アイデアで勝負!コロナ禍の航空業界の挑戦
先月、中部空港から見送られる旅客機。
記者「間もなく出発します」
快晴のもと飛び立ったのはJALの旅客機。
この日の乗客は104人、満員です。
その20分後、
記者「富士山が見えてきました」
標高3776メートルの富士山を真横に、この先、機体は一体どこに向かうのかというと…。
実はこれ、先月JALが企画した遊覧飛行の一コマなんです。名付けて、「空たびトワイライトフライト」。
客「海外旅行に行きたいのですが行けなかったので、こういったイベントがあると知って子どもも飛行機乗ったことがないので乗せてみたいな」
見えてきたのは瀬戸大橋。およそ3時間半かけて西日本一周です。
コロナ禍でJALが行った中部空港発着の初めての遊覧飛行。
記者「桜島が見えてきました、上から見ても大きいです」
日本航空 中部地区支配人 五百旗頭 義高さん
「海外旅行がこういう状況で(コロナ禍で)ままらなない中で、お客様からの飛行機に長く乗っていたというご要望、非日常を航空会社に希望されているのが数多くありましたので」
今回の遊覧飛行中には、乗客とスタッフとの質疑応答の時間も。
副操縦士「UFOとか不思議なものを見たことがありますか、というご質問ありがとうございます。UFO見たことありません。ですが、夜にフライトをしていた時に、窓から右を見たときほぼ同じ高さのところに大きな流れ星が流れてたことがあります。」
何とか今できることを模索するJAL。
背景には、航空業界が置かれている深刻な状況があります。
中部国際空港 犬塚 力 社長
「世界的な規模で人の移動が制限された。
過去に例を見ない航空需要の大幅な減退」
新型コロナの影響で、
中部空港のことし4月から9月までの旅客人数は、72万4000人あまりと、前の年のおよそ9割減に。
このうち国際線は3300人あまりと、なんと、前の年の0.1%にとどまりました。
ついには…
エアアジアジャパン会見
「エアアジアジャパン株式会社は2020年11月17日午前、東京地方裁判所に破産手続き開始の申し立てを行いました。」
格安航空エアアジア・ジャパン。国内の航空会社で初めて、新型コロナの影響で経営破綻しました。
人の移動は制限され、航空業界に大打撃です。
新型コロナの感染拡大前、月に80時間フライトしていたというJALのパイロットは…
JAL パイロット大畑博史さん
「緊急事態宣言が出た4月5月くらいは飛行時間は20時間に減りました。」
便の激減により、飛行時間はおよそ4分の1に。
今強く思うことは…
JAL パイロット大畑博史さん
「やはり飛ぶことが好きでこの仕事を我々やってますので、一刻でも早く飛びたい」
さて、先程の遊覧飛行の続きです。
しばらくすると、機内食が運ばれてきました。この日のメインはカレーライス。
フランス料理の若手有名シェフが監修した一品だそうです。
乗客「おいしいですよ、久しぶりに飛行機乗って食べました」
その機内食を調理しているのが、中部空港発のすべての機内食を手掛ける、名古屋エアケータリング。
コロナの時代が来る前は、1日に、およそ1万食作っていましたが、現在は100分の1の100食に。
多くの従業員がいた部屋も、今は閑散としています。
(Q売り上げはどれくらい落ち込んでいる?)
名古屋エアケータリング 後藤田 悦士さん
「前年比95%減くらいの非常に厳しい状況に置かれているのは間違いないです」
そんな名古屋エアケータリングの手掛ける機内食が今、
なんと、地上でも食べることが出来るのです。
滑走路が近くに見える中部空港内のレストラン「エムズダイニング」。
JALなどと提携し、11月21日から1月31日まで期間限定で、一食1500円で販売されています。
注文をした男性は…
客「めちゃくちゃおいしい。カレーがスパイシーで割りばしもJALの機内で貰えるやつで機内にいるみたい」
そして、先程の遊覧飛行の方は…
記者「機内の電気が消されました。多くの人が夕日を収めようとカメラを構えています」
フライトもいよいよ終盤。夕日の後は、夜景です。
およそ3時間半の空の旅、終了です。
家族と参加した女性は…
乗客「普段飛行機に乗るときに夕日って見れることがないが、今回本当にきれいに見ることが出来て、左に乗ってたんですけど、左じゃだけじゃなくて右のお客様にも見せるのが素敵だなと思った」
遊覧飛行は12月19日も開催です。(チケットは完売)
さて、場所は変わって…
乗務員「パリまでの飛行時間は12時間45分を予定しています」
記者「私は今人生で初めてファーストクラスの席に座っています。広くて背もたれも深くて、非常に快適な空間です」
広々としたスペースが確保された座席。選び抜かれた素材、まずは前菜から。
快適な空の旅です。
乗務員「それではどうぞごゆっくりお過ごしください」
この便の行き先は、イタリアですが…
乗務員が手渡しているのは、ゴーグル!
そう、これはバーチャルの旅なんです。
案内音声「階段を昇れば、トリニタ・デイ・モンティ教会。」
何とここは機内ではなく、ビルの一室なんです。
東京・池袋にある世界初のバーチャル航空施設。
座席数は全部で12席。
ファーストクラスは食事も含め6580円で、たっぷり2時間の旅です。
客「飛行機乗っている気分が味わえてよかった」
「あきらめてたんでコロナで。そうだまだ行けるんだと思って希望が湧いてきた」
ファーストエアラインズ 阿部宏晃 代表
「お客様の数は1.5倍になった。疑似的ではありますが、海外旅行を体験することで旅行の思いや旅行に対する価値を繋いでいく」
乗務員「ウェルカムドリンクになります」
ここで働いている人の多くが航空業界を目指すアルバイトの大学生たち。
こちら、名古屋出身、都内の大学3年生です。
名古屋出身の大学3年生 伊藤 ひらり さん
「航空業界だけってのはできなくなり業界の視野を広げる。自分の夢が大きく変わってしまうっていう悲しい気持ちと衝撃の気持ちが大きかった」
残念ながらJALや全日空の来年の新卒採用はすでに見送られています。
そして中部空港には、医師が機体の空調システムの検証に。
整備士「正面の赤い枠で囲まれている所から航空機内の空気が外に出されるようになっている」
では機内はどうなのか。愛知医科大学 三鴨廣繁 医師が目を光らせます。
まずはJALが実施した実験映像から。
(JALの実験映像)
①外から新鮮な空気を取り込む
②取り込まれた空気は上から下へ
③機内の空気を輩出
④一部の空気はウイルス除去後 再利用
取り込んだ空気が完全に外に排出されるのに要する時間はわずか3分。
愛知医科大学 三鴨廣繁 医師
「例えば色んな所で換気の検証試験をやってきましたが、3分で入れ替わるのはかなり早い。空気は上から下へという流れになっている。かなり安心できる。そういう意味では空気の換気も心配ないし、マスクをすればより安心ということで、3密対策の一番重要な換気はかなり保たれている。」
先程の3時間半の遊覧飛行もこのシステムが導入されていて、機内の換気はしっかりできているということです。