石川昂弥かくも長き不在~立浪ドラゴンズ正念場に飛び出すのは誰?

石川昂弥かくも長き不在~立浪ドラゴンズ正念場に飛び出すのは誰?

佳境に入ったセ・パ交流戦をバンテリンドームのスタンドで応援しながら、つい探してしまっている。それは背番号「2」の姿、石川昂弥選手である。しかし、そこに石川の姿はない。そんな寂寥感の中、立浪和義新監督の下で戦い続ける2022年の中日ドラゴンズにとっても、そして応援するファンにとっても、その存在の大きさに気づく。

石川に漂い始めていた“風格”

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

「100打席、200打席打てなくても使い続ける」と指揮官が明言した通り、石川選手は開幕戦からスタメンのサードとして起用された。昨季までのレギュラーだった高橋周平選手をセカンドにコンバートしてまでの決断だった。「打てなくても」という状態はしばらく続いたが、あるきっかけを契機に、石川選手のバッティングが変わった。あれは4月22日のバンテリンドーム、讀賣ジャイアンツ戦。相手エースの菅野智之投手から放った本拠地初のホームランである。現地観戦の興奮を当コラムで「力強い弾道は、まさに竜の新時代への“祝砲”のようだった」と書いたのだが、その後も球場で石川選手のプレーを観ることが本当に楽しみだった。打撃が日に日に成長していくことが、ファンの目から見ても分かった。打席での構えにも若いなりの“風格”が漂い始めていた。それだけに本当に残念な事態になった。

ケガせずに走り続けてこそ名馬

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

左膝前十字靭帯不全損傷、これが石川選手のけがに付けられた病名である。5月27日の試合で1塁に走る時に痛めた。膝の内部にある靭帯に、急な方向転換や急な停止など強い力が加わった時に起こるものなのだが、今さらながら、痛恨の走塁となってしまった。ドラフト1位で“将来の4番”を期待されて入団した石川選手、プロ2年目の2021年シーズンは、6月にデッドボールを受けて左の手首近くを骨折。結局1軍での出場なし。そして立浪監督の期待を受けての今シーズンも、新型コロナ感染で離脱した後に、左足の大けがとなった。長期離脱。コロナ陽性の時は「いずれ戻ってくる」だったが、今回は「当分戻ってこない」、あまりにも大きな違い。「無事是名馬(ぶじこれめいば)」という言葉がある。力が少し劣っていても、けがをせずに走り続ける馬こそが名馬。しかし、プロ野球の歴史においては“名馬”ほどけがをしない、またはけがに強い。休むことによって、自らのポジションを奪われたくないからである。石川選手には、まずはしっかり治してもらうことを希望すると共に、あらためて「無事是名馬」という言葉を送りたい。

ファンが愛する選手とは?

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

根尾昂という、ドラフト指名直後から老若男女問わず応援の声がある少々“別格”の選手を除けば、石川昂弥は“立浪ドラゴンズの象徴”とも言える存在になってきていた。それは打席に入る時のスタンドからの拍手の熱さ。ここ20年ほどだと、堂上直倫選手と高橋周平選手がそれに該当した。堂上選手は父親の照さん、兄の剛裕さんと“家族ドラゴンズ”だったこともあって根強いファンがいる。高橋選手には、堂上選手と同じ、ドラフトで3球団から指名を受けたという大きな期待感があった。いずれも高卒のスラッガーで長く竜の歴史を背負ってくれるはず。石川選手は2人を越すほどの熱い拍手を受け始めていただけに、その不在は本当に痛い。

交流戦で健闘する立浪竜

「サンデードラゴンズ」より岡林勇希選手・鵜飼航丞選手©CBCテレビ

嘆きはここまでとして、立浪ドラゴンズの戦いに目を向ける。交流戦の前から続いた連敗は7にまで達し、負け越しも最大6へ。しかし、石川選手欠場後の3カード9連戦を、すべて2勝1敗と勝ち越した。チームに力がついてきていることの“証し”と見たい。そして、今こそ期待したいのが、石川選手の“留守”に「しめた!」と飛び出してくる若竜である。岡林勇希そして鵜飼航丞、両選手は確実に活躍を増やしている。さらにもうひとり是非。阿部寿樹選手を筆頭に中堅選手も元気だが、チームに勢いを与えるのは、いつの時代でも若い力であり、まして「今季は育てながら戦う」と監督自らが宣言している。最高のチャンスなのである。

ドラゴンズの選手は「おとなしい」と揶揄されることがある。交流戦は残り2カードあり、優勝の可能性だってある。背番号「2」を追い越していく名馬は出るのか、交流戦が終わればペナントレースも一気に折り返し点に向かう。私たちファンも待っているが、何より立浪監督が切望しているはずだ。名馬、いや暴れ馬でいい。                              

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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