97歳現役看護師 「死ぬまで、働く」

97歳現役看護師 「死ぬまで、働く」

病院や福祉施設などに欠かせない看護師。三重県津市で働く女性の年齢は、なんと97歳。看護一筋80年です。現役にこだわり、いまも働き続ける理由とは・・・その姿に密着しました。

88歳で今の職場に就職

CBCテレビ

池田きぬさん、大正13年生まれの御年97歳。現役の看護師です。三重県津市のサービス付き高齢者向け住宅「いちしの里」で働いています。衰えを知らない手際のよい働きぶりに、誰もが驚きます。

池田さん「ここに就職したときには、88歳でした。もう2~3年看護師の仕事をして、それでもう辞めようと思ってきたんですけど。10年経ちました」

兵士を看病した戦時中からずっと現役

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看護の世界で働きはじめたのは19歳の時。太平洋戦争中、日本軍の看護要員として兵士たちの手当てをしていました。命を守る仕事にやりがいを感じた池田さんは終戦後、地元の三重県に戻って結婚。2人の子どもを育てながら看護師の仕事を続け、3カ所の病院で総婦長も務めました。

5年前取材した際には、池田さんは92歳。その頃は週に4日の勤務し、入居者の部屋を行ったり来たりと、年齢を感じさせない働きぶりを見せていました。97歳になった今は、週1回から2回の半日勤務になりましたが、それでも痰の吸引など医療行為が必要な高齢者が多いこの施設で、他の看護師と同じ内容の仕事をこなしています。

後輩看護師に負けない働きぶり

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施設にいるのは、大半が池田さんより年下の入居者です。78歳の女性入居者は、食事を摂ることができないため胃に通したチューブで栄養を補給します。手際よく処置をすると、休む間もなく次の部屋へ向かいます。

池田さん「きちっと仕事ができるか、一番気をつけている。パッパッと動けたらよろしいけどね」

若い看護師たちと同じようには動けませんが、正確さは負けていません。入居者へのストレッチや全身のマッサージも池田さんの仕事です。

耳が遠い入居者には必要なことを紙に書いて伝えるなど、1人1人丁寧に向き合う姿は入居者にとっても心強い存在です。

看護ステーションに戻ると、紙にメモした血圧や体温をスマホで入力しますが、スマホの使い方には慣れません。悪戦苦闘しながら後輩看護師に教えてもらい、最後まで自分で入力します。

池田さんの働きぶりを後輩たちはどう考えているのでしょうか。

後輩看護師「ある程度年齢が来ると『それでいいか』ってことになってしまうけど、新しいことを吸収しようってすごく前向きなので、色んなことに。すごいですよ」

尊敬のまなざしで見ていました。

迷惑を掛けずに生活したい

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池田さんは仕事がない日には、散歩するのが日課。年を取って足が弱ってきたことから、鍛えるために歩くようになりました。

池田さん「人に頼らんと、『あれして、これして』って頼まんでも自分で動けることが大事やと思う」

アパートに1人で暮らす池田さんは、2か月前に引っ越してきたばかり。それまでは、姪が隣に住む一軒家に暮らしていましたが家を売却。家族に迷惑をかけたくないと、人生の最期を迎える前に身の回りを整理しました。
23年前、胃がんで夫の一郎さんがこの世を去って以来、ずっと1人の生活です

そんな池田さんにとって今、心の支えになっているのはファンレターです。2021年11月に自伝『死ぬまで、働く。』を出版。働く上での考え方などを綴り、読者から感想が届くようになりました。もっと働きたいと思っている人にとって、自伝が一石になれたのではと考えています。

もらった手紙には必ず返事を書くと決めていますが、1日に1通書くのが精いっぱい。働き続ける池田さんにとって、読者からの声は励みになっています。

「動けなくなったら辞める」覚悟

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しかし、長時間立ちっぱなしの看護の仕事。年を重ねるとともに体力の衰えを感じ、
自分に務まるのか…という不安も持つようになりました。 そんな池田さんは、これまでに3~4回退職願を出しています。他の看護師たちの足手まといになりたくないという思いからです。“動けなくなったら辞める”という覚悟はできています。

求められる限り役に立ちたい

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社長はどのように思っているのでしょうか。

社長「私たちからしたら(池田さんは)十分働けるんですよ。無理やり働かすということはもちろんありませんが、お体が元気なうちは関わってほしいなと思っています」

池田さんも“求められる間は役に立ちたい”と考えており、仕事の手が空くと処置に向かう他の看護師のために、ガーゼを入れる袋などを準備し陰ながら支えます。仕事中は手を休めないのが、97歳になっても変わらないポリシーです。
池田さんにとって働くとは・・・

池田さん「仕事に出てばっかりおるから、家にいると取り残されているような感じがして。みんなと一緒に働きながら仕事をする環境がいつの間にか合ってるようになった」

その一方で、生涯現役を続けたいか尋ねると

池田さん「もう(働くのは)けっこうです。長いこと勤めさせてもらった」
と優しく語りました。

今日も入居者と向き合う池田さん。看護一筋80年、目の前に仕事がある限り、働き続けます。
CBCテレビ「チャント!」5月11日の放送より。

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