CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

竜のヤリエルとアリエルが新人王を争う?ファンが見る“真夏の夜の夢”

竜のヤリエルとアリエルが新人王を争う?ファンが見る“真夏の夜の夢”
論説室コラム

竜のヤリエルとアリエルが新人王を争う?ファンが見る“真夏の夜の夢”

 2020年8月21日(金) 10:30
北辻 利寿
北辻 利寿

それは球団フロントのクリーンヒットだった。中日ドラゴンズで活躍するキューバ出身の2選手について「新人王」の資格が認められたのだ。

史上初の“助っ人”新人王へ

対象となった2人は、この夏、ドラゴンズファンが熱いエールを送っている若手選手、
24歳のアリエル・マルティネス捕手と23歳のヤリエル・ロドリゲス投手である。
球団創設84年を迎えたドラゴンズでは、1961年の権藤博さんから2017年の京田陽太選手まで過去10人が新人王に選ばれているが、外国人選手の受賞はない。ドラゴンズどころか、日本プロ野球界でも“助っ人”が受賞すれば史上初となる。2選手の母国キューバにプロ野球がないことから、ドラゴンズが日本野球機構(NPB)に「資格があるだろう」と申請したものだが、この新人王資格を手にした2人にとっては、大いなる励みになることだろう。いずれもシーズン初めの育成選手の立場から、夏になって支配下選手となったばかり。しかし、新人王の受賞が現実になってもおかしくないほどに、2020年の夏、彼らのプレーは輝いている。

気迫の投球で「竜党の柱」へ

ヤリエル・ロドリゲス投手は、初登板初先発となった8月9日ナゴヤドーム讀賣ジャイアンツ戦で、7回途中までヒットを許さず、1987年の近藤真一投手以来の「8月9日の日曜日」「本拠地での巨人戦」「初登板ノーヒットノーラン」かと、ファンを沸き立たせた。その試合は引き分けに終わったが、8月16日の同じジャイアンツ戦で、7回を毎回奪三振の1失点に抑えて、来日初勝利を飾った。
最速156キロの速球とキレのあるスライダー。何よりもドラゴンズファンが喜んだのは、その気迫あふれるピッチングである。マウンドはもちろん、ベンチに座っていながらもゲームに一喜一憂する姿が嬉しい。精悍な顔つきは、映画007シリーズで主役ジェームズ・ボンドを演じている俳優ダニエル・クレイグを彷彿させる。「殺しのライセンス」を得たボンドのように、相手チームを倒し続けてほしい。

強打で駆け上がれ「正捕手」へ

アリエル・マルティネス捕手は、ヤリエル・ロドリゲス投手よりほぼ1か月早く、同じ巨人戦でデビューした。日本プロ野球としては、ロッテ・オリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)のマイク・ディアズ選手以来29年ぶりの外国人捕手スタメン出場も果たしたが、その魅力は力強いバッティングである。
ナゴヤドームの1塁側内野席で観戦した時に、目の前を通過していく来日第1号ホームランを目撃したが、ライトスタンドに大きな当たりを打つことができる右打者はスラッガーの条件にかなう。
そしてもうひとつの魅力は、端正なマスクと人懐っこい笑顔だろう。ヒーローインタビューが終わろうとするのを「チョット待ッテ」と制して、日本語でファンに対し御礼の言葉を贈って大きな拍手を浴びた。竜党の心を一気につかんだ瞬間だった。
007シリーズ同様に映画で語るならば、ディズニーの人気アニメ映画「リトルマーメイド」主役は人魚姫「アリエル」。スパイと人魚姫が新人王をめざして競うことになった。

ドラゴンズは新人王候補の宝庫

セ・リーグの新人王争い、ライバルは広島東洋カープの森下暢仁投手、そして讀賣ジャイアンツの戸郷翔征投手らが浮かぶが、実はヤリエルとアリエル2人のチームメートにも候補者は多い。ルーキーならば、ドラフト2位の橋本侑樹投手、3位の岡野祐一郎投手はいずれも開幕1軍入りを果たした。郡司裕也捕手は強気のリードを発揮して「勝てるキャッチャー」の片鱗を見せ始めている。高卒ルーキーの石川昂弥選手、岡林勇希選手も早々に1軍を経験し、現在はウエスタンリーグで活躍中だ。さらに2年目の根尾昂選手もその後輩2人に少し遅れながらも1軍でプロ初ヒットを記録して、ファン期待のボルテージは高まっている。これだけ、有望な若竜たちが揃ったことは、過去の球団史でも稀有なことだ。
ヤリエルとアリエルの2人には、できればバッテリーを組んで新人王の「ダブル受賞」を狙ってほしい、そんな夢まで描く。
もちろん一義的には「チャンスをものにする」という本人たちの努力が大切だが、こうした若い勢いをチームの上昇にどう活かしていくのかという“手腕”は、与田剛監督以下、ベンチの采配力にかかっている。新人王のタイトルを取ることができるチームには、やはり旬のパワーが感じられるからだ。

与田監督が2年前の就任会見で語った抱負「驚かせるチームにした」という言葉について、当時「ワクワクさせる野球」のことだと自分なりに解釈した。それは今も変わらない。
今季はもちろん、「昇竜復活」を定着させるために、将来のドラゴンズを背負う若竜たちの躍動は欠かせない。ワクワクする竜の野球を観ていたい、もちろん勝利と共に。
 
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

 前の記事

次の記事