JR東海は22日、リニア中央新幹線の静岡工区について、地元住民への説明会を来月29日から開くと発表しました。先月、静岡県の専門部会がJR東海の対策案を了承しており、10年続いた議論は節目を迎え、年内着工の公算が大きくなっています。4月23日放送の『CBCラジオ#プラス!』では、リニア中央新幹線のこれまでの経緯と今後の課題について、ジャーナリストの北辻利寿さんが解説しました。来年開業のはずだったリニア中央新幹線の出発点は、1973年(昭和48年)にさかのぼります。東京と大阪を結ぶ基本計画路線として、国が決定しました。大地震などが起きたときの東海道新幹線の代替路線としても注目されています。売りは、とにかく速さです。最高時速500キロで、東京と名古屋の間を最速40分、東京と大阪の間を最速67分で結びます。まず開通するのは東京名古屋間で、本来は2027年、つまり来年の開業予定でした。工事自体は2014年から東京品川と名古屋の間で始まっています。全長286キロメートルのうち、86パーセントがトンネル工事。地下を掘り進める形で進められています。最難関は南アルプストンネル元々、当時の静岡県知事だった川勝平太さんが工事を認めないと反対を表明していたため、なかなか進みませんでした。この工事で最も難関とされるのが、東から山梨県、静岡県、長野県の地下を貫く、通称・南アルプストンネルです。全長25キロメートルのうち、3割ほどを占める静岡工区には、大井川の源流があります。地下を掘ることによって、大井川の水の量、流量が減るという懸念が広がりました。そのため当時の川勝知事は、湧き水のすべてを大井川に戻す対策を行なうよう、JR東海に求めたのです。JR東海は静岡県の専門部会で、トンネルの湧き水をすべて戻せば、中流や下流の水の量は維持されると説明しました。しかし、なかなか静岡県の理解は得られません。そこで2020年からは国も加わり、有識者会議が設置されました。それでも議論は長引き、JR東海は当初予定していた2027年の開業を断念するに至ります。大井川の水をどう戻すその後、工事に反対していた前の知事から、リニア推進に理解を示す新しいリーダーに変わり、先月には静岡県とJR東海の協議がついに決着。静岡県が着工を認める条件としていた28の項目について、JR東海から示された対策案をすべて了承しました。この28項目は、水資源、生態系、トンネル工事で発生する土の扱いという、大きく3つの分野に分かれています。3つの分野のうち、最も注目されたのが大井川の水の問題でした。まず、JR東海が適切な措置を講じて、工事中の一定期間を除いてトンネルの湧き水の全量を、導水路のトンネルやポンプによって戻すことが決まりました。静岡県から県外に流れ出てしまう湧き水については、大井川に関係するダムの取水量を抑えることで同じ量を還元することになりました。さらに、もしそれでも影響があった場合は、公共工事の保証期間である30年を超えても対応するとしています。以上の3つを主な約束として、水の問題については静岡県が了承しました。自然環境と掘削土28項目のうち、17項目が生態系、自然環境に関わるものです。着工前に生き物の生息調査を行ない、適切な対応を取ること。さらに地下水の量や水質、湧き水の量などの観測を続けることも約束されました。万が一、環境に損失があった場合は、JR東海が工事前と同等以上に自然環境の保全活動を行なうという合意も盛り込まれています。3つ目の分野は、トンネル工事で発生する土の扱いです。掘ることで膨大な量になるその土の置き場について、立地などを綿密な計画の上で決めていきます。さらに土石流や地滑りなど周辺環境への対策もきちんと行ない、専門部会で合意を得て、静岡県がGOサインを出しました。まだ長い道のりJR東海による地元住民の説明会は、来月から6月にかけて11の市と町で行なわれる予定です。また、静岡県の自然環境保全条例に基づいて、協定締結の手続きを進めていくということで、着工に向けた動きは加速しています。静岡県の幹部も、うまく進めば年内の着工もあると発言しているそうです。ただ、実際の工事は南アルプストンネル区間が最難関といわれています。深いところでは、地表から1400メートルの下を掘ることになる大変な工事です。着工したとしても少なくとも10年はかかる見込みで、リニア中央新幹線の開業は早くても2036年以降となる見通しです。さらに、すでに着工している区間でも湧き水や地盤沈下の問題が出てきています。昨今の物価高で材料費や人件費も高騰しており、工事費用が今後膨れ上がっていく可能性も指摘されています。越えるか、大井川今後は、こうした課題に対して、話し合いを通じてひとつずつクリアしていくことが重要です。最後に、北辻さんは「箱根馬子唄」の一節「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」を引き合いに出しました。北辻「中央リニアの話のときには思い出すんですけど、ようやくこの大井川を越すことができます。でも、まだまだこの旅には紆余曲折がありそうだなということで、その先の課題もあるかなというふうに思っています」(minto)