M&Aで薄利多売事業から脱却!合意に至ったのは誠実な価格交渉

少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題となっています。そして、元気なうちに資産の管理や、次世代へのスムーズな承継について考えていく必要性も高まっています。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。3月12日の放送では、老舗の医療機器メーカーのM&Aについて北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 経営承継支援 はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く老舗の医療メーカーがM&Aを決断した理由
今回藤原さんが紹介したのは関東にある医療機器メーカーのM&A事例。どのような会社だったのでしょう?
藤原「年商は3億円ほどで、従業員さんはおよそ10名。老舗医療機器メーカーで業歴は100年を超え特定分野に強みを持つ医療機器を長年、製造されていました」
そんな老舗のメーカーがなぜM&Aをしたのでしょう?
藤原「社長さんも70歳を迎え、後継者がいらっしゃらない」
さら、創業から100年もの間に、大手医療機器や外資系医療機器のメーカーが続々と参入。徐々に市場シェアを奪われ業績不振に陥っていったとのこと。
北野「最新のモノって出てきますからね。取り囲む状況としても厳しかったんですね」
交渉でのすり合わせポイントは
買い手はどのような会社だったのでしょう?
藤原「関東で医療機器の卸売業をされている会社さんで、年商はおよそ50億くらい」
卸業者がなぜ医療機器メーカーのM&Aに挙手したのでしょうか?
藤原「買い手さんは、医療機器卸からメーカーとして物づくりや技術力を手に入れたいとのことで、このポジションを獲得したかったんです」
北野「そういう狙いで、そっちに進出しようとしたんですね!」
M&Aはスムーズに進んだのでしょうか?
藤原「事業自体はお互いのメリットはあったのですが、一番のポイントは価格交渉でした」
買い手から提示された在庫の評価損はマイナス2億円でした。
この評価損とは、購入時の価格と現在の価格の差額のことで、当初の金額から大幅な減額要因でした。
一方、不動産の含み益はプラス1億円という状況。
お互いがこの状況に納得しながら誠実に交渉を進めることで、適正な譲渡金額で引き継げたそうです。
北野「お互い納得しながら話が進んだんですね」
売り手と買い手が納得する結果に
気になるのは譲渡後の従業員の扱い。本来であれば廃業も視野に入るところを、従業員10名の雇用が継続されたそうです。
藤原「買い手さんは老舗の医療機器卸業だったので、信頼できる相手に引き継ぐことができ、売り手オーナーさんも安心されていました」
北野「買い手さんはその後どうなっていきました?」
藤原「高利益率の独自の製品を販売できるようになり、卸業の薄利多売事業から脱却して、利益率アップを見込める状況になって喜んでいる」
お互いに相手の状況を理解して誠実に対応すれば、納得のできる交渉が成立できるという事例でした。
(野村)
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