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ドラゴンズ柳裕也 マウンドから後退りしてまでも投げきりたかった理由

ドラゴンズ柳裕也 マウンドから後退りしてまでも投げきりたかった理由

「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム

今週のサンドラは、ようやく調子の上がってきたドラゴンズの核となる先発投手右のエース柳裕也投手の単独インタビューを放送、山田久志氏の先発投手陣への見立てを交えて紹介する。

監督の気持ちを安定させる最高のクスリは?

 先発陣は、8/6まで4.04だった防御率を、8/7~8/15までで2.36と失点を減らしてきた。先発が安定することでチームに与える1番の影響は監督が作戦を立てやすいこと。それによって監督も安定すると山田久志氏の弁。山田氏の監督経験からも説得力のある意見。怪我のリスクケアを念頭においた開幕直後に比べて各選手のコンディションも把握出来てきたであろうし、投手交代のタイミングもフレキシブルに対応できているように感じる。

柳裕也 開幕から離脱までの心境

 柳裕也投手は昨シーズンプロ3年目にして初めての規定投球回数を達成し170と2/3イニングを投げ、11勝を挙げた。今シーズンも開幕が延期になり調整が難しくなる中、開幕から3試合で防御率1.80と好成績をおさめていた。開幕から勝ち星がつかずにもがいていた大野雄大と対照的にチームを盛り立てていくような存在となっていた。柳本人も「去年よりプレッシャーを感じながらやっている」と自負するとおり、数字で見ても周りの目から見ても頼もしい存在に映っていた。しかし7月7日の登板で歯車は狂い出した。柳は当日を振り返って、4回ぐらいからお腹の周りに違和感があったという。ただ投球自体はできたため7回を1失点で投げきり試合を終えた。その後病院で受けた診断結果は『右脇腹の怪我』。もちろん一軍登録は抹消となった当時の心境を柳はこう語る。

「試合に出ないとプロ野球選手って意味がないと思うんで。怪我をするのも実力だと思うので自分と向き合っていましたね。自分の居場所は約束されている訳ではないのでもどかしさはありました。」

そんな苦しい状況を支えとなったのは、去年入籍した妻の存在だった。柳ははにかみながらそのエピソードを話す。

「怪我して奥さんが筋肉が早く良くなるような料理を調べて作ってくれたので早く治りました。(早く治るメニューとはどんなメニュー?)まぁ、まぁ、それはまぁなんでもいいっすよ(笑)」

精神的に厳しい時期だったに違いないが、照れながらも笑顔を見せ受け答えをする柳を見ると苦境に立たされても一緒になって悩んでサポートしてくれる存在がいる事の大きさを感じる。それも手伝ってか8/5には1カ月足らずで復帰登板を果たしたのだった。

復帰登板そしてどうしても降りたくなかったマウンド

復帰登板は、2回途中で3失点ノックアウト。味方のエラーも重なり実力の及ばぬところで相手にしてやられた部分ではあった。だが、柳にかけられた期待はそういった試合でも試合を作っていくようなピッチングであった。そして迎えた復帰後2試合目の登板。『まっすぐでしっかり押して、強気で行こうと思っていた。』という言葉通りの力強いピッチングでカープ打線をねじ伏せ7回を無失点で抑え、4点の援護点も大きな安心感を与えていた。完封が頭によぎる8回、ヒットをつながれ1点返されるもなんとか2アウトまで漕ぎ着けた柳だったが、ランナー2塁の状態で島内颯太郎投手から板倉将吾へと代打が告げられる。阿波野ピッチングコーチがマウンドへ向かうと、交代を告げられることを悟った柳はジリジリとセカンド方向へと後ずさりしていった。

「本当に代わりたくないと思ったんで、来ないでくれというふうに思いました。代わりたくないなと思った結果セカンド方向に歩いてましたね(笑)」

この試合で柳は結果を残すとともに、先輩の姿をみて新しい責任感が芽生えた。ヒーローインタビューでもそれは表れた。

「チームで大野さんが2連続完投し、その姿見ていますし今日最後まで投げたいと思っていたんですけどいけなかったので、最後まで行けるように練習したいなと思います。」

開幕当初は勝ち星がつかない苦しい状況だった大野も、ようやく歯車が噛み合って、8/16時点でさらに連続完投勝利を記録した。これでまた柳の気持ちに新しい燃料がくべられただろう。柳は真剣な面持ちで意気込みを語る。

「1イニングでも1球でも長い間マウンドにいてチームを勝たせるのが自分の役割だと思っているので、そこにはこだわっていきたい。」

状態も上がって大野投手と左右のエースを目指すピッチャーとして、切磋琢磨しあえる関係が築かれつつある。その言葉に違わぬ活躍が見られることを確信して応援していきたい。

山田久志氏は今年の柳に期待することを『沢村賞を獲得できる投手を目指せ!』と掲げ、理由を話す。

「故障はあったが開幕が遅れた割にはしっかり調整できているように見えてたねえ。安定していたし、ボールの走りもよく見えていた。(沢村賞は)ドラゴンズは川上憲伸以来出てない。一年間働いたら良い成績を残せると思うのよ。」

柳の母校である明治大学出身のOBに獲得者は集中していて、杉下茂、星野仙一、川上憲伸と名だたる投手ばかりだ。現在の良きライバル関係にある大野とともに、過去の名投手にも負けない気持ちを持って挑むことでまた新しい魂を燃やす柳裕也が見られることが楽しみだ。

まだまだ終わらない暑い夏を、柳が更に熱く焚き付けてくれるだろう。

澤村桃

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