教育の場での「ジェンダーニュートラル」 男女のイメージは必要? 変化する保育園の個人マーク
保育園や幼稚園では、自分の持ち物を置く場所などを示す「個人マーク」が使われています。動物や果物、乗り物などのイラストは、まだ文字が読めない子どもにも分かりやすいマークです。
ライオンだったら「男の子」、ウサギだったら「女の子」など、入園時に割り振られますが、なぜ男女でマークを分けられているのか、疑問に思ったことはありませんか?新たにマークを作る取り組みをしている保育士さんを取材しました。 CBCテレビ「チャント!」3月2日放送から
ライオン、カブトムシは男の子?ウサギ、チョウは女の子?
「(男の子は)強いイメージ、(女の子は)優しいイメージ」
「服も男の子は強そうなライオン、かわいらしいウサギは女の子のイメージ」
6組のお父さんお母さんに、動物のイラストを「男の子のイメージ、女の子のイメージ」に分けてもらうと、全員が同じ結果になりました。長年、保育の現場にいる現役の保育士さんも「女の子はピンク・赤系、かわいらしい。男の子はたくましい、かっこいい。この仕事に就いてから、ずっとこのイメージでした」と解答。意識せずに長年このように割り振っていたと言います。
名古屋の保育園がニュートラルなイラストを導入
そんな中、名古屋市の「アイン楽園町保育園」は違ったマークを2年前に導入しました。クリームソーダに、ソフトクリーム、ドーナツ、お花見団子。動物では、ラッコ、魚のクマノミ、イルカ、タコなど。どれも男の子っぽい、女の子っぽいといった感じがしないイラストばかり。無意識のうちに決めている「男の子・女の子のイメージ」を取り払ったジェンダーの中立的な、ニュートラルなイラストを使ったマークです。
ジェンダーニュートラルな個人マークを提案したのは、同園の保育士・天野諭さん。保育士をしながら、立命館大学の大学院に在籍し、子どもの研究もしています。自身がLGBTQでもあることから、「保育の現場をもっと中立的な環境にしたい」と考え、その第一歩として個人マークの見直しを園長に提案しました。
天野さん 「小学校・中学校・高校では、制服が自由に選べるなど、ジェンダーのことはLGBTQの問題と絡めながら、かなり議論が進んできていると思います。しかし保育園ではその議論がなかなか進まないところがあります。そこにいくまでの一段階目として、あえてニュートラルにすることで、大人たちが『ジェンダーの話をもう少ししよう』という風になればいいかなと思っています」
保育士としての視点、またLGBTQの当事者としての視点から生まれたのが、保育園での中立的なマークの使用でした。
天野さん 「LGBTQの子どもたちを、何とかしたいとか、守りたいということではありません。いわゆる『普通に育っていく』ことが、男の子、女の子にとっても重要な問題。もちろん男の子らしい男の子、女の子らしい女の子、そういう風に育てたいという親御さんの子育て観は、否定するべきところではないと思います。ただ保育園という公共の場では『あなた女の子だからこうでしょ、男の子がだからこうでしょ』みたいな決めつけがないような状態を目指したいと思っています」
自分の個性を自由に発揮できる環境を作る
天野さんは、ジェンダーニュートラルなイラストを増やす活動にも取り組んでいます。2月にクラウドファンディングで、ジェンダーニュートラルな個人マークシールの商品化プロジェクトをスタートしたところ、目標金額20万円をわずか3日で達成。今も支援の輪が広がっています。
天野さん 「本当であれば、女の子がライオンを選んでもいいし、男の子がリボンやケーキのマークを選んでもいい。自分のやりたいことができる、自分の個性を自由に発揮できる環境を作るという意味で、ある程度ジェンダーをニュートラルにしていく、なだらかにしていくことが、大事なことではないかと思っています」
『チャント!』は、CBCテレビで毎週月〜金曜日の夕方15:49 - 19:00に放送されている東海3県向けの夕方ワイドニュース・情報番組です。