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竜のドラフト10年史(8)~全国注目のスター選手!根尾昂を獲る・2018年

竜のドラフト10年史(8)~全国注目のスター選手!根尾昂を獲る・2018年

ドラフト会議には夢とドラマがある。1965年(昭和40年)に始まったプロ野球のドラフト会議は、2021年に57回目を迎える。球団創設85周年を迎えた中日ドラゴンズにも、ドラフトによって数多くの選手たちが入団し球団史のページを飾ってきた。2011年1位指名は高橋周平、そして2020年1位指名は高橋宏斗、奇しくも「高橋から高橋へ」となったドラゴンズ最近10年間のドラフト史をシリーズで探訪する。(敬称略)

甲子園のスター根尾昂を獲得

与田剛新監督がガッツポーズをした瞬間、喜びに沸いたドラゴンズファンは大勢いたことだろう。高校球界のスーパースター、大阪桐蔭高校を甲子園春夏連覇に導いた中心選手、投げてよし打ってよしの“二刀流”、そしてドラゴンズの本拠地である東海地方の岐阜県飛騨市出身。ドラゴンズによる根尾昂の指名権獲得には、全国の野球ファンだけでなく、普段は野球を見ない人たちにも喜びを持って受けとめられた。根尾昂の魅力は、投打のプレーだけではなく、チームをまとめるリーダーシップなど“野球人”そのものにもあった。1位指名には、ドラゴンズに加え、讀賣ジャイアンツ、東京ヤクルトスワローズ、そして北海道日本ハムファイターズ、合わせて4球団が名乗りを挙げた。そしてドラゴンズが勝ち取った。小学校時代に少年野球チーム「ドラゴンズジュニア」で活躍していた根尾、青い絆は固く結ばれていた。

順風満帆かと思われた船出

ドラゴンズの指名が決まった瞬間、ちょっぴりはにかんだ根尾は、プロとしての抱負をこう語った。
「超一流の選手になりたい」
「一流」でなく「超一流」、その志は高かった。背番号は「7」。根尾は二刀流を封印して、「ショート1本でいきたい」と宣言し、その時点でのレギュラー京田陽太に挑戦状を叩きつけた。2019年シーズンからドラゴンズを率いることになった与田監督、自らの右腕で引き当てた根尾を開幕から起用すると期待は高かったが、プロの現実は厳しかった。自主トレ中に右足を傷めて春季キャンプは2軍スタート。根尾が1軍に上がったのは、シーズンも押し迫った最終戦間近、それも2打席ともに三振でのプロ野球スタートだった。

2018年ドラフト総括

根尾昂以外にも、高校生スター目白押しのドラフト会議だった。根尾と同じ大阪桐蔭高校のスラッガー藤原恭大、根尾と同じショートの小園海斗(報徳学園高校)にも、複数の球団から1位指名が殺到した。根尾をくじで外した北海道日本ハムファイターズは、夏の甲子園大会決勝で根尾、藤原と相まみえた吉田輝星(金足農業高校)を獲得した。オリックス・バッファローズも太田椋(天理高校)を指名したが、この年の高校生たちの力量は1位指名以外でも顕著だった。広島東洋カープ3位の林晃汰(智弁和歌山高校)や千葉ロッテマリーンズ4位の山口航輝(明桜高校)らが1軍で活躍している。高校生だけではない。
東北楽天ゴールデンイーグルス辰巳涼介(立命館大学)、阪神タイガース近本広司(大阪ガス)、讀賣ジャイアンツ高橋優貴(八戸学院大学)、福岡ソフトバンクホークス甲斐野央(東洋大学)そして埼玉西武ライオンズ松本航(日本体育大学)、続々と並ぶ選手名によって、人材豊富だった2018年ドラフトが彷彿される。

竜指名選手の現在地は?

「中日ドラゴンズ2018年ドラフト指名選手一覧表」(C)CBCテレビ

ドラゴンズにとっても、優秀な人材を確保したドラフトだった。2位の梅津晃大(東洋大学)は2021年から背番号「18」を背負うエース候補であり、3位の勝野昌慶(三菱重工名古屋)もルーキー年から先発陣に加わった。4位の石橋康太(関東第一高校)はパンチ力のある捕手、5位の垣越建伸(山梨学院高校)は根尾と幼なじみ、本格派の左腕。そして6位の滝野要(大阪商業大学)も2021年に開幕1軍を勝ち取った外野手である。
そんな同期に囲まれての根尾昂は、3年目の2021年に開幕スタメンで登場した。5月にはプロ入り初のホームランを満塁弾で飾り、いよいよドラゴンズ待望の“全国区のスーパースター”誕生かと思われたが、後半戦からは2軍に逆戻りして、雌伏の日々を過ごしている。高校時代からも「組織(チーム)の空気を変えることができる」逸材であるだけに、本格的な覚醒が待たれる。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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