ジェットコースターが東京都心にやって来た!~遊園地人気アトラクションの歩み~

ジェットコースターが東京都心にやって来た!~遊園地人気アトラクションの歩み~
「白鯨」提供:ナガシマリゾート

遊園地と言えばコレ!という人も多いことだろう。人気の遊具「ジェットコースター」。高速スピードで乱高下するマシンに、心からの絶叫を満喫する人も多いことだろう。そんなジェットコースターの歴史とは?

ジェットコースターの由来はいろいろ伝えられているが、次の2つがユニークである。まず16世紀ごろのロシア、氷で作った滑り台を木製のそりで滑り降りて遊んだことから始まったという説。もうひとつは、19世紀の米国、鉱山の廃坑で石炭を運ぶためのトロッコに乗って、炭坑内を走り回って遊んだという説。これには思わず人気映画『インディ・ジョーンズ』の場面を思い出してしまう。現在のように、遊園地の遊具として登場したのは、19世紀末、米ニューヨーク郊外にできた遊園地と伝えられる。10人乗りのコースター、長さはわずか140メートル弱で、時速も10キロだったそうだ。「ローラーコースター(roller coaster)」と名づけられ、人気の遊具になっていく。

「後楽園ゆうえんち開場1955年」提供:株式会社東京ドーム

そんな「ローラーコースター」が日本にも登場した。1955年(昭和30年)に東京の水道橋近くに新しい遊園地「後楽園ゆうえんち」がオープンすることになった。開業に合わせて何か新しいアトラクションはないだろうか?当時、日本の遊園地はほとんどが郊外にあって、この「後楽園ゆうえんち」のように都心に子どもたちの遊び場ができることは、とにかく大きな魅力だった。そこで思いついたのが、米国など海外で人気を集めていた「ローラーコースター」だった。乱高下するレールの上を貨車が猛スピードで走る。何より、レールが上下に立体化されているため、都心の狭く限られた土地でも、有効活用できることが魅力だった。

「後楽園ゆうえんち開場当時」提供:株式会社東京ドーム

こうして完成した日本版ローラーコースターは、全長550メートル、高さ15メートル、最高速度は時速50キロだった。米国のコースターはもっとスピードが出ていたが、当時まだ日本の人たちは、この新しい遊具に慣れていない。速さに驚いてしまい、驚きのあまり失神する人が出てはいけないと考えて、スピードや落差も控えめにした。また、こうしたコースターを建設する許可の基準もなかったことから、後楽園ゆうえんちでは、専門家にチェックと査定を依頼して、独自に安全面を徹底した上でコースターを整備した。そして、デビューに合わせて、日本独自の名前を付けた。それが「ジェットコースター」。ジェット機のように加速して空を飛び回る、そんな感覚を名前にした和製英語だった。4両編成、乗車料金は1回50円。大人も子供も、この新しい遊具に殺到した。戦争が終わって10年、家族でレジャーを楽しもうという空気が出始めた頃であり、東京都心に登場したジェットコースターは、日本の戦後復興のひとつの象徴でもあった。後楽園ゆうえんちがオープンした7月9日は、毎年「ジェットコースターの日」となった。

「嵐(ARASHI)」提供:ナガシマリゾート

日本で「ジェットコースター」と名づけられた乗り物は、スピードとスリルを追求しながら進化していく。360度回転式の「コークスクリュー」、頂上から垂直に急降下する「ウルトラツイスター」、そして上半身だけを固定してぶら下がる「インパーテッド」など、次々と魅力的なコースターが誕生した。三重県桑名市にあるナガシマスパーランドにも、世界に誇るコースターが沢山ある。その数は国内最多の12種類、米国に依頼して作られたものもある。「スチールドラゴン2000」は、全長2479メートル、世界で最も長いコースターである。最高速度は時速153キロ、乗車時間3分30秒を長く感じるか短く感じるかは乗る人次第だろう。ホワイトサイクロンの進化形「白鯨(はくげい)」は木と鋼鉄を組み合わせた真っ白なコースを走り抜ける。「嵐(ARASHI)」と名づけられたコースターは、座席が360度くるくると回転しながら急こう配に急加速と、予測できない動きが魅力である。いずれも魅力たっぷりの人気ジェットコースターだ。

「スチールドラゴン2000」提供:ナガシマリゾート

米国の遊園地で生まれた乗り物は、あくなきスピードとスリルを求めて、ニッポンの地でも目覚ましい成長を続けている。「ジェットコースターはじめて物語」のページでは、日本の文化の歩み、その確かな1ページが“スピードと絶叫に包まれながら”昇り降りしている。
          
【東西南北論説風(355)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

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