竜の主砲ビシエド、歴代外国人通算打点更新には和の心、そして師匠との信頼関係にあり!
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
ドラファンの憂鬱は変わらず続く
一カ月の長いオリンピックブレイクが明け、後半戦がスタートしたものの、ドラゴンズファンの憂鬱は前半戦となんら変わらないまま続いているようだ。
相変わらずの貧打ぶり。反対にチーム防御率は12球団トップの3.15(8/29終了時点)。もし投手陣の踏ん張りがなければ、一体どこまで成績は落ち込んでいたのか。想像するだけでも深い溜息が出てしまう。平均得点は2.83(8/29終了時点)。いくら投手陣が好投しても見殺しにするゲームが続く。
そんななか、多少の好不調の波はあるものの大島とともに打撃陣を引っ張り続けるビシエドの存在はチームの中でもひと際大きい。今や“ビシエドしか打たん!”と言っても過言ではないくらいの活躍を見せている。来日して6年目。今やチームリーダーとして攻守に輝きを見せる主砲にサンドラは焦点を当てる。
ゴメスを抜く歴代外国人最多打点を更新
“4番マーチン、ホームラン”燃えよドラゴンズの歌詞でも有名なジーン・マーチン。引退試合にナインの手で宙に舞ったケン・モッカ。ホームランアーティストとして何度もチームのピンチを救ったタイロン・ウッズ。バンテリンドームのスピーカーに打球を当て、初の認定ホームランを放ったトニ・ブランコ。過去ドラゴンズに入団し、ファンの心を掴んだ外国人選手は数多い。その中でもダヤン・ビシエドほどドラゴンズファンに愛されたプレイヤーはいない。
8月27日金曜日、バンテリンドームで行われたジャイアンツ戦でビシエドは球団史に新たな1ページを残した。レオ・ゴメスの歴代外国人通算打点449点を抜く、450打点目を挙げ、記録更新を果たした。
『一生懸命毎日練習している結果が出て嬉しい。歴代の素晴らしい外国人選手の中で1位になれて光栄です』
ただこの日、歴代外国人最多打点を挙げたとはいえ彼にとっては、勝利に直結した打点だったことの方がうれしかったに違いない。責任感が強いビシエドなら、必ずやそう思うはずである。
和の心
思い返せばビシエドがドラゴンズにやってきたのは2016年。メジャー通算66本を放った右の大砲と期待されての入団だった。
その言葉通り、新外国人選手としては史上初の開幕戦から3試合連続ホームランという衝撃デビューを飾ると、その後もヒットを量産し、ドラゴンズの4番に定着。2018年には首位打者(打率.348)と最多安打(178本)の二冠を達成。順調にプロ野球で実績を上げていくビシエド。慣れない日本でここまで好調を維持できたのも、ふたつの理由があったからこそだった。
ひとつはビシエドが持つ“和の心”にある。
家族全員で名古屋に住み、日本の生活文化にどっぷりと溶け込んだ。長男は地元の学童野球チームに在籍。親子ともにベースボールではなく野球を愛する日々を楽しんでいる。充実した日常生活を送る中、今シーズンも自己最多の20試合連続ヒットを放つと、交流戦では球団初となる首位打者を獲得(打率.409)。オリンピック期間中には自身の髪をドラゴンズブルーに染め、身も心もリラックスできた。
故郷の英雄との出会い
そしてふたつ目は祖国キューバの英雄、オマール・リナレス巡回打撃コーチの存在だ。もともとキューバ時代、ビシエド自身が、リナレスの再来と呼ばれていた逸材だっただけに導かれるようにして出会った二人だったのかもしれない。
リナレスの存在は、入団1年目から何も分からない日本での暮らしに良い影響をもたらせたことは言うまでもなく、まさに二人三脚で日本野球に取り組んでくれた大恩人。彼の存在なしでは日本プロ野球での成功はなかったかもしれないほど、信頼関係は深くて厚い。
真面目で温厚な性格。和の心を持ち合わせ、師匠リナレスの教えのもとで成功をおさめたビシエド。チームメイトからも“あれほど日本人魂を持った外国人はいない”と言われ、試合中ピンチを迎えれば率先して声かけをし、キャプテンシーを随所に見せる。今や実質、チームのキャプテンと呼んでも誰からも文句の声は上がることはあるまい。貧打に苦しむ打線にも人一倍気にかけ、同僚のマルティネス捕手がスタメンに出られるためならばと、首脳陣からの指示ではなく志願してレフトの守備練習をこなしたという。
生涯中日ドラゴンズ
“チームが勝つためならなんでもやる”
ドラゴンズ愛を人一番表してくれるビシエドも今年が契約三年目の最終年。ファンとしては今後の順位よりも彼の残留が気になるところだ。
現在6年目を迎え、32歳となったビシエド。出場選手登録日数が145日を満たしたシーズンが8年に達すると取得できるFA権まであと2年。まだまだ一線級として働ける年齢だけに実質日本人となってドラゴンズで活躍してもらいたい。言葉を代えれば、ビシエドが引退すると自ら口から発するまでドラゴンズでプレーして欲しいのだ。それだけ彼の存在価値は十分あると信じている。
そして時が経ち、ビシエドジュニアがすくすくと育ち、ドラフトでドラゴンズへ入団。その時の監督が親父であるビシエドシニアなんて夢がある話だと思わないか。
まさに親子鷹ならぬ、親子竜の誕生だ。
そんな夢想をし、しばし一向に減らない借金を忘れたいと思う。
がんばれドラゴンズ!燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜