中日・松坂大輔の脇腹にできたアザの秘密。ここに担当コーチは復活を確信した
「春先、ケアの最中、大輔の裸を見た時、左の脇腹に紫色のアザを見かけたんです」
長年、中日ドラゴンズ選手のフィジカル面を担う勝崎チーフコンディショニングコーチは、松坂フィーバーに沸いた一年を振り返り、こう切り出してくれました。
勝崎コーチにとって、初めて生で松坂投手を見て衝撃を受けたのは、1999年4月、プロデビューの東京ドーム。あの片岡選手が体勢を崩すほどの空振りを喫した衝撃シーンをファイターズの一塁側ベンチから目の当たりにしていました。
あのシーンから19年、ライオンズ、メジャーリーグ、WBCなどでの輝きと、ホークスでの苦悩を経て、今年1月のドラゴンズでの投球披露。勝崎コーチは、彼の復活自体は大前提で、昔と今の違うところはどこなのか、一緒になって戻すのか、新たな形を求めるのか、観察と対話から二人の関係は始まりました。
右肩ではなく足の使い方に注目
勝崎コーチは、球界関係者が少なからず懐疑的だった右肩の具合ではなく、投球時の足の使い方に着目していました。
「大輔の足の運びが、変わっている。メジャー時代後半とは違い、ライオンズ時代のそれだ。つまり、右足が地面に接している時間が長い」
これは、下半身から上半身へという動きができ、下から上への馬力が伝えられているという現れなのだそうです。
勝崎コーチは、それができる根拠も見つけていました。
「大輔は、ランニングのリズム、バランスが凄くイイ。ちょっと量が少なめな時もあるけれど(笑)。長年ドラゴンズを見てきて、山本昌に憲伸、岩瀬に吉見、浅尾。みんな、ずっと走っていられる無駄のない美しい走り方なんですよ」
そして、勝崎コーチにとって自信が確信に変わったのが、左脇腹にできた紫色のアザ。
脇腹にできたアザの秘密
「大輔本人に聞くと、『投球時、右肘が自分の体に巻き付いて当たり、何度も擦れて色が変わってきました』って笑っているんです」
言うまでもなく、脇腹にぶつかるほど腕が振れている証。
勝崎コーチが、チームスタッフと共に気を配ったのは、脇腹だけではありません。
移籍後初勝利の翌先発となった5月の東京ドーム、足が攣り降板というアクシデントがありました。あれも、ここ数年、先発ローテーションでやってきていなかったことからの回復能力不足だけをケアしました。
その復帰後、勝利を重ねて迎えた6月の所沢、古巣凱旋で超満員の中、試合開始7分前に予告先発回避の場内アナウンス。あの背筋痛のアクシデントも、
「往年の体の使い方が戻ってきたからこそ、疲れやすくて鍛えにくい背筋に負荷がかかりました。体の前側の馬力が強い証拠。あれからは、胸筋を開く運動を増やしています」
と、更なる改善。むしろ、より逞しく。
そうなると、見据えるは来るべきシーズン。勝崎コーチは、肩へのダメージだけを切り取って分析するのではなく、肩の動きを投球全体の通過点と捉え、肩への負担を軽くできるよう投手コーチと見つけることが使命、と意気込みます。
「大輔自身が、怪物ぶりを自ら呼び起こしたからね。来年はもっと凄いですよ。
ボクのこれからの仕事は、それをウチの若手投手に伝えること。若手は大輔のファンになってちゃいけない。もちろん彼らも、そのつもりはないと思うけど」
そのフィジカルの準備ができてこそ、ピンチをピンチに思わせない『オーラ』や、満塁押し出し四球で1失点でも、次の打者に立ち向かい抑える『気』が生まれるのかもしれません。松坂投手とドラゴンズの新たな時代が楽しみです。燃えよドラゴンズ。