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★In My Life with The Beatles(No.3)心に響くリンゴ・スターのリズム

★In My Life with The Beatles(No.3)心に響くリンゴ・スターのリズム
筆者撮影:アビーロードスタジオ(C)CBCテレビ

リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンドの名古屋公演が、4月9日にZepp Nagoyaで開かれます。2018年秋のポールに続いて、今度は、リンゴのライブ・コンサートを名古屋で見られる・・・実にエキサイティングです。

ビートルズとして輝き続けた「スター」

ビートルズのメンバーとしてのリンゴ・スターは、常に輝き続けた文字通り「スター」でした。初期には「Boys」「I wanna be your man」などのボーカルを担当し、ライブ・ステージでは、ドラムを激しく叩きながらマイクロフォンに口を近づけて熱唱する姿がファンの心を揺さぶり会場を大いに沸かせました。アルバム「Revolver」でリード・ヴォーカルをとった「Yellow Submarine」が世界的ヒットソングになり、サージェント・ペパーの中で歌った「With a little help from my friend」も、多くのミュージシャンたちがカバーする、リンゴのキャリアを代表する名曲です。リンゴは、ソングライターとしても「Don’t pass me by」「Octopus’s Garden」などの優れた曲をビートズ時代に残していますし、解散後のソロ活動でも「明日への願い(It don’t come easy)」「Back off Boogaloo」などがヒット・チャートを賑わせました。

苦い思い出も・・・

しかし、そんなリンゴにとって、ビートルズのデビュー曲「Love me do」は、苦い思い出として記憶に残っているかもしれません。
1962年9月、ロンドンのアビーロード・スタジオで「Love me do」の録音が2回行われました。一回目の録音で、リンゴがドラムを叩きました。ところが、レコーディング・プロデューサーのジョージ・マーティンは、この日の録音は、ビートルズを世に送り出すファースト・シングルとして満足のいく出来栄えではないと感じたのです。そこで、数日後に、もう一度、ビートルズの4人は、アビーロード・スタジオに呼び出されました。2回目の録音に臨むためです。ところが、なんと、そこにはビートルズのメンバーではない、セッション・ミュージシャンのドラマーがいたのです。一回目の録音で、リンゴのドラムが良くないと感じたプロデューサーのジョージ・マーティンが、リンゴの代わりにセッション・ドラマーを手配したのでした。
録音スタジオには、ジョン、ポール、ジョージ、そして、セッション・ドラマーのアンディ・ホワイトが入りました。リンゴは、スタジオの外のミキシングルームの片隅に座り、静かにリハーサルを聴いていたそうです。きっと辛かったに違いありません、彼の心の中は・・・。

タンバリンに込めた執念・・・紛れもなくリンゴのリズム!

録音の本番で、プロデューサーは、リンゴに、ドラムではなく「タンバリンをたたいてくれないか」と依頼しました。しかし、リンゴは、いやな顔一つしなかったと伝えられています。プロデューサーは当時を振り返って次のように述べています。「リンゴは、ホントに素敵な人だった。常におっとりと構えて、『何か必要なことがあったら、何でもやります』って言ってくれたんだ」と。
1962年9月に2回録音された「Love me do」。今、私たちは、1回目と2回目の録音の違いを聴き比べることができます。すなわち、リンゴがドラムを叩いているバージョンと、セッション・ドラマーのアンディ・ホワイトがドラムを担当し、リンゴはタンバリンを叩いているバージョンの違いです。前者は、ビートルズ解散後の1988年にCDで発売されたアルバム「Past Masters 」で聴くことができます。後者は、アルバム「Please Please Me」に収録されています。

一般的な感覚では、リンゴにとって、セッション・ドラマーがドラムを叩き、自分はタンバリンで参加した録音は、屈辱的で心傷つきながらの演奏になっているのでは・・・と思われます。しかし、私は、リンゴがタンバリンを叩いているバージョンこそ、リンゴのパーカッショニストとしての執念が燃え立っていて、リンゴの存在感が際立って聞こえるのです。ビートルズの音楽になくてはならない存在の、リンゴ・スター独特の職人技のリズムが、タンバリンの音に刻まれているではありませんか!

リンゴの魅力!ポジティブ思考

リンゴは、コントロール・ルームで静かにリハーサルを聴きながら、実は「Love me do」を最も魅力的に聞かせるためのリズム感覚を頭の中で練っていたのではないでしょうか?
だから、静かに聴いているように周りの人間には見えたのでしょう。そして、プロデューサーから「タンバリンを叩いてくれないか」と言われた時、リンゴは屈辱的なんて感じなかった・・・「よっしゃ!来た!」と思ったに違いありません。

CBCテレビ論説室 特別解説委員
後藤 克幸

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