2018年2月

沖縄発・ドラゴンズ"松坂キャンプ"総括

北辻利寿

2018年2月28日


「ことしのドラゴンズは多いよ~ファンも報道陣も・・・。全然違うもん」
那覇空港から中日ドラゴンズ1軍キャンプ地である北谷町が近づくと、タクシーの運転手さんが楽しそうにこう話してくれた。

北谷町役場を訪ねると野国昌春町長も今年のキャンプについて、開口一番、目を大きく見開いてこう感想を語った。「恐ろしいことになっています」と・・・。キャンプ地を訪れる人の数がとにかく半端ではないそうだ。

ドラゴンズは2月28日に春季キャンプを打ち上げた。
タクシーの運転手さんと北谷町長、この2人が口を揃えて話すように、キャンプ地にかつてないほどの人を集めたのは、現在のドラゴンズに最も遅く加わった選手、松坂大輔である。「松坂ドラフト」「松坂世代」と呼ばれるように、常にその名前が冠となった松坂投手だが、今年のドラゴンズのキャンプはまさに「松坂キャンプ」と呼べるのだろうか。
私が現地入りした時はすでにキャンプも最終盤だったが、それでも松坂投手の一挙手一投足が注目され、松坂投手が動くところにファンやカメラマンが殺到していた。
周囲何メートルかに漂う独特な空気感と言い、"スーパースター"とはまさにこういうものかと目の当たりにすることができた北谷球場だった。

キャンプ総括を書くにあたって最初にきびしい話をするならば、5年連続Bクラスという現状は決して甘いものではないということである。
どんな新戦力が加わったとしても、成績予想を積み上げる実績ベースを去年に置く限り、この現実から目を背けてはいけない。
それを踏まえた上で、北谷では今季のドラゴンズを次の2つのポイントから注目してみた。

最初のポイントは「先発投手陣の整備」である。
広いナゴヤドームを本拠地とする以上、「打ち勝つ野球」より「守り勝つ野球」を掲げるべきことは明白である。しかしこのところドラゴンズは先発投手陣がほぼ崩壊、2年連続で二桁の勝ち星をあげた投手がひとりもいないという厳しい状況である。

今季に先発として期待したい候補は多い。小笠原慎之介、柳裕也、鈴木翔太のドラフト1位トリオ。柳と同じ2年目の笠原祥太郎。今年再び先発に挑戦する北谷町出身の又吉克樹。久しぶりのメジャー活躍投手であるディロン・ジー。大野雄大、吉見一起、そして山井大介という実績あるメンバー。さらにキャンプの"主役"だった松坂大輔。名前は次々と挙がる。
それでもキャンプを視察したあるOB評論家は「現在まだ計算できる投手がひとりもいない」と断言していた。それがBクラスチームの現実なのである。
あえて1人キーマンを挙げるならば、3年目の小笠原投手であろう。オープン戦の開幕試合に登板し4回をノーヒットに抑えたピッチングは、現在のドラゴンズに不在である"エース"の座につく期待を持たせた。

もう1つのポイントは「センターラインの整備」である。
捕手~二遊間(二塁・遊撃)~中堅手、この4人を結ぶラインは「センターライン」と呼ばれ、守備における根幹である。ドラゴンズのリーグ制覇の歴史を見ても、強い時代のセンターラインには納得できる顔ぶれが並んでいる。

与那嶺要監督の下で20年ぶりのセ・リーグ優勝をした1974年(昭和49年)は「木俣達彦~高木守道~広瀬宰~谷木恭平(大島康徳)」。
近藤貞雄監督の野武士野球で優勝した1982年(昭和57年)は「中尾孝義~上川誠二~宇野勝~平野謙」。
星野仙一監督で昭和最後の優勝となった1988年(昭和63年)は「中村武志~宇野勝~立浪和義~彦野利勝」。
同じく星野監督で開幕11連勝から優勝を成し遂げた1999年(平成11年)は「中村武志~立浪和義~福留孝介~関川浩一」。
そして落合博満新監督でいきなり優勝した2004年(平成16年)は「谷繁元信~荒木雅博~井端弘和~アレックス・オチョア」

特に2004年からの二遊間は「アライバ」と称された名コンビで、そろって6年連続のゴールデングラブ賞を受賞しドラゴンズの黄金期を築いた。
このように、センターラインの重要性は歴史が証明しているのだが、昨今のドラゴンズはセンター大島選手以外、他3ポジションを固定できない状態だった。昨季ようやくショートに京田が落ち着いた。
今年のキャンプを終えて見えてきたのは「大野奨太~高橋周平~京田陽太~大島洋平」という布陣であり、これまで期待を裏切り続けてきた高橋周平がセカンドに納まれば、久しぶりにセンターラインが確立しそうである。その意味でキーマンは7年目の高橋である。

今年のドラゴンズのキャンプは讀賣ジャイアンツのようなインフルエンザ禍もなく、また目立ったケガ人もなかった。その意味では順調だったと言えよう。
しかし、かつて落合監督がノックによって森野将彦内野手を失神させたような猛特訓風景は表向きあまり見られなかった。
キャンプの成果はこれから続くオープン戦でさらに熟していく。「先発投手陣」と「センターライン」この2つの整備の行方に注目したい。
今はどのチームも明るい話題や評判が多い時期だが、やがて真実の実力が見え始める。
ドラゴンズには5年連続Bクラスという現状、そして「挑戦者」の立場を忘れずに、大切な1か月を戦ってほしい。3月30日のペナントレース開幕までもう1か月である。

【東西南論説風(33) by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

藤井vs羽生対局 ・ 将棋ミステリーも人気!

北辻利寿

2018年2月16日

【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】

昇段したばかりの藤井聡太五段と、国民栄誉賞を受けた羽生善治竜王の注目の対局。
2月17日、東京都内で行なわれる対局を見ようと会場のホール席は完売し、まさに棋界の「夢の対決」を印象づけています。

この藤井聡太さんや、昨年の引退後に活動のフィールドを大きく拡げた加藤一二三さんらの活躍によって、将棋人気はますます高まっています。そんな中、去年8月に出版された1冊の本も注目を集めています。

『盤上の向日葵』(中央公論新社)。将棋界を舞台にしたミステリーで、人気作家である柚月裕子さんが書きました。
埼玉県の山中で発見された白骨死体の近くに伝説の名人が作った将棋の駒が置かれていたことから、事件を追う刑事2人の捜査が将棋界に展開されていくというストーリーです。560ページを超える大作ですが、発売以来版を重ね、出版元の中央公論新社によりますと、現在9刷52000部というベストセラーです。

将棋をテーマにした小説は、この他にも新人ミステリー作家の登竜門と言われる乱歩賞を受賞した斎藤栄さんの『殺人の棋譜』、浅見光彦シリーズで人気の内田康夫さんが書いた『王将たちの謝肉祭』などがあります。

映画では松山ケンイチさん主演の『聖の青春』、そして最近では神木龍之介さん主演で前後篇の大作となった『3月のライオン』が評判でした。
 テレビドラマでは、今から20年ほど前の1996年(平成8年)にNHKの連続テレビ小説で放送した『ふたりっ子』でしょうか。大阪の下町を舞台に大石静さんが描いた脚本、登場人物が生き生きと躍動した朝ドラでした。「オーロラ輝子」という劇中の歌手も人気者となりました。

また歌では何と言っても村田英雄さんの『王将』。1961年(昭和36年)に発表された昭和の名曲であり、村田さんの代表曲でもあります。橋幸夫さんも1982年(昭和57年)に「あばれ駒』という歌を発表しています。このように将棋はいろいろな分野のテーマとして取り上げられています。

『盤上の向日葵』は、週刊文春が選ぶ2017年ミステリーベスト10の第2位に選ばれるなど高い評価を受けている他、4月10日に発表される本屋大賞、そのノミネート
10作品にも選ばれるなど注目を集め続けています。
本の中には、ライバル対決や師弟対決などヒリヒリするような対局が描かれていますが、
「決して緩手(かんしゅ)を指さない」
「真剣はな、気合で斬り込んでこそ、勝機が開けるんだ」
「俺は必ず勝つ。お前に一生忘れられない将棋を見せてやる」
このように将棋ファンならずともワクワクするようなセリフも登場しています。

藤井聡太五段は羽生善治竜王との対局に続き、今後は師匠である杉本昌隆七段との対局も予定されています。
若き棋士がどこまで登りつめていくのか、ベストセラー本を片手にそれを見守っていくのも楽しいかもしれません。                

【イッポウ「金曜論説室」より  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

平昌五輪と「虹と雪のバラード」

北辻利寿

2018年2月15日

画像:足成

トワ・エ・モワが歌う『虹と雪のバラード』が街に流れていた。

1972年(昭和47年)2月、アジアで初めての冬季オリンピック大会が札幌で開催され、日本中はオリンピックムードに染まった。

このオリンピック閉会直後に社会を震撼させた連合赤軍による「あさま山荘事件」が起きている。その意味では、歴史のタイミングというのは紙一重なのだろう。

 

札幌オリンピックに合わせて、小学校では「五輪ごっこ」が人気だった。

ワックス掃除が終わったばかりのピカピカの廊下でスピードスケートの選手をまねて両腕を振りながら滑ってみたり、友人にズボンの背中側のベルトをつかんでもらい前傾姿勢をとってジャンプ競技の真似をしたり、子供ながらに興奮の日々を過ごした記憶がある。

ゼッケン「45」番をつけて70メートル級ジャンプ(当時)で金メダルを獲った"日の丸飛行隊"笠谷幸生選手の勇姿は記憶に焼きついている。

 

平昌五輪での熱戦が続いている。今の子供たちは、このオリンピックをどう受け止めて、どう楽しんでいるのだろうか。

 

雪や氷の上での熱い戦いの一方で、北朝鮮の参加によって、この大会が一気に政治色を増したことは間違いない。

開会式での南北朝鮮チームの統一旗を先頭にした入場行進、そして聖火リレーでの両国選手のバトン。こうした姿をスタンドで見守るのは、来賓として訪れた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹である金与正党第一副部長、そして金永南最高人民会議常任委員長。

韓国の文在寅大統領の歓待モードを相まって「ほほえみ外交」なる言葉も登場した。文大統領への訪朝も親書によって要請された。

この南北融和ムードを見ながら、つい1か月前までの北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる国際的緊張は一体どこへ行ってしまったのかと不思議な気持ちになる。

またメディアに身を置く立場として僭越なのだが、「北朝鮮情勢が緊迫」「Jアラートとは?」「今年の漢字は"北"」などと伝えてきながら、北朝鮮の五輪来韓メンバーらを「美女応援団」「美女軍団」などと持ち上げる違和感も否めない。

 

「平和の祭典」と言われるオリンピックだが、その歴史を振り返ると国際政治との関係は深い。あらためてその思いを強くしたのは、平昌五輪開会式の入場行進で日本選手団の副団長として参加した山下泰弘さんの姿を見たためでもある。

柔道選手として一世を風靡した山下さん。1984年(昭和59年)ロサンゼルスオリンピックでの金メダル獲得などによって国民栄誉賞も受けたスポーツ界のヒーローであるが、その4年前には涙を見せていた。

ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して、アメリカが1980年(昭和55年)8月にモスクワで開催されたオリンピックをボイコット、西側友好国に対しても大会不参加を呼びかけた。日本も追随してこの年の五輪参加を見送った。

当時「金メダル確実」と見られていた山下選手は悔し涙を流したのだった。

山下選手がケガをしながらも無差別級決勝でエジプトのラシュワン選手を破って金メダルを手にした1984年ロス五輪については、今度はソ連はじめ東側諸国がボイコット。

1988年(昭和63年)のソウルオリンピックにて12年ぶりようやく世界各国の揃い踏みが復活した。

 

札幌冬季オリンピックの同じ年、1972年9月には、ミュンヘンオリンピックの選手村にパレスチナのテロリストが侵入し、イスラエル選手らを殺害する事件も起きている。

混迷する中東情勢の中で起きた、五輪最大の悲劇である。

 

さらに歴史をさかのぼれば1936年ベルリンオリンピックは、当時ドイツで台頭していたアドルフ・ヒトラーのナチス政権が、プロパガンダに利用した大会として刻まれている。大会の裏にある軍国主義や反ユダヤ主義を感じ取ったヨーロッパやアメリカはボイコット運動を行ったが、この時は不参加までは至っていない。

そして、その後に第二次世界大戦が勃発したことは、歴史が証言している通りである。

 

平昌五輪も、各競技が進むに連れてようやく選手たちが主役の座につき、開会式で世界に示された政治色は日々薄くなっている感があるが、この五輪後には延期されていた米韓合同軍事演習も再開される見通しである。

再び緊張が訪れるのか。北朝鮮をめぐる情勢は「ほほえみ外交」という言葉とは裏腹に予断を許さない。

 

『虹と雪のバラード』では、歌の中でオリンピックのことを「きみ」と呼びかけていた。平昌五輪、「きみ」は大会後の北朝鮮情勢にどんな実りを残してくれるのだろう。

   

東西南北論説風(31)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

 

球春!ドラゴンズ逆襲へのキーワードは?

北辻利寿

2018年2月 5日

2月に入り、プロ野球の各球団は一斉にキャンプをスタートさせた。

ファンにとっては待ちに待った季節である。シーズンに向けて、ご贔屓のチームがどんなスタートを切るのか?キャンプ地から毎日届くニュースに胸を躍らせる。

何よりもこの時期は、応援しているチームの優勝を宣言しても誰も文句は言わない。

ある意味で、ファンにとっては"言いたい放題"が許される、短くも楽しい日々でもある。

 

最も注目のキャンプ地便りは、今年の場合は国内からでなく海外からである。

北海道日本ハムファイターズが一次キャンプを行なっているアメリカのアリゾナ州スコッツデール。注目のルーキー清宮幸太郎選手が、背番号「21」のユニホームを初披露した。右手親指を痛めていて打撃練習は見送られているが、その一挙手一投足にファンの目が注がれる。

12球団で唯一、初めて采配をふるう新監督が誕生した千葉ロッテマリーンズ。沖縄の石垣島からは井口資仁監督の若々しい気合いの咆哮が伝わってくる。

セ・リーグでは、球団初の3連覇をめざす広島カープ、大谷翔平選手と同期である甲子園のスター藤浪晋太郎投手の復活が待たれる阪神タイガース、ドラフト1位で東克樹投手を獲得し着々と「左腕王国」を築く横浜DeNAベイスターズ、昨季の本塁打王を獲得したが先発陣のコマ不足解消がテーマの讀賣ジャイアンツ、そしてメジャーから古巣へ戻った青木宣親選手を起爆剤に最下位脱出を狙う東京ヤクルトスワローズ・・・いずれも話題豊富なキャンプとなっている。

 

そして、創設82年目を迎えた球団史上ワーストの5年連続Bクラスと低迷する中日ドラゴンズ。

昨シーズンの実績から見れば、その戦力はセ・リーグの中でも残念ながら見劣りすると言わざるをえない。2ケタの勝ち星をあげた投手は皆無、本塁打王のゲレーロ選手もジャイアンツに移籍してしまった。

現状で計算できる選手は投手野手を通してただひとり、大島洋平外野手である。もうひとり、去年の新人王・京田陽太内野手も挙げたいところだが、何といってもまだ2年目。プロ野球界には"2年目のジンクス"という伝統的な言葉があり、ここは慎重に構えたい。

球団トップの口からも毎年この時期には出ていた「優勝」という言葉はなく「Aクラス入り」という表現にトーンダウンしていることからも、チーム現状のきびしさがうかがえる。

 

ひとつのキーワードを念頭にして、ドラゴンズ浮上の課題について期待を込めて挙げてみる。そのキーワードが何か?は後ほど紹介する。

 

投手では、小笠原慎之介、柳裕也、そして鈴木翔太という若い"ドラフト1位トリオ"がどこまで勝ち星を積み重ねることができるか。

こちらもドラフト1位で入団し唯一1軍キャンプに選ばれた鈴木博志が"即戦力"として本人の希望通りにセットアッパーまたはクローザーとして機能するか。

岩瀬仁紀、山井大介、そして浅尾拓也のベテランが活躍できるか。

そして2018年キャンプの主役となっている松坂大輔が初のセ・リーグで復活を遂げることができるか。

 

捕手では、北海道日本ハムからFA移籍してきた大野奨大が、待望久しい"正捕手"の座に座ることができるか。

 

野手では、毎年期待されながらも燻り続ける高橋周平が、その打撃力から内野のレギュラーを奪い取るか。

選手会長になり進境著しい福田永将が「サード4番」という期待に応えられるか。

明るいキャラクターだがなかなかシーズンを通して活躍できない平田良介がケガから復帰し「ドラゴンズ愛!」とヒーローインタビューで絶叫できるか。

新外国人選手であるアルモンテとモヤがホームラン35本を打ったゲレーロに代わることができるか。

3~4年前に社会人から入団し若い背番号を付けながらも1軍に定着できない野手たちが、過去に同じ番号を背負ってきた大先輩たちに顔向けできる活躍をできるか。

 

そのキーワードは「大化け」である。

すべてがすべて化けることは無理としても、この内の1つや2つではなく、複数のポイントで「大化け」がなければ、ドラゴンズの今シーズンもきびしい戦いとなるだろう。

逆に「大化け」があれば楽しみにシーズンになる。

ペナントレースは"生き物"である。ぜひ「大化け」を積み重ねてもらいたい。

そのためには、このキャンプをどう過ごすかが勝負となる。

どの球団でもあることだが「今年のキャンプは例年と違って・・・」と練習強化の報を聞くと、「では去年は何をしていたの?」と思ってしまう。プロなのだから。

妥協せず、徹底的に満足できるキャンプを送ってほしい。

数々の指導者や名選手が口にしてきた言葉がある・・・「練習は嘘をつかない」。

 

キャンプ序盤に、ドラゴンズの北谷キャンプから届く話題は「松坂、松坂、松坂」だった。訪れるファンの数も、2000人、3000人、そして5000人と日に日に増加。

「松坂が投げた」どころか「松坂が打った」ことも全国ニュースになる。これがスーパースターなのだとあらためて認識させられた。

 

注目を集めることはプロ野球の球団にとって大切なこと、「早くも松坂獲得の効果あり」と言いたいところだが、ドラゴンズというチームにおいては、去年秋のドラフトで入団したルーキーたちよりも最も歴史の浅い選手、「新参者」なのである。

これまでドラゴンズブルーを背負って戦ってきた選手たち、この現象をどう受けとめるのか?ここで悔しがらなくてどうする?巻き返さなくてどうする?

今のドラゴンズにも名前を挙げてきたように素晴らしい選手が沢山いる。

これからのキャンプの日々で、話題の主役の座に名乗りをあげていってほしい。

その結果として次々と「大化け」を実現してくれる選手が増えてくるならば、それこそもう1つの大きな"松坂効果"となる。

 

東西南北論説風(30)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

 

列島を襲う寒波とポテンヒットの考察

北辻利寿

2018年2月 1日

画像:足成

子供の頃の冬の楽しみのひとつに、色とりどりの氷を作った思い出がある。

赤、青、黄などいろいろな絵の具を水に溶かせて、それを沢山の小さな容器に入れて一晩屋外に出しておく。一夜明けるとそれが凍り、カラフルな氷が出来上がるというわけである。

結構、頻繁に作っていた記憶があるということは、連日、氷ができる寒い日々だったのだろう。1960年代前半、半世紀ほど前のことである。

 

地球温暖化の影響によって「暖冬」と言う言葉にもすっかり慣れて、冬の朝に町で氷やつららを見ることも少なくなっていた。

カラフル氷の思い出も遠い昔かと思っていた矢先、日本列島を過去最強クラスと言われる寒波が襲った。東京の都心で2日連続氷点下3度以下というのは実に53年ぶり、そして4年ぶりという20センチを越す積雪によって交通機関も大混乱した。

名古屋の街も真っ白く雪化粧し、氷やつららもあちこちで見ることができた。

寒さは今なお続く。

 

街では、いたるところで雪かきをする人の姿が見られた。

こういう時、特に商売をしているお店の姿勢がよく分かる。朝早くから歩道の雪かきが終わっているのは老舗と言われる店に多い。客を転ばせてはいけない。迎える姿勢が伝統的にでき受け継がれているのだろう。

早々にちゃんと雪かきが終わっている店、そうでない店、歩道を見るとそのまだら模様がはっきりしている。コンビニエンスストアの中で、店の前に、数日後も雪がベッタリと残っている店を見ると残念な気持ちになる。24時間営業なのだから、客の安全のためにも何とか早めに歩道の雪を取り除く対応をしていただいてもいいのではないか。

 

自宅近くの小学校脇で、早朝から懸命に通学路の雪かきをする先生の姿に遭遇した。

その横を集団登校の子供たちが、白い息をはきながら通る。シャベルを持った先生と子供たちが交わす朝の挨拶が清々しい。

自分の家の前だけでなく、両隣や向かい側の家の前までも少し余分にはみ出して雪かきをする人の姿も見られた。温かい気配りである。寒波は雪景色だけでなく、そんな人々の素敵な風景も運んでくれた。

 

そんな寒さが続く日々に、犯罪を疑う遺体を調べる検視について、愛知県警が検視を担当した医師への謝礼金を支払っていなかったミスを発表した。過去5年間で約1500件あったそうだ。

病院から「支払いがない」と問い合わせがあって発覚したのだが、愛知県警によると遺体の状況によって、検視料を国が払うか県が払うか分かれているという。

「国が払ったと思った」「県が払ったと思った」どうやら担当者の思い込みで隙間が生じてしまったことが原因らしい。

 

組織の危機管理において気をつけなければならないのは、実は「ポテンヒット」だと言われている。

組織内の誰もが注意する重大リスクは、内部統制において意外にしっかりとコントロールされる。しかし、組織に複数のセクションがあり、共同で何かに取り組む際に管理の隙間が生じることがある。

えてして仕事ができる担当者は、自分の仕事エリアをきちんと守りながら「自分がやっているのだから相手も当然やっているはず」と座標軸を「自分」基準に考える。

その結果、どちらもコントロールできていない空白区が生まれ、そこにリスクという名のボールが落ちる。

プロ野球でも野手同士が声をかけ忘れてポテンヒットになるケースがあるが、有無を言わさず諦めのつくホームラン以上に、ポテンヒットによる得点はダメージが大きい。

 

自分のエリアだけでなく、少し余分に他人のエリアも雪を取り除いてあげる配慮を多くの人がするならば、きっと滑って転ぶ人の数も少なくなるように思う。リスクを防ぐお互いの「糊代」があると心強いのは、何も雪かきだけではない。

久しぶりの都会の大雪は、カラフル氷からポテンヒットまで様々な思いをめぐらせてくれた。

まもなく立春。陽射しの中にはかすかな春を感じるが、寒さはまだまだ続く・・・。 

 

東西南論説風(29)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】