中日の正捕手は誰だ?伊東コーチが示す頭ひとつ抜け出すための判断基準

中日の正捕手は誰だ?伊東コーチが示す頭ひとつ抜け出すための判断基準

正捕手がまだ見えない。

現在、1軍に帯同しているのは4人。去年、日本ハムからFA移籍した大野奨太、2016年に104試合に出場した杉山翔大、長打が魅力の木下拓哉、強肩が武器の加藤匠馬だ。

2軍には去年、チーム最多の92試合に出場した松井雅人、ベテランの武山真吾、左膝の怪我から復帰の桂依央利、ドラフト4位ルーキーの石橋康太、育成のアリエル・マルティネスがいる。

西武黄金時代に扇の要として活躍した伊東勤ヘッドコーチにバッテリー強化の期待がかかる。

ロッテ監督時代の伊東ヘッドコーチ

時計の針を6年前に戻す。伊東コーチはロッテの監督に就任した。当時の正捕手は里崎智也。しかし、故障で出遅れていた。

「里崎もピークは過ぎていて、彼だけに頼れる状態ではありませんでした。田村(龍弘)は高卒1年目。あとは金澤(岳)や江村(直也)。翌年に吉田(裕太)が入団しましたが、突出している選手はいませんでした。もちろん、理想は固定。しかし、腹をくくったんです。誰かが育つまでは30試合に出られるキャッチャーを3人作って乗り切ろうと」

2013年、ロッテの捕手陣は複数人が起用された。江村64試合、金澤56試合、里崎48試合、川本(良平)47試合、田村7試合。苦労のあとが分かる。

2014年は田村と吉田が50試合。江村44試合、金澤42試合、川本21試合、里崎17試合。やり繰りは続いた。

「結局、ここの強い田村が生き残りました」

伊東コーチは右手の親指で胸を指した。

「メンタルです。捕手に一番大切なもの。インコースを突くだけが強気ではありません。要は自分の配球に自信を持つことです。そのために根拠を持つ。そのために準備と観察をする。時にはピッチャーが首を振っても、貫けばいい。それで抑えたら、自信もつくし、信頼も得られます」

逆に打たれれば、投手に聞けば良いと言う。

「対話です。試合前も試合中も試合後もどんどん話さないと。コミュニケーション能力も重要です」

そして、人差し指で頭をポンポン。

「頭の良さです。これは『トータルで考えられる力』という意味。打順は1番から9番まで。特にセ・リーグは投手が打席に入ります。いかに3つのアウトを奪うか、いかにゼロに近付けるかを考える力。全て抑えられると思ったら、大間違い。さらに、1回から9回までをどうマネジメントして行くかも大事。点差を意識して、大胆に行く所と慎重に行く所を見極めて欲しい」

心、口、頭。これらが競争を勝ち抜くための3要素のようだ。

待っていた「極上のレッスン」

ロッテの場合、それらを満たしたのが田村だった。そんな彼には次のステップとして、極上のレッスンが待っていた。なんと監督自らが全てのサインを出し、リードの手本を示したのだ。

「ピッチャーに返球した後、ちらっとベンチを見させて、そこでサインを出すんです。困ったら、アウトロー。これでは駄目。そこに中々投げられないから困るわけだし、同じパターンはバッターに読まれます」

当時の落合英二投手コーチ(現・韓国サムスン投手コーチ)は横でその配球にうなった。

「伊東さんは高めと遅いボールをうまく使うんです。そして、勝負勘がすごい。『え!ここでそのボール?』という場面が結構あったんですが、見事に抑えました。その試合、完封でしたよ」

果たして、中日で頭ひとつ抜け出すのは誰か。

「評価の対象は完全に守備。打撃はほとんど関係ありません。これからは長いイニングでマスクを被らせます。どれだけ失点を防ぐか。盗塁を許さないか。声やジェスチャーを含めて、いかにピッチャーをリードしていくか。とにかく全ての動きを見ていきます」

実績を考慮すると、松井雅が1軍にいても良いはず。

「松井の力は分かっています。当然、今後は入れ替えもあり得ます。軸となる選手が出てくれば、開幕後は捕手2人制が理想。そうでなければ、3人制になりそうです」

三寒四温が続く。心と口と頭のテストも続く。きっと正捕手の輪郭は見えてくる。桜のつぼみが膨らむ頃に。

【CBCアナウンサー若狭敬一
CBCテレビ「サンデードラゴンズ(毎週日曜午後0時54分放送)」、CBCテレビ「スポーツLIVE High FIVE!!(毎週日曜午後1時24分放送)」、CBCラジオ「若狭敬一のスポ音(毎週土曜午後0時20分放送)」、CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週金曜午後6時放送)ほか、テレビやラジオのスポーツ中継などを担当】

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