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村上5打席連続ホームランが蘇らせた、歴代ドラゴンズ戦士2人の偉大な記録

村上5打席連続ホームランが蘇らせた、歴代ドラゴンズ戦士2人の偉大な記録

見事な新記録の達成だった。2022年8月2日、東京ヤクルトスワローズの若き4番、22歳の村上宗隆選手が、5打席連続ホームランを放ち、プロ野球史に新たな1ページを刻んだ。対戦相手だった中日ドラゴンズ、そして打たれた先発の柳裕也投手は、まさに“引き立て役”。ファンとしては悔しいけれど脱帽、次こそは抑えてほしいのだが、この新記録樹立によって、過去の偉大な記録もクローズアップされることになった。

“世界の王”を越えた新記録

村上選手に塗り替えられるまで、プロ野球記録は「4打席連続本塁打」だった。1956年(昭和31年)の青田昇さんから始まり、最近2017年のブランドン・レアード選手(当時は北海道日本ハムファイターズ)まで、20人の選手が達成している。

今回の村上選手の快挙を伝える報道では、それまでの記録について「王貞治さんやランディ・バースさんらが記録していた」と紹介されたが、実はこの20人の中に、ドラゴンズの選手が2人も入っている。高木守道さんと谷沢健一さんである。

竜の記録保持者は高木守道

「サンデードラゴンズ」より高木守道氏(C)CBCテレビ

高木守道さんは、ドラゴンズの球団史に輝く名セカンド、いや、プロ野球の歴史においても“二塁手”と言えば高木さんだろう。

岐阜県立岐阜商業高校から入団1年目の1960年(昭和35年)5月、大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)戦で、代走としてプロ初出場を果たすと、即盗塁を決めた。そのまま守備について回ってきた初打席でホームラン。

この試合で、初盗塁・初ヒット・初ホームラン・初打点、すべてを記録した。1974年に讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止しての20年ぶりのリーグ優勝の立て役者であり、のちに2代目「ミスター・ドラゴンズ」と呼ばれた。監督としても2度にわたってドラゴンズを率いた。

モリミチは“ホームラン打者”だった

1番打者、俊足、巧打者の印象がある高木さんだが、実は“強打者”でもあった。21年の現役生活で打ったホームランの数は236本。チームの通算トップはホームラン王にも輝いた宇野勝さんの334本で、高木さんは堂々6位に名を連ねている。

そんな高木さんは、1977年6月14日に4打席連続ホームランを達成した。2日前の阪神タイガースとのダブルヘッダーから3試合にまたがっての記録。

このシーズンのドラゴンズは、20年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた与那嶺要監督の最終年だった。メジャーからの助っ人ウィリー・デービス選手のランニング満塁ホームランの印象があまりに強いのだが、そんな中“モリミチ”も偉業を成し遂げていた。さすがの“職人技”である。

もうひとりは首位打者2度の谷沢健一

谷沢健一さんも、ドラゴンズの球団史にその名を刻む左のスラッガー。早稲田大学からドラフト1位で入団すると、1年目の1970年(昭和45年)にはいきなりレフトのレギュラーを獲得、新人王にも輝いた。

谷沢さんは2度、首位打者を獲得している。 1976年には張本勲さんとのデッドヒートの末、打率3割5分4厘8毛4糸、なんと「厘」よりも「毛」よりも小さい「糸」の単位で張本さんを越えた。 2度目の首位打者は、長きにわたったアキレス腱痛との戦いを克服して1980年に獲得した。3割6分9厘という高い打率での首位打者だった。

4打席連続ホームランを目撃した!

そんな谷沢さんが4打席連続ホームランを達成したのは、1981年(昭和56年)だった。このシーズンのドラゴンズは、前年まで3年間チームを率いた中利夫さんからバトンタッチした近藤貞雄監督の1年目。強肩とスピード感あふれるキャッチャー中尾孝義選手を獲得するなど、豪快な“野武士野球”の骨格ができつつあったシーズンだった。

谷沢さんは、ナゴヤ球場でのジャイアンツ戦、9月20日と21日、 2試合にわたって4打席連続ホームランの記録を残した。 実は、筆者はその達成の瞬間をナゴヤ球場の内野スタンドで見ていた。

タイ記録だったこともあってか派手なセレモニーもなく、むしろジャイアンツの連続得点記録を完封でストップした先発の小松辰雄投手に拍手を送っていた思い出がある。翌1982年、ドラゴンズは8年ぶり3度目のリーグ優勝。谷沢さんのホームラン記録は、後から振り返れば、その前夜祭とも言える号砲だった。

新記録が作られる時は、同時に破られた過去の記録にスポットライトが当たる。2004年にイチローさんが、米メジャーのシーズン最多安打の新記録を達成した時に、それまでの記録257安打を持っていたジョージ・シスラーさんの家族が、球場でイチローさんを讃えていた風景を思い出す。

その意味では、竜党としても村上選手に感謝しなければならないが、できれば新記録は自らのチームの後輩に塗り替えてもらいたいものである。
                                  

【東西南北論説風(365)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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