「とにかく1番になりたい!」ドラゴンズ3年目勝野昌慶の冷静かつ情熱的な野望
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
2年ぶりの交流戦が始まり新たな気分で迎えた先週を、『交流戦単独首位』という想像していた以上に明るい結果で終えた。内心抑えきれないような嬉しさを、ひとまず借金を返してから喜ぼうと必死に抑えながらも口元を緩ませてニュースや試合結果を眺めている。好機でのあと一本、ミスからの失点など噛み合わなかった悔しさがあるからこそ、この旨味は大声で叫ばずとも噛み締めて味わうことができるのだと思う。そんな滋味を味わえる選手の1人が勝野投手だ。各選手に見えざる努力や思いがあるのは当たり前だが、見通せない不思議な雰囲気をまとっているように感じる。そんな勝野投手に迫った今週のサンドラを振り返る!
ローテ定着の勝野投手に5人のレジェンドからの質問!
勝野昌慶投手は昨年の4勝5敗という成績から先発ローテーション入りが期待されたが、オープン戦ではまさかの不調に陥り開幕一軍も危ぶまれた。同じく結果が思うように出せない柳裕也投手とともに、大野雄大投手によって励まされつつ開幕一軍入りを果たした。勝野投手が持つ力強いストレートや先発としてのポテンシャルに首脳陣からの強い期待を受け、シーズンに入ってから4試合目となる4月21日のベイスターズ戦で7回2安打1失点と完全復活を遂げた。不調の解消は、谷元圭介投手らによってトレーニングルームで話題となっていた『骨盤の傾き』がきっかけとなった。谷元投手に詳細を聞き込みしっかり修正して結果を出した。チームメイトから吸収したものを生かし技術的な面・心情的な面での壁を乗り越えながら、チームの勝ち数2位タイの3勝をマークしローテーションに定着している勝野投手に迫る!
吉見一起氏のquestion
『ルーティーンは何個ありますか?』
―勝野のanswer
「あんまりルーティーンは作ってないですね。『これもしなきゃ』『これもして』と縛られるのが苦手で。
感情を出すとピッチングが乱れるのでマウンド上ではポーカーフェイス。」
以前のサンドラで吉見氏は『勝野投手は顔に出やすいというか、打たれる時は不安そうな顔をしている。』とコメントしていた。そのことを勝野投手も自覚した上でこう話す。
「顔に出やすいタイプなので、嬉しい時はニヤッとしてしまうんですけどそこでガッツポーズとかはしないようにしています。」
マウンドでは冷静に見える勝野投手も、たぎる感情をコントロールして振舞っているとのこと。チーム平均に対しておよそ倍もある援護率は、その抑制された雰囲気でゲームを作り上げていることが一因かもしれない。
赤星憲広氏のquestion
「去年と今年の違いを教えてください。」
-勝野のanswer
「フォークもスライダーもストライクゾーンに投げられる確率が上がっていてストレートを狙い打たれるのが減った。去年のフェニックスリーグで状態が良くなくて、バッテリーミーティングをした時にフォークに自信を持っていると捕手陣に伝えて、継続的に練習した。フォークでストライクも取れるし空振りを狙って低めのボールゾーンにも投げられる。コントロールが昨年よりできている。」
そう語るように、ストレートでねじ伏せる投球だけではなく変化球の扱いも巧みになっている。さらに球速が上がってこればバランス良く勝ちが稼げる投手になりそうだ。
川上憲伸氏のquestion
「僕は勝野投手を球速:4、変化球:3、スタミナ:3、コントロール:3、精神力:3.5という評価をしますが、ここに+3できるとしたらどこに足したいですか?」
―勝野のanswer
「プラス3しか無理なんですよね?球速:4、変化球:4、スタミナ:4、コントロール:3.5、精神力:4
2アウト満塁1ストライク3ボールにした時点で投げられる球種がストレートしかなくなってしまったときにコントロールが良ければ1ストライク3ボールにしなくて済んだ。スタミナも9回投げきれるくらい欲しい。」
-川上氏のコメント
この理想としている五角形になれば、最多勝が狙えるレベルだと思う。また配球について深く読み込めればレベルアップするだろうとこれからのさらなる成長に期待がかかる。
谷繁元信氏のquestion
「キャッチャーに求めるものはなんですか?」
―勝野のanswer
「キャッチャーはサインを出した後に、低めを要求するならジェスチャーを出す。『最悪ボールでもいい』のか『ここはストライクが欲しい』のかキャッチャーの意図と食い違わないようにしたい。
岩瀬仁紀氏のquestion
「ライバルだと思っている人はいますか?チーム内・チーム外でそれぞれ挙げてください。」
―勝野のanswer
「他球団で言ったら、同じくらいの年齢の人、年下の選手が活躍したら『くそ!』と思いますし(同学年だとカープ森下投手、1学年下のイーグルス早川投手、3学年下の戸郷投手など)、ドラゴンズのローテーションの右ピッチャーは全員ライバルだと思っている。梅津(晃大)さんにも負けたくないし、柳(裕也)さんにも負けたくないし、とにかく1番になりたい!」
勝野投手のマウンドでは抑えている、負けん気の強さを直に感じる言葉だった。まだ好不調の波はあるものの、試合で投げ続けて着実に実戦経験を積み上げていることは大きな躍進につながると期待させてくれる。ヘルニアの懸念もあった中でこうして出続ける意味を勝野投手は強く刻み込んでいるだろう。さらに高みを目指して進化していく勝野投手が楽しみだ。
今シーズンの目標
「規定投球回を目指している。中6日で登板するなら毎試合7イニングくらい投げないと届かないのでいい目標だと思う。自分の力をできるだけイニングを重ねて出し切っていきたいなって思ってます!」
今年開幕前にサンドラに出演した際に「1年間ローテーション」という目標を挙げた。開幕前からあった原因不明の球速難も解決してローテを守り続け、シーズンの1/3を終えてより具体的な目標が上がったのが頼もしい。5人の質問の返答で、節々に見られる力強い自信のこもった言葉と川上氏の評価に対して0.5刻みで考える細かさからも勝野投手の一見にして掴みきれないような魅力をうかがわせる。その側面が、不調があっても細かな改良点を見逃さなかったり、初回に打ち込まれてもしっかり切り替えられる強かさとして反映されていたりするのかなと感じた。目が離せないピッチングで、相手を翻弄して目標を達成して『1番になりたい!』という次なる目標に向かってほしい!頑張れ勝野投手!
澤村桃