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桑田佳祐が5大ドームツアーを駆け抜けた!会場で堪能した「起承転結」の熱き歌

桑田佳祐が5大ドームツアーを駆け抜けた!会場で堪能した「起承転結」の熱き歌
CBCテレビ:画像『写真AC』より「バンテリンドーム」

2年連続の嬉しい贈り物だった。サザンオールスターズの桑田佳祐さんが、2021年の全国ツアー『BIG MOUTH, NO GUTS!!』に続いて、5大ドームを中心にした2022年ツアー『お互い元気に頑張りましょう!』を敢行し、秋から師走への日本列島に元気をくれた。桑田さんにとっては、ソロデビュー35周年の節目を迎えた喜び。ファンにとっては「まさかの2年連続!?」という予想外の喜び。師走の横浜で打ち上げとなった、そんな歓喜のステージで、今回は「起承転結」に出会った。「起承転結」は、あくまでもひとりのファンとして、自分なりの解釈であることはご承知いただきたい。そんな珠玉のライブに名古屋会場バンテリンドームで酔った。

「起」~激動の年を優しく包む

今回も最初の曲の予想は外れた。35周年記念だから、1987年(昭和62年)のソロデビュー曲『悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)』でくるかと思ったが『こんな僕で良かったら』だった。2007年発表『明日晴れるかな』の12センチCDに入っている1曲で、ゴージャスなメロディーラインに静かな歌詞が乗る。それが「起」のスタートだった。『若い広場』『可愛いミーナ』『明日晴れるかな』『いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)』と、割とおとなし目の曲が続く。思えば2022年は、世界も日本も激動の年だった。「まさか!」という悲しいニュースが多かった。海外ならば、ロシアによるウクライナ侵攻であり、国内ならば、安倍晋三・元総理への銃撃事件である。そんな殺伐とした出来事を癒すような冒頭のセットリストだった。『こんな僕で良かったら』の「雨が止み雲が流れゆく」、そして『明日晴れるかな』の「奇跡のドアを開けるのは誰?」「その鍵はもう君の手のひらの上に」、そんな歌詞たちが胸に沁みた。

「承」~WONDAでヒートアップ

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ライブ」

どこかしみじみとスタートしたライブは、この曲で一気に爆発した。NUMBER WONDA GIRL 〜恋するワンダ〜』はコーヒー飲料のCMソングとしても人気を得た。ライブでは久しぶりの披露。ドーム内に交差する照明の中で、桑田さんの絶叫がこだまする。その余韻の中で登場したのが、お楽しみご当地ソング。中日ドラゴンズの野球帽をかぶった桑田さんの姿に、誰もが思い描いた歌は『燃えよドラゴンズ!』。ライブ会場であるバンテリンドームでの試合で披露される球場合唱バージョンを2コーラスまるまる披露した。ドラゴンズの試合と桑田さんのライブ。その同じ舞台にいることを、この歌があらためて教えてくれた。「今年は最下位、でも来年は日本一だ!」という桑田さんのエールが、そのままシーズン開幕までドームの天井に残って、立浪ドラゴンズに元気を与えてほしい。『SMILE~晴れ渡る空のように~』が続き、ライブはいよいよ佳境に入った。

「転」~アコースティックの驚き

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ギター演奏」

思わぬ展開は、アコースティックギターを抱えてのコーナーだった。しっとりと『鏡』を歌い上げた2曲目にきたのは、アレンジを大きく変えた『BAN BAN BAN』だった。1986年に結成されたKUWATA BANDのデビュー曲である。当時はCMソングとしても大ヒットし、この日のステージで最初の頃に披露された『MERRY X’MAS IN SUMMER』、そして『スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)』と共に今も人気の楽曲である。アレンジを加えて生ギターで歌うと、まったく新たな魅力にあふれるから不思議だ。今回のステージでの大収穫だった。続く『Blue~こんな夜には踊れない』のアコースティックバージョンも素晴らしかった。曲全体に妖艶さが増した印象だった。ベストアルバムのために新たに書き下ろされた『なぎさホテル』など、「転」の時間は実にユニークに過ぎていく。

「結」~これぞフィナーレ感動の渦

CBCテレビ:画像『pixabay』より「ライブステージ」

そして、ライブは嵐のようなラストスパートへ。『Soulコブラツイスト~魂の悶絶』。亡くなったアントニオ猪木さんの面影が少しだけ浮かんだ。それも2022年のニュースだった。そしてここでようやく『悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)』。サビの部分で両手を前に突き出すフリが、ドーム全体に広がっていく。この曲は、やはり原点である。桑田さんにとっても、ファンにとっても。そして『ヨシ子さん』。ステージ登場メンバーは、滑稽を超えて何とも不気味な爺さんのかぶり物をしたダンサー。最初は2人だったのがだんだん数を増していき、摩訶不思議な空間を築いていった。このところ披露される昭和の名曲、今回は『真赤な太陽』だった。2009年に最初の『ひとり紅白歌合戦』でも桑田さんが選んだ1曲。スクリーンにはこの曲を歌った美空ひばり、そしてジャッキー吉川とブルーコメッツのモノクロ映像が映し出されて、郷愁を誘った。その勢いのまま、ラストの『波乗りジョニー』になだれ込んだが、白い水着のダンサーの数はかつてないほどの多さで、このステージへの気合がド直球に伝わってきた。

悲しい現実と夢の世界

アンコールの1曲目は『ROCK AND ROLL HERO』。日米関係を歌詞に込めたこの曲は、桑田さんのステージで度々披露される。曲が発表された2002年のアメリカ大統領は、ジョージ・W・ブッシュ氏“息子ブッシュ”である。日本は小泉純一郎総理大臣。同時多発テロから1年、アフガンやイラクが戦場になった時代だった。そして令和の今は?『舵取りのいない泥の船はどこへ行くのか』という歌詞に、何やら現実に引き戻されていたが、それを『白い恋人達』が優しく忘れさせてくれた。バックの映像には異国の街並み、そこに雪がしんしんと降る。それを背景にしての桑田さんの絶唱は、この日のステージを見事に昇華させていった。

ボーカリスト桑田佳祐による全28曲およそ2時間半のステージに、今回も多くの人たちが酔いしれた。サザンの名曲『はっぴいえんど』に「歌うことしかない人生だけど」という歌詞があるが、本当に桑田さんは、心から歌うことが大好きなのだろう。この日のラストソング『100万年の幸せ!!』のように、数々の歌を胸に抱えて、幸せな気持ちいっぱいで家路を急いだ。
    
【東西南北論説風(394)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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