中日浮上のカギ、大島洋平の立ち位置。チームに求められる「真のリーダー像」

中日浮上のカギ、大島洋平の立ち位置。チームに求められる「真のリーダー像」

「正直、チーム内での立ち位置を変えました」

それは、どういう意味なのか。言葉を選んだはずの質問に対し、大島洋平外野手は、短く、深く、答えてくれた。

「荒木さんが引退されて、強かった頃のメンバーが、ほとんど居なくなりました。じゃあ、これからどうしていくべきなのか、ずっと考えるようになったんです」

かつて選手会長も務めた主力選手だが、円陣の中心で叫んでチームを引っ張り、明るく盛り上げるというタイプではない。彼はいつも冷静、どんな局面でも、ひょうひょうとしている。

「そうなんです。ファンにも、宮部さんにも、そう見えるんですよね。これまでは、自分のプレーに徹することが、結果、チームのためになるって思ってきました。でもこれからは、立ち位置を考えながら、やっていこうと決めました」

大島選手がチームに求められる立ち位置、相手チームが嫌がる立ち位置について。まずは、打順だ。

「ボクは、ほんとに何番でもいいんです。だって、打順って、初回のことだけですから。あとは、どこからチャンスを作れるか、分からない。攻撃の一番目なら出塁する。2番目なら繋ぐ、広げる。3番目ならランナーをホームへ返す。

よく、次の打者が打ちやすい状況に繋げとか言われることがありますが、ボクは、後ろを気にしません。もちろん、ゲームの流れというのは考えますが、次の状況は、次の打者が考えること。後ろのことまで考えるより、自分が打つことに集中した方がいい」

きっちり仕留める、自分のための打席

大島選手は昨年、印象深い1・2番だけでなく、シーズン後半戦54試合で、3番に定着した。本塁打と打点で自己最多を記録。データ的には、元々高いゴロ率に加え、引っ張りの打球傾向が顕著になり、長打率も上がった。

「チームバッティングとして強く引っ張るスイングをするのではなく、自分がきっちり仕留めて、ランナーをホームへ返すべきシチュエーションが増えているんだと思います。最多だった内野安打が減ったとしても、あくまで、自分のための打席です。
そう。自分のため。ただ、その姿って、若い選手に見られてるなあって感じます。最近特に。仕留め方を見られているという意識は、はっきりあります」

そんな彼を新任の打撃担当コーチである、『元近鉄・いてまえ打線』の象徴、村上隆行コーチは、こう期待する。

「大島は、チームの指針です。しっかり準備をして、一球で仕留めることができる。なにかと手を抜きがちな年齢なのに、一切ない。リードオフマンというよりも、新たな役割を任せられます」

と、彼がチームの進むべき方向性を担うというのだ。

求められる、真のリーダー像

また、CBC野球解説者で、かつてのドラゴンズの切り込み隊長、彦野利勝さんも、大島の新境地に賛成する。

「平田の1・2番は脅威だし、ビシエド・アルモンテの得点力は言うまでもない。そして、(高橋)周平が頼もしくなってきた。そうなると、その間に入る大島がカギになる。例えば3番なら、1・2番に近い役割の出塁でかき回すことができるし、チャンスでクリーンアップの役割もできる。1イニングで2点、3点と取るための最も重要な立ち位置。個の活躍を線にする真のリーダーですね」(彦野)

一方で、3番定着ならば、大島個人の盗塁の数は増えないかもしれない。チーム盗塁数において、大島の足での成績は大きい。

ただし、引退したばかりの工藤隆人外野守備走塁コーチは、彼の『走塁』にこそ、真のリーダー像を求める。

「一緒にプレーしてきたボクだからこそ、(大島)ヨウヘイに求めるものがあります。例えば先日のオープン戦で、二塁ランナーの彼が、センター前ヒットでホームに返ってきました。普通のランナーでも生還できる当たりでした。でも、彼は、大きなリードと早いスタートで楽々ホームに返ってきた。クロスプレーにすら、ならないほどの最高の走塁で。こういうのって、ベンチの若い子は見てるんです。言葉やキャラで引っ張るリーダー像なんて、ヨウヘイに求めない。走る姿で魅せてほしい。引退した荒木さんのように」(工藤コーチ)

与田ドラゴンズの船出にあたり、大島選手の立ち位置は明確だ。ファンも、ひょうひょうと、凄いことをやってのけるリーダーを観ているぞ。スタンドで、テレビで、ラジオで。燃えよ!ドラゴンズ!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週水曜午後6時)他、ドラゴンズ戦・ボクシング・ゴルフなどテレビ・ラジオのスポーツ中継担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。山本昌ノーヒットノーランや岩瀬の最多記録の実況に巡り合う強運。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。】

あなたにオススメ

RECOMMENDATION

エンタメ

ENTERTAINMENT

スポーツ

SPORTS

グルメ

GOURMET

生活

LIFE