2015年3月
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「リアルな映像」考〜キノコ雲の下から考えるということ[2015年3月24日 12:07]
「キノコ雲の下」という言葉に強いインパクトをうけました。3月23日に日本記者ク...
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超高齢社会の在宅医療[2015年3月23日 18:30]
論説室・CBCラジオ・名古屋大学医学部の共催による健康シンポジウム「超高齢社会...
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老老介護[2015年3月17日 17:19]
厚労省の調査によると、30年ほど前は65歳以上のお年寄りがいる世帯の45%が親・...
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避けられない天変地異、ならば...。三陸鉄道から学ぶ"レジリエンス"[2015年3月12日 11:10]
◆あの震災から4年が経ちました。何回か現地に入りましたが、とくに何度も取材させて...
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あるベテラン県議の言葉~自民党大会を取材して[2015年3月 9日 20:52]
3月8日に東京都内で開かれた自民党大会を取材してきました。 今回の大会...
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中学生殺害事件 文部科学省の検証と教育現場[2015年3月 7日 18:23]
川崎市の中学一年の男子生徒が殺害された事件は、17歳から18歳の少年3人が逮捕...
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民主党大会に行ってきました[2015年3月 1日 22:02]
東京都内で開かれた民主党の定期大会に行ってきました。党大会は、民主党の最高議決...
「リアルな映像」考〜キノコ雲の下から考えるということ
横地昭仁
「キノコ雲の下」という言葉に強いインパクトをうけました。3月23日に日本記者クラブで開かれたパグウオッシュ会議と核廃絶がテーマの記者会見で出た言葉です。
パグウオッシュ会議は、冷戦時代の1957年、核兵器の開発に携わった東西の科学者らがカナダのパグウオッシュに集まって、核廃絶と科学者自身の責任について話し合ったのがはじまりで、それから折に触れて世界大会を各地で開き、核廃絶に向けた提言をしています。ノーベル物理学賞を受賞した科学者らも参加し、日本も批准しているNPT=核兵器不拡散条約にも影響を与えたとされ、パグウオッシュ会議自体がノーベル平和賞を受けています。
戦後50年、60年、つまり広島・長崎に原爆が投下されて50年、60年の節目の年には世界大会が広島で開催されましたが、70年の節目の今年は11月1日から5日まで「被爆70年:核なき世界、戦争の廃絶、人間性の回復をめざして」をテーマに世界大会が長崎で開催されることになり、この日の記者会見は、長崎大会に携わる日本の3人の学者(写真左から大西仁東北大学名誉教授、小沼通二神奈川歯科大学理事、鈴木達治郎長崎大学核兵器廃絶研究センター教授=組織委員会委員長)が意義やねらいを説明しました。
キノコ雲の下という言葉は、95年の広島宣言に盛り込まれた言葉です。核の廃絶に背を向けるならば、「キノコ雲の下で夥しい数の人々が消滅する事態が、またしても起こりうる」と記されました。
世界中の歴史教育で使われる教科書には、原爆を説明する資料として、上空から、つまり投下した側から撮影されたキノコ雲の写真が使われているといいます。確かに被爆国の日本でも、原爆の写真を一枚だけあげるとしたらキノコ雲になるのかもしれません。しかし、そのキノコ雲の下でどんな現実があったのか、投下された側の視点でそれを語り継ぎ、そこに思いを致すことが核兵器の問題を考える上でとても大切、今回、被爆地長崎で開催される意義の一つもそこにあるというのです。
重い言葉でした。報道番組でも、よくキノコ雲の映像を使いますが、核兵器の象徴として安易に使っていないのか、大いに考えさせられました。
さらに、最近の傾向として、映画やゲームなどで終末戦争などをうたった一見リアルなCG映像が氾濫しているが、核兵器がもし今使われるとどんなことが起こるのかを、こうした映像があふれる中で、どうやって描いていくのかが、重い課題だという趣旨の発言もありました。
象徴的な映像が現実のすべてを表すわけではありません。まして、いくらリアルであっても作り物の映像には限界があります。自らの表現の幅を狭めるということでは、決してありませんが、技術の進歩で様々な映像を作成できるようになった今だからこそ、私たち報道に携わる者は、厳粛な気持ちで、現実に強くこだわり続けないといけないと感じました。
超高齢社会の在宅医療
後藤克幸
論説室・CBCラジオ・名古屋大学医学部の共催による健康シンポジウム「超高齢社会の在宅医療」が3月7日、CBCホールで開催されました。医療現場と市民社会の情報共有を深め、医療に関する的確な知識を届けるラジオ番組として、「広瀬隆のラジオでいこう!」7時台コーナー『健康ライブラリー』を2年間続けてきました。放送で発信してきた身近な健康情報の中から、超高齢社会への対応として国の医療政策が急速にシフトしている「在宅医療」をシンポジウムのテーマに選びました。
第1部は、在宅医療に積極的に取り組まれている、あいち診療会の内科医、野村秀樹先生が講演。野村先生は、実際の診療現場での事例を具体的にあげながら、◆在宅医療を受けるための基礎知識◆納得のいく在宅医療を受けるためのアドバイスなどについて、わかりやすい語り口で説明しました。
第2部は、パネルディスカッション。在宅医療の現場で活躍するさまざまな専門家、医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、社会福祉士が◆病状急変の不安◆介護家族の重い負担◆老老介護の破たん・・・などの難しい課題をどう解決していけばよいのかについて話し合いました。
このシンポジウムの内容は、CBCラジオのホームページに詳しく掲載していますのでご覧ください。
https://hicbc.com/radio/hirose/kenko/150307_event.htm
老老介護
厚労省の調査によると、30年ほど前は65歳以上のお年寄りがいる世帯の45%が親・子・孫の3世代で暮らしていた。大家族が多数派だった。ところが、現在は、三世代世帯は13%と少数派。
逆に、夫婦のみのいわゆる老老世帯と一人暮らしの人を合わせると56%。半数以上を占めている。
3世代世帯が多数派だった時代には、家庭の中に介護力があった。しかし、今は、穏やかに暮らしていた夫婦のどちらかの病状が急変して入院したりすると、老老介護は突然崩壊してしまう。核家族時代、子どもたちは親とは離れた所に住んで家庭を持ち仕事をしている。老老世帯、独居世帯が中心となった現代、お年寄りが住み慣れた自宅で生活を続けるには、訪問診療、訪問看護、訪問歯科診療、ヘルパー、入浴サービスなどの介護サービスの手を借りることが必要となる。老老介護の最大の不安はやはり病状の急変。超高齢社会を支える新しい在宅医療の仕組み作りが喫緊の課題だ。
避けられない天変地異、ならば...。三陸鉄道から学ぶ"レジリエンス"
石塚元章
◆あの震災から4年が経ちました。何回か現地に入りましたが、とくに何度も取材させていただいたのが「三陸鉄道」。その後、例の国民的ドラマの舞台となったあの鉄道です。岩手県沿岸部を走る第3セクターで、廃線の危機に直面していた国鉄時代からの鉄路を、なんとか残そうと誕生しました。
震災直後の現地では、13メートルもの高さがあったはずの高架が津波で崩壊し、文字通り飴のように垂れ下がったレールや、島越(しまのこし)や田老(たろう)の駅周辺(島越は駅があったはずの場所...でしたが)ですっかり姿を消した街並み。目の当たりにしたその光景は脳裏に焼きついています。
トンネルの中で停車した列車から乗客を連れて脱出した運転士さんや、手旗信号で運行に挑んだ社員の方...。「列車が動けば住民に力を与える」との信念で、震災後5日で一部区間とはいえ列車を運行させた社長の決断。 そこには震災に限らず、"万一のとき"に備えて我々が学ぶべきことが、数多くあります。
◆最近、「レジリエンス」という言葉が注目されています。「回復力」「復元力」や「しなやかさ」など、使われる場面によって微妙に異なりますが、ダメージを受けても折れずに立ち直る力...というような意味でしょうか。
人類は、災害にまったく遭遇しないというわけにはいきません。となれば、被災したあと、いかに復興(回復・復元)していくかという対応力が大きな意味を持ってきます。
天変地異の場合にあてはめれば、それは被災したひとりひとりの心の問題でもありますし、被災地を助けようとする周辺の人・組織・自治体・国の問題でもあります。さらに、ハード面にも当てはまる考え方でしょう(そもそもが物理学の用語だそうですが)。
三陸鉄道の4年間は、「レジリエンス」のケーススタディであり、実例でもあったのかと改めて思うのです。
◆なんとか全線開業にこぎつけた「さんてつ」。とはいえ、駅周辺に以前のような街並みが戻ってきたわけではありません。三陸鉄道の戦いはまだ続いています。
震災から4年を前に、三陸鉄道の望月正彦社長に久しぶりにお話を伺いました。「被災地に観光などででかけるのは、はばかられるという人もいると思いますが、そんなことはありません。是非、どんどん来てください。美味しいものが目的でも、景色を楽しみたいでもいいんです。とにかく来て、見てもらうことが大事だと思います」。
← 三陸鉄道はいま「震災学習列車」を走らせている。写真は、震災から4年目の2015年3月11日の震災学習列車。社員らがガイド役で同乗し、震災時の様子や復興の現状を説明しながら沿岸部を走る。犠牲者が多かった場所では停車し、黙とうも。
(三陸鉄道:提供/上の写真も)
あるベテラン県議の言葉~自民党大会を取材して
横地昭仁
3月8日に東京都内で開かれた自民党大会を取材してきました。
今回の大会の標語は「立党60年 新たな扉を開こう」というものでした。自由民主党は、保守合同といって、日本民主党と自由党という二つの保守政党が一つになって生まれました。今年はそれから60年の節目にあたるのです。
自民党の生まれた1955年は、当時右派と左派にわかれていた日本社会党が統一され、それがきっかけとなり保守合同も実現したと言われています。今、その社会党はなく、自民党と社会党という二大政党が政治の大きな流れをつくってきた55年体制という言葉も、永田町でほとんど聞かれることはなくなりました。
変わって最近よく聞かれるようになったのは、一強多弱という、自民党が圧倒的に強いとされる、いまの国政の状況を指す言葉です。
党大会での谷垣幹事長の報告でも、先の総選挙で一年生議員が多数再選され、総選挙ごとに前の政権党に所属する新人議員が大量落選、野党の新人議員が大量当選して政権交代になるという、2009年と2012年の2回の総選挙で繰り返されたことにも象徴される、いわゆる振り子現象に終止符をうつことができたと胸を張り、これまで自民党が2回下野しながらも政権復帰できたのは、強固な地方組織のおかげ、地方創生を日本創生にしようと、目前にせまった統一地方選への取り組みを訴えていました。
ここで印象に残ったのは、党大会に参加していた、引退を決めたあるベテラン県議の言葉です。次の地方選挙を目指す若い人たちにぜひ言いたいことはなんでしょうと尋ねたところ、毎日の積み重ねを大事にしてほしい、地域の有権者との対話の積み重ねから政治は生まれる、あたりまえのようなことだが、それを強く噛み締めてほしいと話していました。
安倍総裁は、この党大会で戦後以来の大改革に邁進していく決意を表明していましたが、その一つである農業改革は、まさにそれぞれの地域のありかたに密接にからんでいる問題です。経済の再生も地域経済抜きに語ることはできません。さらに、安全保障についても有権者に一番近い地方議員が接する様々な声も、実は大事なのかもしれません。
自民党だけでなく、広く地方政治を目指す人達が、地元の問題について、今の国政の課題の視点も踏まえた上でどんな主張をしていくのか、そして、それぞれの訴えの中で、どれだけ地域の声に接することができるのか、こうした点をしっかり見守っていきたいと思いました。
中学生殺害事件 文部科学省の検証と教育現場
横地昭仁
川崎市の中学一年の男子生徒が殺害された事件は、17歳から18歳の少年3人が逮捕され、社会に大きな衝撃を与えています。
この事態を受けて文部科学省は、先月27日、この事件についての教育現場の対応の検証や再発防止を検討するタスクフォースを設けました。タスクフォースという言葉は、日本語にすると、この場合、特別検証委員会という意味合いになるのでしょうが、いたずらに時間をかけず、機動的に検証するという姿勢も、この言葉に込められていると感じます。タスクフォースのトップ、地元愛知6区選出の代議士である丹羽秀樹文部科学副大臣に先日話を聞いてきました。
丹羽副大臣によりますと、タスクフォースの設置には、この事件に対する安倍総理の強い思いがあったそうです。タスクフォースでは、まずは、登校せず連絡のとれない児童・生徒の緊急調査をはじめていますが、事件自体については、どうして大切な命を救うことができなかったのか、学校現場だけでなく、警察との連携など、広い視野から、早急に、しっかり検証していきたいということでした。
もちろん、徹底した検証をお願いしたいのですが、お話をうかがっていて、もう一つ感じたのは、教育現場の現状についてです。事件の直接的な検証とはすこし離れてしまうかも知れませんが、少子高齢化という人口構造の変化は教育現場にもおよび、今、いわゆる団塊の世代のベテランの先生が大量に退職していく中で、中堅層のベテランの先生の割合が相対的に減ってきている現状があります。その中で、学校現場では、教室での授業以外に様々な業務が発生し、特に経験の少ない先生に負担がかかるという構造的な問題があるのではないかという点です。
文部科学省でもチーム学校というとりくみを進めることにしていて、ソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなど、教師以外の人材を積極的に学校現場で活用することが具体的に検討されています。また、学警連携といって、地域の教育委員会と警察が協定を結んだりして、非行の問題などに、地域も含めて機動的に対処しようというとりくみも始まっていますが、全国的には、まだ道半ばという面があるようです。
子どもをまもり育てていくのは、教育現場や家庭だけの問題ではありません。次代を担う大切な命がなぜ奪われてしまったのか、タスクフォースには、幅広い検証をお願いするとともに、教育現場がおかれている現状や、それに対して地域がどうかかわっていくべきかといった点にもしっかりと目を向けていきたいと感じています。
民主党大会に行ってきました
横地昭仁
東京都内で開かれた民主党の定期大会に行ってきました。党大会は、民主党の最高議決機関と位置づけられていて、定期大会は前年の活動を総括し、これからの党の活動方針を決める重要な集まりです。
折しも統一地方選目前、今回の大会は、昨年の総選挙の結果を民主党がどのように受けとめて、どのように党の再生を図るのか、そして、これから民主党として何を目指すのか国民にアピールする重要な場にもなったといえるでしょう。
岡田代表は網膜剥離の再発で欠席しましたが、蓮舫代表代行が代読したメッセージで、女性と地方を大きな二つの柱とし、生活起点、地域起点という二つのキーワードを掲げて統一地方選を戦っていくという決意を示しました。また、枝野幹事長は、先の総選挙を敗北だったと認めて、国政選挙については、来年の衆参ダブル選挙も想定して候補者の選定を急ぎ、国会では、安保法制などで安倍政権と対峙していくと語っていました。
こうした党幹部の決意表明に加えて、個人的に印象に残ったのは、来賓として出席した連合の古賀会長の発言です。民主党に対して強く冷たい向かい風が吹いていると明言し、国民の信頼を回復するために一人一人の自覚や覚悟、それに、筋の通った組織運営を求めるという、選挙で支援をしている組織の来賓あいさつとしては、異例ともいえる厳しいものでした。しかし、先の総選挙の出口調査などから、古賀会長の発言は、民主党に対する有権者の見方を反映しているとも感じました。
いわゆる第三極や少数政党の存在も重要ですが、今の衆議院の選挙制度が一つの選挙区で一人の代表が選ばれる小選挙区制を基本としている以上、与党側、野党側と二つの大きな政治勢力が互いに切磋琢磨していくことが健全な民主主義のために求められることでしょう。
しかし、今の民主党が、かつて実現したような政権交代の可能性も含め、与党に対抗しうる大きな政治勢力の核となるには古賀会長が指摘したような課題があることも事実でしょう。
まずは、地方選で、民主党所属の立候補予定者が、民主党に対する批判も含めたそれぞれの地域の有権者の声をどのようにうけとめ、生活起点、地域起点という、今日示されたキーワードを、それぞれの具体的な訴えにどうやって落とし込んでいくのか注目していきたいと思いました。