藤井vs羽生対局 ・ 将棋ミステリーも人気!

北辻利寿

2018年2月16日

【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】

昇段したばかりの藤井聡太五段と、国民栄誉賞を受けた羽生善治竜王の注目の対局。
2月17日、東京都内で行なわれる対局を見ようと会場のホール席は完売し、まさに棋界の「夢の対決」を印象づけています。

この藤井聡太さんや、昨年の引退後に活動のフィールドを大きく拡げた加藤一二三さんらの活躍によって、将棋人気はますます高まっています。そんな中、去年8月に出版された1冊の本も注目を集めています。

『盤上の向日葵』(中央公論新社)。将棋界を舞台にしたミステリーで、人気作家である柚月裕子さんが書きました。
埼玉県の山中で発見された白骨死体の近くに伝説の名人が作った将棋の駒が置かれていたことから、事件を追う刑事2人の捜査が将棋界に展開されていくというストーリーです。560ページを超える大作ですが、発売以来版を重ね、出版元の中央公論新社によりますと、現在9刷52000部というベストセラーです。

将棋をテーマにした小説は、この他にも新人ミステリー作家の登竜門と言われる乱歩賞を受賞した斎藤栄さんの『殺人の棋譜』、浅見光彦シリーズで人気の内田康夫さんが書いた『王将たちの謝肉祭』などがあります。

映画では松山ケンイチさん主演の『聖の青春』、そして最近では神木龍之介さん主演で前後篇の大作となった『3月のライオン』が評判でした。
 テレビドラマでは、今から20年ほど前の1996年(平成8年)にNHKの連続テレビ小説で放送した『ふたりっ子』でしょうか。大阪の下町を舞台に大石静さんが描いた脚本、登場人物が生き生きと躍動した朝ドラでした。「オーロラ輝子」という劇中の歌手も人気者となりました。

また歌では何と言っても村田英雄さんの『王将』。1961年(昭和36年)に発表された昭和の名曲であり、村田さんの代表曲でもあります。橋幸夫さんも1982年(昭和57年)に「あばれ駒』という歌を発表しています。このように将棋はいろいろな分野のテーマとして取り上げられています。

『盤上の向日葵』は、週刊文春が選ぶ2017年ミステリーベスト10の第2位に選ばれるなど高い評価を受けている他、4月10日に発表される本屋大賞、そのノミネート
10作品にも選ばれるなど注目を集め続けています。
本の中には、ライバル対決や師弟対決などヒリヒリするような対局が描かれていますが、
「決して緩手(かんしゅ)を指さない」
「真剣はな、気合で斬り込んでこそ、勝機が開けるんだ」
「俺は必ず勝つ。お前に一生忘れられない将棋を見せてやる」
このように将棋ファンならずともワクワクするようなセリフも登場しています。

藤井聡太五段は羽生善治竜王との対局に続き、今後は師匠である杉本昌隆七段との対局も予定されています。
若き棋士がどこまで登りつめていくのか、ベストセラー本を片手にそれを見守っていくのも楽しいかもしれません。                

【イッポウ「金曜論説室」より  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】