病気と闘う子どもたちに打ち上げ花火を!亡き息子の思いを引き継ぎ2年前から開催
10月29日、三重県津市の町屋海岸で、病気と闘う子どもたちを応援する花火大会「スマイル花火プロジェクト」が行われました。季節外れの打ち上げ花火に込めた主催者らの想いを取材しました。
今年で3回目、小児病棟の子どもたちに花火を
2022年で3回目の開催となったスマイル花火プロジェクト。主催する「スマイルカレンダープロジェクト」代表の寺際伸一さんは、津市に住む会社員。10年前から、毎年、クリスマスの時期に、小児病棟の子どもたちにカレンダーや文房具を贈るボランティアを行ってきました。
2020年、新型コロナの感染拡大で、面会制限など子どもたちの入院生活にも厳しい状況が生まれました。寂しい思いをしている子どもたちを勇気づけたいと、寺際さんが思い立ったのが、季節外れの花火大会です。
創業115年の花火会社「伊藤煙火工業」は寺際さんに賛同し、毎年、花火を作っています。伊藤照雄会長は「少しでも上向いて、明るい気持ちになっていただければと思います。そして少しでも早く退院できるようにと思います」と話します。
1年目は230発、2年目は450発と、花火大会の規模は年々、拡大してきましたが、資金は全て募金で賄っています。多くの店が手作りの募金箱の設置に協力し、今では小児病棟の子どもたちはもちろん、地域の人々もこの花火大会を楽しみにしています。
亡き長男の想いも花火に込めて
寺際さんがボランティアを始めた理由は、亡くなった我が子の想いを知ったことからでした。長男の竜一さんは、13年前、小学6年生で急性リンパ性白血病を発症。闘病生活の末、15歳の若さで他界しました。
悲しみの中、竜一さんの教科書を開くと、ドナーカードを学ぶページに「助けてもらったから、今度は自分が人を助けたい」という想いが書かれていました。寺際さんはそれを読み、「この気持ちを引き継いでいかなくちゃいけないな」と考えるようになったと言います。
開催が近づいた日、寺際さんは竜一さんの遺影に手を合わせ、「この子には“空の担当”で。陸は僕たちが頑張るから、絶対晴れるように天候の仕事を頼んでいます」と語ります。
450発の花火が夜空に!子どもたちに笑顔と勇気を
迎えた当日はきれいな秋晴れで、絶好の花火日和になりました。伊藤会長がセットする花火玉には、「早く退院して元の生活に戻れますように」「元気いっぱい遊んでおいしいものたくさん食べられますように」など、長い入院生活を送る子どもたちの想いが貼られています。
花火を楽しみにしている小児病棟の子どもたちは、花火が一望できる海側の部屋へ集まり、スタンバイ。今回は、寺際さんらの声かけで、障害がある人の自立支援を行う「ふくろうの家」の皆さんも花火を見に来てくれました。
準備が整い、打ち上げスタッフと子どもたちが、互いにライトを大きく振り合いました。いよいよ花火大会のスタートです。
ハートやスマイルなど、さまざまな形と色の花火が夜空を彩ります。スターマインが空に広がると、子どもたちの元気な歓声が部屋中に響き渡り、拍手も起こりました。約450発の花火を楽しんだ子どもたちは「花みたいできれいでした」「また来年もしてほしいです」と笑顔で話します。
無事に打ち上げを終えた寺際さんは「子どもたちに喜んでもらえたことと、協力していただいた皆さんに、心からお礼を言いたいです。きっと息子も生きていたらこういう活動をしていたと思うので、これからも病気と闘っている子どもたちにエールを送り続けたいと思います」と話しました。
CBCテレビ「チャント!」11月7日放送より