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男性育休取得率100%はどう実現した?人事部が変えた“職場の空気”

男性育休取得率100%はどう実現した?人事部が変えた“職場の空気”
CBCテレビ me:tone編集部 サンゲツ提供写真:こども参観日の様子

名古屋市の「令和7年度子育て支援企業」で優秀賞を受賞した「株式会社サンゲツ」(名古屋市西区・以下、サンゲツ)。前半では、第2子の誕生にあわせて約4か月間の育休を取得した中部支社営業課の加藤友章(かとう・ともあき)さんの話を紹介しました。

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【画像一覧】制度づくりを支える人事部の取り組みや社内イベントの様子はこちら

後半では、その育休制度を作る側でもある人事部の小川果林(おがわ・かりん)さんに話を聞きます。

サンゲツの人事部は、男性育休の推進や復帰支援の仕組みづくりなど、働きやすい制度づくりに取り組んできました。小川さん自身も2回の育休を経験し、現在は時短勤務と在宅勤務を組み合わせながら働いています。制度をつくる側であり、制度を使う側でもある立場から、誰もが働き続けやすい職場づくりについて語っていただきました。

男性育休は、自然に広がったわけではなかった

サンゲツでは、法令に基づく育児休業制度に加えて、独自の制度も整えています。
たとえば、育休の最後の5日間を有給扱いにする制度もその一つです。これは、給与が減ることへの不安を少しでもやわらげるための工夫です。また、復職後にはベビーシッターや病児保育の費用を実質自己負担ほぼゼロで利用できるようにするなど、働き続けるための支援も広げてきました。

me:tone編集部:「制度を整えたことで、男性育休は自然に広がったのでしょうか?」

小川さん:「いいえ、なかなか広まりませんでした。制度はあっても、業務への責任感や収入が減ることへの不安などから取得しない人が多かったですね」

CBCテレビ me:tone編集部 サンゲツ営業課・加藤友章さん(写真左)と人事部・小川果林さん(写真右)

そこで人事部は2023年に「2週間以上の育休取得率100%」を目標に掲げ、各部署の窓口担当者と連携しながら、一人ひとりを個別にフォローする形で男性育休の取得を推進してきました。

小川さん:「最初はかなり反発もありました。そのため、制度の内容や育休を取得するメリットなどを個別に細かく説明する取り組みをしました」

粘り強いフォローの末、2023年度・2024年度は2週間以上の男性育休取得率100%を達成しました。2025年度も同様の結果となる見込みだといいます。
今では社内に「男性も育休制度を使うことが当たり前」という空気が少しずつ根づいてきており、手応えを感じていると小川さんは話します。

小川さん自身も2回の育休を経験しています。現在は時短勤務と在宅勤務を組み合わせながら、その日の状況に応じて働き方を調整しています。

小川さん:「家が少し遠いので、出社の日は短めに、在宅の日は少し長めに働くようにしています。自分の都合に合わせて調整できるのは、本当にありがたいです」

仕事を続けられたのは、周囲の一言があったから

制度があることと、安心して制度を使えることは別の話です。小川さんは1人目の育休から復帰した当時を振り返りながら、そのことを実感を込めて語ります。

小川さん:「1人目のときは、子育てがとにかく不安でしたし、孤独も感じていました。平日は一緒に悩んでくれる人が近くにいません。何もわからない自分が、この子をちゃんと育てられるのだろうかと思い悩んでいた時期もあります」

CBCテレビ me:tone編集部 サンゲツ人事部・小川果林さん

育休から復帰しても、子育ては続きます。子どもの発熱で早退しなければならないとき、肩身の狭さを感じることもありました。

そんなときに一番救われたと感じたのは、制度そのものではなく、周囲の何気ない一言だったといいます。

小川さん:「『早く帰って。仕事のことは気にしなくていいから』と声をかけてくれて。それだけで気持ちが軽くなりました。休んでも仕事は減らないので、あとから自分でどうにかするしかないんですけど、気持ちの面ではものすごく助けてもらいました」

小川さんが復帰後に感じた変化がもう一つあります。コロナ禍を経て、在宅勤務やフレックス勤務が、育児中の社員だけでなく全社員に広がったことです。

小川さん:「かつては育児や介護をしている人だけが使える制度だったので、どうしても『自分だけ申し訳ない』という気持ちがありました。今はほとんどの人が使える制度となり、子どもの有無に関係なく、自分の都合で在宅に切り替えることも日常的にあります。自分だけが特別に配慮してもらっている感覚は、だいぶ薄れてきました」

こうした「制度を使ってもいい社風」を育てるために、サンゲツでは顔が見える関係づくりにも取り組んでいます。

CBCテレビ me:tone編集部 サンゲツ提供写真:育休中社員と先輩社員の座談会の様子

たとえば、育休から復帰する直前に、育休中の社員が集まって先輩社員と話す座談会もその一つです。

「仕事に復帰したら、晩ごはんはどうしていますか?」
「作り置きはしていますか?」

など、リアルな疑問や悩みが飛び交います。子連れで集まり、等身大の話を交わせるこの会は、仕事復帰への不安をやわらげたり、育休中の人と職場をつなぎ直したりする場にもなっているそうです。

また、社員が家族を職場に招く「ファミリーデー」や「こども参観日」も実施されています。同僚が子どもの顔を知るきっかけになることで、その後も「お子さんお元気ですか」といった声がけが生まれやすくなると、小川さんは話します。

CBCテレビ me:tone編集部 サンゲツ提供写真:ファミリーデーの様子
CBCテレビ me:tone編集部 サンゲツ提供写真:こども参観日の様子

「女性活躍」を、女性だけに背負わせないために

サンゲツでは、女性管理職比率目標を掲げ、達成に向けてさまざまな取り組みを進めています。

me:tone編集部:「女性活躍推進を進めるうえで、必要なことは何だと思いますか?」

小川さん:「『女性のせい』にしないことだと思います。」

女性管理職が少ない現状を、「女性は管理職になりたがらないから仕方ない」で終わらせてはいけないと、小川さんは力を込めます。なりたがらないのではなく、「自分に管理職は務まらない」と思い込んでいる可能性があるからです。

もしそうであれば、なぜ自信を持てないのか、どこに不安を感じているのかという理由を掘り下げなければ、何も変わりません。挑戦しにくい環境や構造そのものを見直すことが大切です。

小川さん:「育児や介護を抱える人だけに対応するのではなく、誰もが働き続けやすい環境をつくりたいと考えています。そこを目指さないと、結局は誰かが我慢して成り立つ職場のままになってしまいますから」

ここで加藤さんが、話を繋ぎました。

加藤さん:「女性がキャリアを諦めることになる背景には、男性のサポートが足りないことも大きいと思っています。育休を取って初めて、パートナーの立場に立てるようになったと感じました。まずは、お互いの大変さを知ることが大切なのではないでしょうか」

制度をつくる側にいながら、自分自身も手探りでキャリアを積んできた小川さんには、キャリアを諦めかけている人に伝えたい言葉があります。

小川さん:「私自身も、最初から今の立場で仕事をすると思っていたわけではありません。できるかわからないけれど、ひとまずやってみよう。だめだったら、そのときに考えればいい。そういう気持ちで一歩ずつ進んできました。管理職の女性に話を聞くと、みんな『自分がなるとは思わなかった』って言うんですよね。自信にあふれた特別な人ばかりではないんです」

実際に育休を取り、妻の大変さを知った加藤さん。そして、自身の育休経験を、制度づくりに活かしてきた小川さん。2人が大切にしていたのは「相手の立場に立とうとする想像力」でした。

まずやってみること、そして経験を言葉にして周囲に伝えること。その小さな行動の積み重ねが、誰かの「働き続けたい」を支える力になっていくのかもしれません。

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