日比遊一監督が名古屋市美術館で講演会 映画「名も無い日」公開中
公開中の映画「名も無い日」の監督・日比遊一さんが、名古屋市美術館で7月10日から写真展「日比遊一/心の指紋」を開催している。17日には同館2階講堂で講演会を開いた。
日比さんは名古屋市熱田区出身の映画監督・写真家。20歳で俳優を目指し渡米し、1992年からはニューヨークで写真家として活動。高倉健の人生を描いた映画「健さん」で脚本・監督を務め、モントリオール世界映画祭のワールド・ドキュメンタリー部門最優秀賞を受賞した。今年5月から公開がスタートした映画「名も無い日」では、地元・熱田区を舞台にした自伝的なストーリーを映画化。好評を得ている。
写真展では、日比さんがアメリカ在住時や日本に帰国してから撮った街の風景や人物のモノクロ銀塩プリント79点を展示されている。
17日に行われた講演会で日比さんは、「映画監督にずっとなりたかったが、映画はとてもお金がかかる。脚本を書き続けながら、本当に写真に助けられ、救われました。カメラを持って歩くと、じっと物事を見るようになる。風景を撮ろうが他人を撮ろうが、結局は自分の心の投影になる。当時、オーディションも上手くいかず、うだつの上がらない生活の中、本当に夜中じゅう歩いて写真を撮っていました」と展示作品を撮っていた頃を振り返った。
また、講演会では公開中の映画についてのトークも。
「名も無い日」では、主人公のカメラマンの長男・達也を永瀬正敏さん、自ら破滅に向かう生活を選ぶ次男・章人をオダギリジョーさん、健気に兄たちを支える三男・隆史を金子ノブアキさんが演じている。弟の訃報を受け、25年ぶりにニューヨークから故郷の熱田に戻った達也が、カメラを手に過去の記憶を探るように名古屋を巡り、家族や周りの人々の思いをたどっていくというストーリー。
キャスティングへのこだわりについて聞かれた日比さんは「撮影現場では、俳優たちが持っている引き出しにかけたい。僕がこうしてほしいというものより、俳優たちが持ってくるものを大切にしています。監督としての仕事は調整ぐらいのもの。現場で極端に違うものを求めなければならないとしたら、キャスティングが間違っていると考えます」と話した。
永瀬さん他、素晴らしいキャスティングができた今作。「あまりに俳優が良すぎて、現実にあった悲しい思い出がよみがえってしまい、見ていられなくなったこともありました。少し時間をおかないと編集できませんでした」と明かす。
展示には、日比さんがニューヨークから俳優の友達に送った手紙も。「写真集を出す時、ある写真家に、撮った写真と気持ちがつながっている手紙だと言われたことを思い出します。僕は映画のタイトルも自分で書いています。今は、文字を書かない、(フィルムで)写真を撮らない人が多い。次世代の人たちに対してのチャレンジというか、何かを伝えられたらという気持ちで、書や写真、映画を見せています」と思いを語った。
写真展は9月5日まで。
映画はミッドランドスクエアシネマ2他で公開中。