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<論説コラム>炭酸飲料のウィルキンソンは日本生まれ~英国人が山中で見つけた宝の泉~

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<論説コラム>炭酸飲料のウィルキンソンは日本生まれ~英国人が山中で見つけた宝の泉~ | CBC論説THEコラム | CBCテレビ


その鉱泉を見つけたのは神戸に暮らしていたイギリス人だった。湧き出る炭酸の泉。それは「ウィルキンソン」というブランド名を得て、海外でも人気の炭酸飲料に育っていった。

1889年(明治22年)、日本人の妻と兵庫県神戸市に住んでいた英国人実業家ジョン・クリフォード・ウィルキンソンさんは、宝塚の山中に趣味の狩猟に出かけていた。そこで炭酸の鉱泉を発見する。ウィルキンソンさんは、この鉱泉水を母国イギリスに送って成分を分析してもらったら、なんと世界の名だたる水と肩を並べるほど良質なミネラルウォーターであることが判明した。当時の日本には海外からの訪問客も多かったが、その多くは食事の時に、ガス入りの炭酸水を飲みたがった。「これは商売になる!」ウィルキンソンさんは、飲料水を製造するための設備をイギリスから取り寄せた。

右手に瓶を持った金剛力士像。ウィルキンソンさんが翌1890年に発売した天然炭酸鉱泉水「仁王印ウォーター」のラベルである。仁王像の顔のモデルはウィルキンソンさん自身とも言われている。そして、そのラベルには6文字のアルファベットが大きく書かれていた「TANSAN」と。それまで発泡性の水は、海外では「ソーダ(SODA)」と呼ばれていたが、これを機に日本では「タンサン(炭酸)」と呼ばれていくようになる。ウィルキンソンさんは「炭酸」の名づけ親にもなった。

実業家ウィルキンソンさんは動く。鉱泉の近くにホテルも開業した。炭酸水の製造工場を見学するため国内外から大勢の人たちが訪れたが、その人たちに宿泊してもらうための洋式ホテルだった。その名も「TANSAN HOTEL(タンサン・ホテル)」。神戸と言えば港町、外国の船が入港すると、船長たちをホテルに案内して炭酸水を売り込んだ。そして1904年(明治37年)に「ウヰルキンソン タンサン」という商品名が登場した。一流ホテルに常備できる高級品として広がっていき、米国、カナダ、そしてアジア各国など海外30か国近くに輸出され、国際的な人気を得ていった。

この「ウヰルキンソン タンサン」をベースに、ジンジャエール、トニック、レモネードなど多彩な商品が登場し、国内の老舗のバーには欠かせない飲料となった。フランスのランブイエで始まった先進国首脳会議(サミット)、1979年に日本で初めて東京を舞台に開催された時には、テーブルウォーターに選ばれて各国首脳ののどを潤した。10年後の1989年には「ウヰルキンソン」から「ウィルキンソン」へロゴ文字を変更した。宝塚の山中でウィルキンソンさんが炭酸鉱泉を見つけて、ちょうど100年目のことだった。
500ミリリットルのペットボトルが登場した2011年からは、何かで割ったりするのではなくスポーツで汗を流した後に直接飲む人が増えるなど、ウィルキンソンは「強炭酸」のシンボル的な存在となっていく。2020年には13年連続で過去最高の売り上げを更新した。

ひとりのイギリス人が日本の山で偶然見つけた炭酸水が、食卓やスポーツに欠かせない飲料に成長した。ウィルキンソンの力強い泡は、近代国家の仲間入りを果たそうと“日の出の勢い”だった当時のニッポンを象徴しているようだ。日本生まれ・・・「ウィルキンソン タンサンは文化である」。

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿のコレ、日本生まれです」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして紹介します。

【東西南北論説風(234)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

画像:「ウィルキンソン現在の商品」提供:アサヒ飲料株式会社

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