2026年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)1次ラウンド、プールDが行なわれたマイアミのローンデポ・パークは、連日異様な熱気に包まれました。注目は「銀河系軍団」と称されるドミニカ共和国代表です。3月12日放送の『CBCラジオ#プラス!』では、元NHK解説委員で政治・外交ジャーナリストの増田剛さんが、野球大国ドミニカ共和国の地理や文化、政治経済について解説しました。合言葉は「プラタノパワー」今大会、チームを率いるのはレジェンドのアルバート・プホルス監督です。打線にはフアン・ソトやブラディミール・ゲレーロ・ジュニアといったメジャーの看板選手が並び、侍ジャパンが連覇を狙う上で避けて通れない世界最強の壁といわれています。彼らが掲げる合言葉は「プラタノパワー」。ドミニカ人のソウルフードである調理用のバナナ「プラタノ」に象徴される、国民の誇りと底力を意味する言葉です。カリブ海に浮かぶ島国ドミニカ共和国は、カリブ海でキューバ島に次いで2番目に大きいイスパニョーラ島の東側に位置する、太陽と海の国です。島の東側3分の2をドミニカ共和国が、西側をハイチ共和国が占めています。面積は九州に高知県を合わせた程度です。島の中央には「カリブのアルプス」と呼ばれる3,000メートル級の山々が連なり、沿岸部には世界屈指のホワイトビーチが広がっています。この多様な地形こそが、観光業の大きな強みです。同じ島にありながら、隣国のハイチでは野球はそれほど盛んではありません。音楽とダンスが息づく文化人口はおよそ1,100万人。かつての宗主国スペインの文化にアフリカ系や先住民の伝統が混ざり合い、多様なルーツが融合した情熱的で陽気な文化が息づく国です。公用語はスペイン語で、国民の多くがカトリックを信仰しています。野球と並び、彼らの生活に欠かせないのが音楽とダンスです。街中にはアップテンポな「メレンゲ」や哀愁漂う「バチャータ」といった独特の音楽が流れ、老若男女を問わず軽やかに腰を振って踊る姿が見られます。このリズム感や身体能力の高さが、野球のプレースタイルにも表れているといわれています。米国との強固な関係中南米諸国の中では比較的安定した民主主義を維持していて、国際舞台での存在感を強めています。現在はルイス・アビナデル大統領が政権を担い、アメリカとの関係は非常に強固です。今月初め、フロリダで開催された「シールド・オブ・ジ・アメリカズ(米州の盾)」と呼ばれる右派系中南米首脳の会議にアビナデル大統領が参加し、麻薬対策や地域の警備、移民問題などでトランプ政権との協調を深めました。一方、隣国ハイチの治安悪化に伴う不法移民の流入が、国内の最大の政治課題です。経済成長の光と影ドミニカ共和国は、近年の中南米で最も高い経済成長率を維持している国のひとつ。世界中から観光客が訪れるリゾート地プンタ・カナで外貨を稼ぎ、鉱業では金やニッケルが産出され、農業では砂糖やコーヒー、カカオの輸出も活発に行なわれています。ただし、国内の二極化も課題です。首都サントドミンゴは高層ビルが建ち並ぶ都会的な街ですが、農村部や都市近郊の貧困地区では生活基盤が脆弱な層も多く、貧富の差が社会の歪みを生んでいます。増田「多くのこどもたちにとって、野球で成功しアメリカに渡ることが、貧しい家族全員を救う唯一の希望という側面もあるんですよね」事実上の国技、そして輸出資源ドミニカ共和国にとって、野球は単なるスポーツを超えた国家のアイデンティティです。増田「事実上の国技で、ある種、『最大の輸出資源』といっても過言じゃない」国内にはMLB(アメリカ大リーグ)の30球団すべてがアカデミー(野球学校)を設置しており、10代前半から有望な選手に英才教育を施しています。その中から筋のよい人材が大リーグに抜擢される仕組みです。1995年以来、アメリカ国外出身のメジャーリーガーの数でドミニカ共和国は不動の1位を誇っています。WBCの舞台で「銀河系軍団」が輝き続ける背景には、こうした国の歩みがあるのです。(minto)