命綱なしで挑む“ビル3階の高さ”の1本の竹の上で座禅!? 愛知・豊明市の「大脇の梯子獅子」を密着
東海地方の激アツな祭りでアツい人を探す企画「OMATSURIちゃん」。今回は、愛知・豊明市の「大脇神明社」で毎年10月に行われる五穀豊穣を祈る「大脇の梯子獅子」を密着しました。
超危険!! 高さ12メートル、足場直径15センチで“獅子舞”
愛知・豊明市の「大脇神明社」で開催される「大脇の梯子獅子」は、無形民俗文化財にも指定され、その歴史は400年以上という伝統的な祭りです。
境内には、まるでアスレチック遊具のような舞台が組まれていました。お祭りの見どころは、51段の梯子を登り、高さ12メートル、足場は直径15センチの丸太2本だけの櫓の上で命綱なしで獅子舞。
出演者は、約一カ月半練習を重ねます。「梯子獅子」には「藤下がり」「波打ち」「たねまき」の3つの演目があり、今年「梯子獅子」を演じるのは、大脇地区で生まれ育った3、40代の男性7名。
(「梯子獅子」の「たねまき」を演じる平井健太さん)
「(今年で)23年目。最初始めた時からずっと怖い。今でも怖い」
命綱なしでアクロバティックな演技も行う「梯子獅子」は危険が伴うため、志願する若者は少なく、後継者不足。中学生の時に一度経験した鳥飼高士さんは、28年ぶりの挑戦です。
(「梯子獅子」の「藤下がり」を演じる鳥飼高士さん)
「去年久しぶりに『梯子獅子』を見て、命がけでやっぱりかっこいいなって。もう一度やりたいと思った」
鳥飼さんと一緒に「梯子獅子」の「藤下がり」を演じる遠山良さんは、多忙で今まで祭りに関われなかったものの、地元への恩返しとして挑むことを決めました。
恐怖との戦い! 2人の息をそろえて挑む「梯子獅子」
鳥飼さんと遠山さんが演じる「藤下がり」は、藤の花のように実った稲穂を表現する演目。
最大の見せ場は、丸太に足の甲だけをひっかけて連続3回も体を反り返らせる大技です。しかし、実は2人にとって難しいのは別の技でした。
(「梯子獅子」の「藤下がり」を演じる鳥飼高士さん)
「『藤下がり』のジャンプ。まだタイミングが合っていない。(練習で)一度も成功していない」
3回ジャンプをして、最後の着地はあえて足を滑らせ、観客を驚かせる技。足場は細い丸太で獅子の幕で視界も悪く、腰を落とした苦しい体勢のため、落下の恐怖と戦いながら、2人のタイミングを合わせるのは至難の業です。練習を見ている「梯子獅子」の総監督も…。
(大脇梯子獅子保存会・平井宣青副会長)
「ぜんっぜん合ってない。観客はビックリしないぞ!失敗したかと思われる」
本番では、恐怖を乗り越えて息の合ったジャンプを披露できるかどうかが試されます。
命綱なし!? ビル3階の高さの竹の上で両手を離して“座禅”
お祭りには、もう一つの名物があります。櫓の前にそびえ立つ高さ9メートルの竹の上で妙技をする「一本竹」。「一本竹」は、お祭りのフィナーレを飾る演目で、演じるのは5年連続出演の青木昇弥さんです。
(5年連続「一本竹」を披露する青木昇弥さん)
「20歳になって、なにかにチャレンジしたいと思った。毎年やっていて、やっぱり怖い。プレッシャーはすごくある。頑張らないといけないなってめちゃくちゃ思っている」
一本の竹の上で8つの技を展開しますが、命綱はありません。折れてしまいそうなほど竹をしならせたダイナミックな技がある一方で、竹の揺れが命とりにもなる高難度な技「座禅」。十字に木を組んだだけの頂上で座禅を組み、木から両手を離さなければいけません。バランスを崩せばビル3階の高さから落ちることになります。
(5年連続「一本竹」を披露する青木昇弥さん)
「両手を離すってなるとすごく怖い。まだ片手(で木を)持っちゃう。(本番で)チャレンジしたい」
右手は扇を広げ、左手は腰に当てるのが本来の技。本番で両手を離すことはできるのでしょうか。
フィナーレを飾る「一本竹」揺れる竹の上で妙技を連発
お祭り当日は、お昼頃になると駐車場にはキッチンカーが。参道には出店が立ち並び、観客で賑わい始めます。午後1時、子どもたちのお囃子を皮切りに、午後9時ごろまで17演目が披露されます。
出番を控えた鳥飼さんと遠山さんは緊張しながらも、本番を待ちわびていました。迎えた本番では、二人の課題となっていた3回連続のジャンプも見事大成功!その後ジャンプからの大技も鮮やかに決め、約18分間の演技は終了しました。
その後も楽しい演目が次々と披露され、日もすっかり暮れた頃、いよいよフィナーレの「一本竹」。青木さんが姿を現すと会場には応援が飛び交います。
命綱なしの高さ9メートルの竹に素早く登り、仰向けに反った状態から起き上がり、前方に反転する「後びさし」。竹を左右にしならせ大脇を表す「大の字」。次々と迫力の技を披露していき、ついに頂上での「座禅」です。手を離すのはやはり難しく、本来の形での技披露とはなりませんでした。しかし、その後も仰向けに体をそらす「藤下がり」、竹をしならせながら頂上で腹ばいになる「前びさし」など、妙技を連発し観客を魅了。会場の大歓声に包まれながら、約20分間8つの技を演じ切りました。
今回の祭りでもっともアツかった「ベストオブOMATSURIちゃん」は、「一本竹」を見事に演じ切った青木さんに決定。
(5年連続「一本竹」を披露する青木昇弥さん)
「終わった後、すごく達成感があった。気持ちよかった。今後はやっぱり完璧な『一本竹』を見せられるようになりたい」
400年の歴史を背負い、命がけでお祭りに挑んだ彼らの勇姿を見届けることができました。
CBCテレビ「チャント!」2024年10月28日放送より