「ナゴヤドーム初の認定本塁打」特大弾連発!元中日・ブランコの思い出

「ナゴヤドーム初の認定本塁打」特大弾連発!元中日・ブランコの思い出

2009年2月28日。オープン戦の開幕戦。四番・一塁でスタメン出場した新外国人のトニ・ブランコは、第一打席で鋭いライナー性のヒットをレフト前に飛ばした。推定年俸2760万は、前年まで在籍したタイロン・ウッズ(推定6億)のおよそ20分の1。プロの世界とはいえ年俸額がこれほど違うドミニカンにポスト・ウッズの期待がかけられた。

ウッズに代わる四番として

落合監督が就任して6年目となるこの年は、チームにとって大きな転換点となるシーズンだった。08年オフ、FA権を行使してエース・川上憲伸が大リーグへ、中村紀洋が楽天へ移籍。在籍4年間で155本塁打を放ったウッズも退団した。投打の要が抜け、下位を予想する声も少なくなかった。

そんな中、ブランコはオープン戦で6本の本塁打を放ち、新生落合竜の四番を任された。開幕戦の第一打席で横浜・三浦大輔から挨拶代わりの一発をバックスクリーンへ。外国人選手の来日初打席初本塁打は、中日では1990年のベニー・ディステファーノ以来だった。4月は打率2割2分7厘、4本塁打と苦しんだが、5月に入ると調子を上げ、交流戦では11本塁打を放ち、一時は打率も3割に乗った。
最終的に全試合で四番に座り、打率2割7分5厘、39本塁打、110打点という成績を残し、本塁打王と打点王の二冠を獲得。チームも2位となり、ウッズの穴を補って余りある活躍だった。
打点王のタイトルはチームメイトの森野将彦と最後まで争った。共に108打点で並んでの最終戦、まず森野がタイムリーを放って109打点。続くブランコが2ランホームランを放って110打点とし、決着がついた。

特大アーチを連発

そのフルスイングから放たれる打球でファンを魅了した。軽々とスタンドへ運ぶように見えるウッズのホームランに対し、ブランコのそれはフルスイングから生み出される特大弾だった。
4月19日の巨人戦では、高橋尚成からナゴヤドームの5階席へ。5月7日の広島戦では、前田健太から放った大飛球が天井のスピーカーを直撃。グラウンドルールにより、ナゴヤドーム初の認定本塁打となった。
他球場でも、京セラドームでは5階席へ、東京ドームでは外野席の看板のさらに上まで飛ばし、横浜スタジアムでは照明塔の柱を直撃する場外弾を放った。
野球の華はホームラン、それを再認識させてくれるバッターだった。

連覇に貢献

口癖は「神様のおかげ」。活躍しても謙虚な姿勢を崩さない男だった。しかし、その謙虚さゆえか、事あるごとにライバルが出現し、チーム内競争にさらされていたように思える。

来日2年目の2010年は32本塁打、86打点。いずれの数字も前年より落ち、三振の数も2年連続リーグワーストだったものの、それでもナゴヤドームを本拠地にして2年連続30本塁打は立派な数字である。
ところが2010年オフ、ブランコの競争相手として、「パワーはブランコ以上」と言われたジョエル・グスマンを獲得。開幕スタメンには共に名を連ねたものの、打順はグスマンが五番、ブランコが六番。日本で実績のないグスマンの後塵を拝する格好となった。

この年は6月に故障で離脱したものの、8月末に復帰すると打ちまくった。勝負所でのここぞの一本を幾度も放ち、首位・ヤクルトを猛追するチームの原動力となった。
10月のヤクルトとの天王山4連戦では、第2戦から4戦まで3試合連続で先制打を放って勝利打点を記録。優勝を決めた10月18日の横浜戦では、3点ビハインドの6回に起死回生の同点3ラン。ドラゴンズファンなら一生忘れることのないシーンだ。
10月は打率3割4分、6本塁打で月間MVPを獲得。まさに頼れる四番。ブランコ抜きには、逆転優勝は成し得なかったであろう。

DeNAへ移籍

球団史上初の連覇を成し遂げたチームだったが、このシーズン限りで落合監督をはじめ首脳陣が退任。風向きが変わっていた。オフには楽天を戦力外となった山崎武司を獲得し、高木新監督は山崎とブランコを競わせる方針を打ち出した。ブランコはまたしても競争相手を送り込まれた。

迎えた2012年の開幕戦。3連覇を目指してスタートを切ったチームのスタメンに、ブランコの名前はなかった。オープン戦では山崎が4本塁打、ブランコは2本塁打。数字の上ではブランコの分が悪いが、それでも前年の逆転優勝への貢献は記憶に新しい。連覇の立役者に対して、いささか冷たい仕打ちだった。
この年のオフ、ブランコはチームを去った。エンジェルベルト・ソト、ホルヘ・ソーサと共にDeNAへ移籍。前代未聞の3人同時移籍だった。

2013年、中日は開幕戦で、DeNAのユニフォームを着たブランコに決勝打を浴び黒星スタート。最終的には12年ぶりのBクラスに沈み、チーム打率はリーグ最下位だった。
一方のブランコは、134試合に出場して首位打者と打点王の二冠を獲得。リーグ三振王だったブランコが首位打者を獲るとは…逃した魚は、あまりにも大きかった。

【CBCアナウンサー 榊原悠介
中日ドラゴンズ検定1級。日付からドラゴンズの過去の試合を割り出せる特技を持つ】

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