米中間の関税報復合戦、6月14日に終結の可能性?

4月10日にNHKが報じたところによると、アメリカのトランプ政権は貿易赤字が大きい国への相互関税措置を90日間停止すると発表した一方で、中国に対しては合わせて145%の関税を課すと、強硬な姿勢を鮮明にしています。中国は反発を強めており、貿易摩擦の激化が世界経済に深刻な打撃を与えるとの懸念が広がっています。今後中国側はどのような動きに出るのでしょうか?12日放送の『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、このニュースについて東京財団政策研究所主席研究員の柯隆(か りゅう)さんが解説しました。
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対抗措置として追加関税を発動している中国。このままお互いに関税を上げると両者とも損をするのは明らかですが「どうしてもやらざるを得ない事情があった」と語る柯隆さん。
柯隆さん「なぜかといいますと、中国国内でナショナリズムが台頭していって、ここでもし報復措置を講じなければ、弱腰外交と批判され、習近平政権への求心力が大幅に低下する可能性があって。
もうひとつは若者の失業率がものすごく高くなっているので、不満が溜まっている中で中国で大規模なデモが起きる可能性があるので、今回はとにかく報復するというのを決めたわけです」
現在の中国経済の状況は非常に悪く、失業率の上昇だけではなく一般家庭では消費も控えられたりして需要が弱い、投資も伸びないといった状況で、トランプ政権による関税で外需まで弱くなってしまい、習近平政権はまさに正念場に直面しているとのことです。
中国が取れる対抗策は?
習近平国家主席は11日、関税の報復合戦に対し「ゲームの相手はこれ以上しない」と発言しましたが、他に対抗措置はあるのでしょうか?
柯隆さん「中国は報復関税を講じてもほとんどこれ以上は効果が出てこないわけです。なぜかというと、中国が貿易黒字国ですから、もっとアメリカに売らなければいけない。
そういった国に対して制裁しても意味がないので、次にトランプ政権にダメージを与え得る政策としては、レアアースの輸出禁止を出してきます」
アメリカのレアアースは72%が中国に依存していて、これがアメリカに入ってこないとなると短期的には在庫があるので困らないものの、中長期的にはハイテク企業や鉄鋼、自動車、半導体産業にダメージを与えます。
柯隆さん「この関税戦争がどこまで長期化するかによって、トランプ政権が困ることになります」
人民元安誘導に米国債売却は有効?
そして2つ目の対抗措置としては、人民元の切り下げによって輸出を伸ばすことですが、柯隆さんによれば「思ったほど効果がない」とのことです。
柯隆さん「元安になれば上げられた関税の分が相殺できると当初思われていたんだけれど、(関税が)30%、40%ぐらいなら対処できたんだけれども、こんな140%にもなると対処できない。
従って元安誘導の政策の効果が期待できないので、今はあまりやってないです」
3つ目は中国が大量に保有する米国債の売却でアメリカを困らせるという手があります。
柯隆さん「中国は日本に次いで2番目に米国債を保有している国ですから。実際に売却しなくても米国債を売るぞってアナウンスするだけでドルが暴落するので、このカードは持っているんだけれども、実際に使うかどうかは微妙なんです」
このカードを使うとアメリカが経済制裁を発動することにより、中国はドル決済ができなくなってしまい、対アメリカだけではなく他の国との貿易もできなくなるというデメリットがあるため、こちらも対抗策として使うのは難しいようです。
ポイントは6月14日か
現在は米中どちらもメンツで降りづらい状況です。
そこで「誕生日外交が行なわれるのでは?」と柯隆さん。6月14日がトランプ大統領の誕生日、翌15日は習近平国家主席の誕生日です。
例えば「ロシアに停戦の圧力をかけるなら関税を下げる」などの交渉を持ちかければ、事態が動くかもしれないと語りました。
6月中旬がひとつのポイントとなりそうですが、最後に柯隆さんは「日本企業や日本政府は米中が合意する場合と決裂する場合の両方のプランを用意しておくべき」とアドバイスしました。
(岡本)
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