切ることもできません。ヘラがとにかく重く、重労働になっていたのを解決したのが入社21年目のベテラン髙野さんです。

（入社21年目・髙野修さん）
「引っ付かなければすごく作業が楽になると考えて、そういう素材を探してた。100均で売っているまな板でやってみたらきれいに取れた」

このアイデアで楽に餅飴全てを取り切り、作業時間もひと釜あたり5分以上短縮。これまで釜を1日18回稼働させるのが限界でしたが20回に増やせるようになりました。

また、餅飴をケースに入れる際床に落ちて廃棄処分になるものをゼロに近づける取り組みは、改善前1日およそ900g、年間およそ230㎏もあった廃棄が10分の1に！落ちていた分がそのまま製品として生きるようになりました。500以上のアイデアで生産力向上や効率化を積み重ね、去年は餅飴シリーズだけで年間およそ350万パックの増産。レトロブームなどで高まっていた餅飴の需要に対応できるようになり、売上大幅アップとなりました。こうした取り組みは残業時間の削減にもつながっています。

「社員のアイデアで成長している」ノウハウとアイデアが成長の原動力

共親製菓は他業種との共同開発にも力を入れています。健康志向のゼリーの開発をはじめ、今年10月にはフルーツの森を再現したアイスを生み出すなど駄菓子で培ったノウハウを活かした新商品を販売しました。

（共親製菓・安部隆博専務取締役）
「大福の賞味期限が今は60日くらいある。賞味期限を180日やそれ以上に延ばす開発をしていてある程度めどが立ったので、来年3月に（賞味期限が）180日持つ大福を販売しようと思っている」

変化なくして歴史は守れない。時代の波に乗りつつおし流されないよう常に新たな挑戦を続けています。

（共親製菓・安部隆博専務取締役）
「社員のみんなから出たアイデアで大きく成長していけていることが大きいかなと思っているので、社員が働きやすい環境づくりをしながら今後もどんどん成長していけたらなと思ってます」

指先に乗る1gに満たない餅菓子に秘められたものづくりのアイデア。そこから中小企業が厳しい時代を乗り切る秘訣も見えてきます。

CBCテレビ「チャント！」12月8日放送より