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中国でアステラス社員に懲役3年6月。不透明な司法制度に日本企業困惑

中国でアステラス社員に懲役3年6月。不透明な司法制度に日本企業困惑

中国で拘束され、スパイ罪で起訴されたアステラス製薬の60代の日本人男性社員に対し、中国の裁判所は16日、懲役3年6月の実刑判決を言い渡しました。7月17日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、元NHK解説委員で政治外交ジャーナリストの増田剛さんが、この判決の問題点と日本企業への影響について詳しく解説しました。

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15分で終わった不透明な裁判

今回の裁判は約15分で終了。裁判所側はスパイ活動の内容に触れたものの、犯罪の構成要件や故意かどうかといった具体的な説明はありませんでした。

3年6月という刑期は過去の邦人拘束事例と比較すると短いものの、罪状が詳しく説明されていない点で中国の不透明な司法制度が浮き彫りになりました。

日本商工会議所の小林健会頭は記者会見で、「どういった行為が法律に触れたのか明確ではなく、懲罰だけが出た。安心してビジネスができない状況が続いている」と述べ、日本企業の不安を代弁しました。

今回の公判を直接傍聴した金杉憲治駐中国大使は、「我々が透明だと考えられるレベルではなかった」と記者団に語っています。

日本の大使が中国の公判を傍聴するのは初めてのことで、日本政府がこの判決の行方を注視していたことがうかがえます。

曖昧な「反スパイ法」の線引き

中国の「反スパイ法」では、国家の安全や利益に関わる文書やデータの買収、窃取、外国への違法提供などをスパイ行為と定めていますが、具体的な線引きは非常に曖昧です。

さらに2024年7月からは、当局が緊急の場合、現場で対象者の携帯電話やパソコンなどの電子機器を調べることができる規定も始まっています。

日本人ビジネスマンが容疑をかけられた場合、会社のパソコンやスマートフォンの情報がすべて調べられる可能性があります。

増田さんは「記者であれビジネスマンであれ、ある程度情報収集をするのは当たり前」と語ります。

ジャーナリストであれば取材自体が情報収集であり、ビジネスマンも中国でビジネスを展開するにあたって中国政府の施策を調べるのは当然だと指摘し、「その行為がスパイ行為と認定されてしまうと、安心してビジネスもジャーナリストとしての活動もできない」と懸念を示しました。

企業の対中ビジネスに影響も

今回の判決は、中国に拠点を持つ日本企業にとっては非常に深刻な問題といえます。ルールの境界線が見えない状況では、企業も「気をつけようがない」として、社員を安心して派遣できません。

外務省は中国側に対し、アステラス社員を含む拘束されている日本人5人の早期釈放と司法プロセスの透明性向上を改めて申し入れました。

一方、中国外務省の毛寧報道局長は記者会見で「中国は法治国家だ。司法機関は法に基づき厳格に事件を処理している」と主張しています。

中国は日本企業にとって簡単に手放すことのできない巨大市場ですが、決定的な証拠も示されないまま3年6月の実刑判決が下されたことで、企業の懸念は深まっている状況です。

広がる監視社会化

この問題は外国人だけが対象ではなく、中国人に対してもスパイ行為だと摘発するケースが出ており、中国の監視社会化が進んでいるのが現状です。

こうした状況が続けば、企業の中国派遣も家族を伴っての赴任も躊躇されるようになり、日中関係の改善にも大きな影響を与えかねません。

日本政府には司法の透明化を強く要求し、日本企業と日本人が安心して中国でビジネスや取材活動ができる環境整備を急ぐことが求められています。
(minto)
 

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