第二次大戦後最大の欧米亀裂?米ウクライナ首脳会談、カメラの前で決裂!

3月3日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談決裂について取り上げました。プーチン評価をめぐる公開口論が、ウクライナへの軍事支援や欧米の関係にどのような影響をもたらすのか? CBC論説室の石塚元章特別解説委員が詳しく分析しました。
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アメリカがウクライナへの軍事支援の停止を検討しているという報道もあります。専門家によると、ウクライナは仮にアメリカの支援がなくても、数ヶ月は戦闘能力を維持できる可能性は高いとされています。
しかし、数ヶ月経った後は弾薬不足や、兵器の一部も使うことができなくなる恐れがあります。
アメリカからはこれまで約18兆円という突出した支援額がありましたが、今後は支援が停止する可能性が出てきています。
カメラの前で起きた決裂
会談は、トランプ大統領、ヴァンス副大統領、ゼレンスキー大統領が口論する場面が生中継されるという状況でした。
石塚委員によると、会談決裂のきっかけは「ロシアのプーチン大統領に対する評価」です。
トランプ大統領とヴァンス副大統領がプーチン大統領を「すごい人だ」とするようなロシア寄りの発言をしたことに、ゼレンスキー大統領は我慢できなかったようです。
「あなたたちはそう言うが、プーチンがどんなことをしてきたか知っているのか」と反発。「外交で解決しろ」というヴァンス副大統領に対して「あなたの言う外交とは何か」と問いかけたところ、ヴァンス副大統領が激怒したのです。
ゼレンスキー大統領の反論
「これはまさに痛いところをつかれた」と石塚委員。
ヴァンス副大統領は答えにくい質問を公の場で投げかけられたことに「無礼だ」と激高しましたが、石塚委員によれば「それほど無礼な質問ではなかった」とのこと。
ウクライナ側からすれば「プーチン大統領を褒めそやしてどうするのか」という思いがあり、ゼレンスキー大統領は「テレビカメラの前で『はい、そうです』とニコニコしているわけにはいかない」と石塚委員は指摘しました。
欧州諸国の反応と新たな動き
トランプ大統領のロシア寄りの姿勢が目立ってきており、この傾向はなかなか変わりそうにありません。米ウクライナ首脳会談の決裂を受け、ヨーロッパ諸国には危機感が広がっています。
こうした状況を受け、ヨーロッパ各国の首脳はウクライナ情勢に関する会合を開催し、軍事支援を継続する姿勢を改めて確認しました。今後の焦点は、最大の援助国であるアメリカをいかにつなぎとめていくかという点です。
イギリスのスターマー首相はアメリカ側に支援継続を働きかけるため、トランプ大統領との対話による仲裁を試みる動きを見せています。
トランプ大統領と良好な関係を持つとされるイタリアのメローニ首相も説得役として期待されています。ヨーロッパ諸国が連携してアメリカを繋ぎ止めようとしている状況です。
ヨーロッパ主導の停戦案
ヨーロッパ諸国は迅速に反応しており、イギリス、フランス、ドイツなどが軍事支援の増額を検討する動きも出ています。
また、イギリスのスターマー首相とフランスのマクロン大統領を中心に、ヨーロッパとウクライナが共同で停戦案をまとめ、それを交渉のたたき台にしようという提案も出ています。
これまでの停戦案は主に「アメリカとロシアが提案するもの」でしたが、新たに「ヨーロッパとゼレンスキー大統領で合意した案をテーブルに乗せる」という方向性が模索されています。
欧州でも広がる政治の右傾化
しかし、イタリアのメローニ首相の仲介役としての役割については課題もあります。メローニ首相はいわゆる極右政党の出身で、ヨーロッパの政治が保守化しています。ただの保守化ではなく、「もう少し右寄りになっている感じ」と石塚委員。
石塚委員によれば、「そういう政党はどちらかというと『プーチンさんでいいんじゃない』という人が多い」とのこと。EUのハンガリーではオルバン首相が「完全にプーチン寄り」の立場をとっており、ハンガリーは今回の件についても即座に「トランプの言うことが正しい」と支持を表明しています。
ヨーロッパも一枚岩ではありません。
石塚委員は「極右政党から出てきたメローニさんに頼らなければいけないというのは、逆に言うとアメリカが今『そっち寄り』だということかもしれません。ヨーロッパもなかなか課題を今回抱え込んでいる」と分析しています。
複雑化する平和への道筋
ウクライナとアメリカの会談決裂をきっかけに、アメリカとロシアがウクライナの頭越しで停戦交渉を始める動きがある一方で、ヨーロッパ各国はウクライナと共に停戦案を作る別の方向性も出ています。
そもそもウクライナとロシアが同じテーブルについて停戦交渉を始める機会がまだ全くない中で、今後どうなっていくのか注目されます。
石塚委員は「ヨーロッパとアメリカの間の溝がこんなに深いのは第二次大戦後初めてでしょう」と、今回の事態がいかに異例かを指摘し、話を締めくくりました。
(minto)
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