前編|朝、指がこわばるのは更年期のサイン? 女性に多い手の不調を専門家が解説

「朝起きると、指がこわばる」
「最近、指先がしびれる」
「瓶のふたを開けると、親指の付け根が痛い」
そんな変化を感じても、「年齢のせいかな」と、そのままにしていませんか。
2026年8月10日の「ハンドの日」、名古屋大学豊田講堂で「女性の健康セミナー 女性に多い手の悩みについて」が開催されました。更年期の体の変化から、女性に多い手の病気、日常でできるハンドケアまで、3名の専門家が解説。会場には110名が集まり、その多くは50代・60代の女性でした。
なぜ「女性の健康」を考えるセミナーで、“手”を取り上げるのでしょうか。
身近な女性のリアルな本音を伝え、「今」を生きる人を応援したい——そんな思いからCBCテレビが立ち上げた「me:tone編集部」が、女性と手の健康について取材しました。
「年齢のせい」で片づけられやすい、手の不調
8月10日の「ハンドの日」は、健康な手への感謝や、手が不自由な人への社会的な関心、手のけが・病気・しびれなどの治療に携わる「手外科」の存在を知ってもらうことなどを目的に、日本手外科学会が2019年に登録した記念日です。
今回のセミナーを共催した大塚製薬の担当者は、「手の症状を単なる整形外科領域の問題ではなく、女性の健康課題の一つとして捉えてもらいたい」と話します。
更年期世代の女性には、手のこわばりや痛み、しびれなどがみられることがあります。一方で、「年齢のせい」「ただの使いすぎ」と受け止められ、我慢してやりすごしてしまう人も少なくありません。大塚製薬の担当者は「適切な診断や治療につなげるためにも、まずは手の健康について理解を深めていただきたいという思いで、セミナーをサポートしています」と話します。
今回のセミナーでは、産婦人科領域の女性医学専門医、整形外科領域の手外科専門医、作業療法士という異なる分野の専門家が、それぞれの視点から「手の不調」について講演しました。

更年期は「ほてり」「イライラ」だけではない
最初に登壇したのは、名古屋大学医学部附属病院 産科婦人科 診療教授の中村智子先生です。日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医である中村先生は、「更年期を知る:心とからだの変化との上手なつきあい方」というテーマで更年期について詳しく解説しました。

更年期とは、閉経を挟んだ前後5年間、合わせて10年間の時期を指します。この時期には、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の分泌量が大きく変動します。
中村先生:「更年期症状は、女性であれば誰にでも起こりうる自然な体の変化によって現れるものです。心配される方も多いですが、対処することもできます」
更年期の症状と聞くと、ほてりや冷え、発汗などを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、症状は動悸、めまい、気分の落ち込み、イライラ、倦怠感など多岐にわたります。
その一つとして挙げられたのが、関節の痛みやこわばりです。
中村先生:「関節痛やこわばりについて相談される方も多くて、特に朝方にこわばりを感じる、といった声を聞きます。手や指は日常生活で頻繁に使ううえ、目につきやすい部位でもあるため、不調を実感しやすいのだと思います」
パソコンを操作する、料理をする、スマートフォンを使うなど、手や指は日常生活のさまざまな場面で使うため、小さな違和感でも気になりやすい部位です。
さらに更年期は、自分の体の変化だけではなく、子どもの思春期や親の介護、職場での役割や責任の変化などが重なりやすい時期でもあるため、心身の不調を感じやすいともいいます。

ただし、中村先生は、すべての不調を「更年期だから」と自己判断しないことも大切だと話します。
倦怠感や意欲低下の背景には甲状腺や肝機能の異常、うつ病などが隠れていることがあります。指のこわばりや関節痛においても、関節リウマチなど別の病気が見つかる場合があります。
中村先生:「更年期は誰しも経験する時期ですが、症状は人によって本当にさまざまです。つらいと感じたときに我慢する必要はなく、まず言葉にすることが大事だと思います。医療の力を借りながら、自分らしく過ごすことが大切です」
「更年期だから仕方ない」と一人で抱え込まず、気になる症状があれば相談する専門医を見つけることも、この時期の体と付き合っていく方法の一つです。
更年期以降に増える、手の病気とは
続いて、名古屋大学大学院医学系研究科 人間拡張・手の外科学教授の山本美知郎先生が登壇しました。山本先生は日本手外科学会の手外科専門医で、手の疾患を専門としています。

講演では、更年期以降の女性にみられる代表的な手の病気として、「ばね指」「手根管症候群」「ヘバーデン結節」「母指CM関節症」が紹介されました。
山本先生:「ばね指は、更年期の女性に起こることが多く、妊娠時や産後に生じることもあります」
ばね指は腱鞘炎の一つで、指を曲げ伸ばしするときに痛みや引っかかりが生じます。
手のしびれで注意したい病気の一つが「手根管症候群」です。
山本先生:「手根管症候群では、親指から薬指にかけてしびれが出て、特に明け方に強くなります。運動神経にも影響すると、親指の付け根の筋肉がやせてくることもあります」
ほかにも、指の第一関節に痛みや変形が現れる「ヘバーデン結節」や、瓶のふたを開ける、物をつまむといった動作で親指の付け根に痛みが生じる「母指CM関節症」があります。
こうした病気は更年期以降の女性に多くみられるというデータがあります。一方で、女性ホルモンとの関係についてはまだ十分に解明されていないところもあり、研究が続けられています。
また、「更年期だから」と思っていた手の違和感に、別の原因が隠れている可能性もあるといいます。そのため、疾患を適切に診断し、治療につなげていくことが大切です。

講演を聞いた参加者からは、「婦人科と整形外科を受診していますが、どちらでも更年期と手指の関係について説明がなかったので、やっと理解できました」との声がありました。
また、「更年期と手指症状の関係は知っていたものの、症状の出方や順序、割合などが理解しやすかった」という感想も。すでに知っていた人にとっても、自分の症状を整理する機会になったようです。
後半記事では、手の疾患における治療と、日常で取り入れられるハンドケアについてお伝えします。
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