食糧問題・地球温暖化問題の切り札?サボテンの不思議な生態
『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)の1コーナー「ズバリこの人に聞きたい」では、パーソナリティの北野誠が話題の本の著者などにインタビューしています。11月29日の放送では、『サボテンは世界をつくり出す 「緑の哲学者」の知られざる生態』(朝日新書)の著者で中部大学応用生物学部准教授、堀部貴紀先生が出演。日本でただひとりのサボテン学者である堀部先生が、サボテンの驚異的な仕組みを解き明かし、実は食糧問題や温暖化問題などを解決する救世主になりうる可能性について、解説しました。
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堀部先生がサボテンを研究しようと思ったきっかけは、愛知県春日井市で行なわれている「春日井サボテンフェア」。
そこで食べられるサボテンを知り、食べてみたところ結構おいしいと感じ、環境への耐性が強いサボテンが「これからの時代に必ず評価される」と思ったそうです。
食用のとなるイメージがないサボテンですが、ステーキもあるそうです。
堀部先生が何度か足を運んでいるメキシコでは、食用サボテンがスーパーでは売られており、味はオクラやメカブに近いとか。
2,000種類もあるサボテンの中でも、特に食用で使われるのはウチワサボテンという品種。
成長が早く食べやすいため食用に向いていて、栄養価が高く、ブラジルでは家畜のエサにも使われるそうです。
サボテンのすごい役割
サボテンといえば多数でのトゲ。このトゲにはちゃんと役割があるそうです。
まず動物に食べられるのを防ぐため。
さらにトゲが小さな影をいくつも作ることで強い光から身を守ったり、一部のサボテンはトゲを使って空気中の水分を集めたりしています。
例えばチリのアタカマ砂漠に生息するサボテンは、トゲの表面が水分を吸着しやすい構造になっていて、空気中の霧や湿気を吸着させ結露しています。
また西部劇などで見かける巨大な柱のようなサボテンは、アメリカのアリゾナ砂漠にあるサワロサボテンというもの。
鳥の巣に利用されたり、地下にはリスが巣穴を掘って家にしたりと、生態系に大きな影響を与えています。
食糧問題の解決に役立つかも
そのようなサボテンが食糧危機の救世主になるかもしれないという堀部先生。
2017年に国連食糧農業機関(FAO)は「サボテンは世界の食糧危機を救う作物になりうる」という声明を出しました。
その理由はサボテンが世界で牛などの家畜飼料として使われているため。
牛肉を1kg作るにはだいたい11kgのトウモロコシが必要ですが、サボテンはトウモロコシが育たないような乾燥地でも栽培ができ、牛の飼料としてサボテンが使えれば、その分人間が食べられるトウモロコシの量が増えるメリットがあるのです。
また、直接私たちもサボテンを食べるようになればさらに食糧問題の解決が進みそうです。ただ食料としてのサボテンはまだ認知が進んでいません。
そこで現在、堀部先生は農林水産省の支援を受けながら、サボテンを野菜として活用する取り組みを行なっています。
調理の最大のネックは
サボテンを調理するにあたり、ネックはやはりトゲ。
ウチワサボテンにも少しトゲがありますが、メキシコでは包丁で取るのが一般的だそうです。
レストランチェーン店からは「トゲを取った状態で納品してほしい」という要望があるそうで、現在トゲを取るための機械が作れないか、民間企業と検討中という堀部先生。
近い将来、サボテンがレストランに並ぶ日も遠くないかもしれません。
(岡本)
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